☆魔界王子☆BL小説

□ショタウイリアム事件
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「あなた達はだれ?」

小さな少年は4人を見て不思議そうな顔をした。

「…っ?!」

ダンタリオンは驚きのあまり固まってしまった。

「…驚いたな…」

シトリーは驚きのあまり目をぱちくりさせる。

「嘘っ?!」

アイザックは口を大きく開け、少年の顔を見やった。

「……」

カミオは驚きのあまり言葉が出ずにいた。



それは、2時間前に起きた事件が発端だった…。

−2時間前

「うーん…」

深刻そうな顔をしているのはアイザック=モートン。
彼は、超オカルトマニアである。
そんなアイザックが、深刻そうな顔をしているのには訳があった。

「あぁ!もう!」

アイザックは何かを書いていた紙をグチャグチャに丸めるとゴミ箱に投げ捨てた。

「…おいっ!さっきから、書いては捨ててを繰り返して一体何をやっているんだ??煩くて本も読めないだろう!」

不機嫌そうな顔をして怒鳴りつけてきたのはウイリアム=トワイニング。
彼は、頭脳明晰な天才である。だが…アイザックとは正反対な科学を愛する超リアリストで、「この世に方程式で解けないものなんて存在しないんだ!」と言い放っている。
もちろん、悪魔の事など全く信じておらず、ダンタリオン達の事を「原子」と言うなど存在を真っ向から否定している。
とは言っても、最近では悪魔の存在を少しは信じて来ているようだが、根が素直じゃないためか意地を張っているようだ。

「ウイリアムっ!!…いや…なんでもないよ…」

「はあ?何がなんでもないだ!普段勉強もしないお前がまさか勉強をする筈もないしな。また悪魔を召喚しようとでもしていたんだろう?」

「…違うってば!…ただ僕は…」

アイザックは、ウイリアムから目を逸らす。

「『ただ』なんだ?何か言いたい事があるのなら、はっきり言え。」

「………言えないよ…」

辛そうに言うアイザックを見たウイリアムは溜息を吐きゴミ箱からアイザックがグチャグチャに丸めた紙を出した。

「あぁっ!!ウイリアム!!それは見ちゃダメ!!」

アイザックは慌てて紙を取り上げようとするが、ウイリアムの方が身長が高いため後少しの所で手が届かない。

「何が『ダメ』だ。捨てたんだろう?なら俺が見ようと勝手じゃないか。」

「うぅ…。ウイリアムのバカぁぁぁぁ!」

アイザックは、それだけ言うと走って出て行った。

「誰がバカだ!!俺は天才だ!!」

ウイリアムは、紙を広げながら考えていた。

「全く……アイザックは何を勘違いしているんだか…。…アイツが妙に深刻そうな顔をしていたから悩んでいるのなら何か聞いてやろうと思っていただけなのに…。アイツは本当に馬鹿だな…。」

そんな事を思いながら紙を広げるとそこには…。

「なんだこれ?文字…?何語だ?全く読めん…」

それは、ヘブライ語であった。
ヘブライ語とは、古代ヘブライ人が使用していた言語、またはイスラエルで使われている言語である。
だが、それはウイリアムの国の言語ではないため、ウイリアムに分かる筈が無いのだ。

「アイザックに分かって俺に分からないだと……?」

そんな事あってたまるものか!とウイリアムは即座に図書館へと向かった。

「まずはこの訳分からん文字を解読しなくては…」

それから探すものの結局紙に書いてある言葉の意味は分からなかった。

「…この俺に分からないものがあるなんて…」

己の頭脳に誇りを持っていたウイリアムは精神的ダメージが大きかった。

「…いや…この俺に分からないものがある筈ない…そうだ…あってはならないんだ!」

ウイリアムは、そう叫ぶともう1度念入りに探し始めた。

「クソっ!なんで無いんだ!!アイザックの奴…どうやってこの言葉を覚えたと言うんだ!!………ん?…そう思えば…確かさっき部屋でアイザックが何か本を読んでいたような…」

そう、先程アイザックは何かを書いていたのと同時に本を読んでいたのだ。

「あれなら…何か書いてあるかもしれない!!」

ウイリアムは、急いで部屋まで戻ると先程までアイザックが座っていた机を見た。

「……っ!…これか!!」

そこには、一つの本が置いてあった。

「アイザックの奴、本を忘れるなんて本当に馬鹿だな…。まあ、おかげで助かったが。」

早速、ウイリアムはその本を開いた。
すると、その本からヘブライ語と思われる文字が浮かび上がって来たのだ。

「……っ!?なんだっ!!これ!!」

【扉を開けし者よ…戻りなさい…過去へと…】

「っ!?うわぁぁ!!」

ウイリアムは光の中へ包み込まれた。
そこは、光のせいか妙に明るく真っ白で、この世のものとは思えなかった。
辺りには何も無く、右も左も前も後ろも…何処を見ても終りなんか存在しないかのようにして永遠と続いている。
何処へ行ってもまるで無限ループのようにして元居た場所へと戻ってくる。
いや、そう思い込んでいるだけなのかもしれない。
現実に言うと、全てが真っ白だから何処に行っても同じに見えるだけなのだ。
そう、この場所に終りは無い。
この場所には、道も人も悪魔も何もかも存在しないのだ。
居るのはただ一人、ウイリアムだけ。

「…っ!!クソっ!!歩いても歩いても、きりがない!…此処は一体なんなんだ?魔界か…?それとも…天界なのか…?…ってまずそんな場所存在する訳無いだろう!…っ俺は何を言っているんだか。気でも可笑しくなったのか…?はあ、なんで俺がこんな目に…」

ウイリアムは、その無限ループをひたすら歩き続けた。


その頃のストラドフォード校はというと…。

「うわぁぁん…!!ウイリアムのバカぁ!大バカぁぁぁ!!」

アイザックは未だに泣いていた。

「どうした?」

このお菓子を食べながら首を傾げているのは、シトリー=カートライト。
ソロモン72柱序列12位の貴公子である。
可笑しなことに、大のスイーツ好きであり、いつもお菓子を片手に食べているのだ。
シトリーの美しさはストラドフォード校でも絶大に人気がありファンクラブが出来る程でもある。

「うぅ…っ」

「何故、泣いているんだ?」

シトリーはお菓子をモグモグ食べながらアイザックの方を見る。

「うぅっ!ウイリアムがぁ!!」

「ウイリアムがどうかしたのか?」

「うっ…うっ…」

アイザックは泣くだけでそれ以上何も言おうとしなかった。

そんな時、部屋の扉がいきなり開く。

「ウイリアム??」

この慌てて入ってきたのは、ダンタリオン=ヒューバー。
ソロモン72柱序列71位の大公爵だ。
ダンタリオンは、人間から悪魔になった所謂ネフィリムなのである。
ウイリアムへの愛は誰よりも強いと自分では思っており、まるで忠犬のようにウイリアムに尽くしている。

「ウイリアムはいるか?!」

ダンタリオンは、息を切らしながら2人に聞いた。

「なんだ??居ないのか?」

「うっ…自室にいるんじゃないの…?」

アイザックは目を擦りながら言った。

「何処にもいないから聞いているんだろう!」

ダンタリオンは、校内中を探し回った後だった。
自室にも居なく、魔法も使ってみたが、どうやら何処にもいなかったらしい。

「なんだと??まさか!天使どもの仕業か?!」

シトリーは眉間に皺を寄せながらダンタリオンを見た。

「……俺もそう思ったが…可笑しなことに全く気配がしないんだ。」

ダンタリオン達なら、ウイリアムに危険があればすぐに気配で分かるはずだが、今回はその気配が全く無いのだ。

「…確かに…私もそんな気配は感じなかった…。だが、それなら何故ウイリアムは居ないんだ?」

「分からない…。どうやら魔界にも居ないようで…居場所が分からない…っ!」」

「なに?!」

シトリーはダンタリオンの言葉を聴き立ち上がる。

「じゃあ、ウイリアムはどうするんだ?!何処にいるのか分からないなんて…そんなのある筈ないだろう!!…これだから薄汚いネフィリムは嫌なんだ!!」

「なんだとっ!!!」

ダンタリオンとシトリーはお互い睨み合い強い殺気を放つ。

「ふ、2人とも!!止めなよ!!」

「煩い!お前は黙っていろ!」

「そうだ!邪魔をするな!」

「わぁっ!!」

アイザックは2人に突き飛ばされ壁にぶつかる。

「薄汚いネフィリム如きが…!!私に楯突こうなど身の程を弁えろ!!」

「黙れ!お前などバアルベリトの人形でしかないだろうっ!!」

「っ?!貴様っ!!身の程を弁えろと言っているだろうがっ!!!」

2人は尋常じゃない程の殺気を放ちながら論争を繰り返す。
今にも殺し合いを始めそうな空気にアイザックは怯えることしか出来ずにいた。

「ネフィリム如きが…!!私に楯突いた事を後悔させてやる!!死ねえっ!!」

「ふんっ!!やってやろうじゃないか。だが、死ぬのはお前だぜ?バアルベリトの美しい操り人形っ!!」

2人が攻撃を放った瞬間それは誰かの攻撃によって阻止された。

「そのくらいにしておけ。」

「っ?!カミオ…!」

そう、二人の攻撃を阻止したのは、
ソロモン72柱序列53位の大総裁カミオ。
またの名を、ネイサン=キャクストン。
500年近くもストラドフォード校に居座り続けており総代を務めている。
その頭脳はあのウイリアムをも上回るものであり、生徒達からの憧れの存在である。
悪魔でありながらも、人間のマリアを愛するなど、人の心を持つ「半魔」である。

「邪魔をする気ならお前でも許さんぞカミオっ!!」

シトリーは威厳を込めた顔でカミオを睨みつける。

「…シトリー…それになんの意味があると言うんだ。」

カミオは少しも表情を変えずにシトリーを見る。

「意味だと…?」

シトリーは呆然としてカミオを見る。

「ああ。争いは何も生まない。ましてや、同じ悪魔同士でなら尚更だ。君にもそれが分かるだろう。」

「……っ!!」

シトリーはそれ以上何も言わずに座り込んだ。

ダンタリオンもカミオの言葉に冷静さを取り戻し、呆然と立っていた。

「……それより、ウイリアムを探していたのだが…どうやら此処にもいないようだな。」

カミオは辺りを見渡し言った。

「……何処に行ったんだウイリアム…」

ダンタリオンは、辛そうにそう呟く。

「カミオ…お前には分からないのか…?ウイリアムの居場所が…」

シトリーはカミオの顔を見る。

「…残念だが私にも分からない。ただ…。」

「ただ…?」

シトリーは疑問そうに首を傾げた。

「…きっとウイリアムは、魔界でも天界でもどの世界でもない「空間」に入ってしまったのだろう。」

「『空間』?」

ダンタリオンはその意味がよく分からなかったのか聞き返した。

「少し前だが、古い魔術の気配がしたんだ。」

「古い魔術だと?!」

「ああ。とても古く珍しい魔術だ。悪魔でもそう簡単に使えることは出来ない魔術だろう…」

「…それは一体どんな魔術なんだ?」

カミオは、シトリーの言葉に顔を横に振った。

「…それは、私にも分からない…。ただ、とても強い。強過ぎて私達には辿る事が出来ない…それだけは分かる…」

「古くて強い魔術か…。厄介だな…」

ダンタリオンは、溜息をつくと、ソファへ座り込んだ。

「じゃあ、どうやってウイリアムを探せばいいんだ?」

シトリーはカミオに聞いた。

「……待つしかない。」

「っ?!待つだとっ?!」

「……それしか、今は方法がない…」

「…クソっ…!」

シトリーとダンタリオンは、何も出来ない悔しさに苛立ちを隠せなかった。

「ウイリアム…っ…!」

ダンタリオンは、小さく呟いた…。



――――――――――――――――――――

これで前編は終了です!

前編を書いての感想なんですが、
前置き長っ!!
長過ぎだろうっ!
しかも、やけに壮大な物語になっちゃってるしっ!!
本当にすみません…!
まさかこんなにも長くなるとは思わなくて…。
まず、前編と中編と後編を作る事すら考えていませんでした…;
短編で考えていたのですが、思った以上に説明文が長くなってしまい…。
なんかもう文も色々と滅茶苦茶ですがどうか大目に見てやって下さい!
文句・苦情でしたら掲示板でいくらでもお聞きしますので!;

それと、念のため申し上げておきますが、これは勝手な作者の妄想であり原作とは一切関係ございません。
高校名、言語、悪魔達の詳細設定等は公式を基にしましたがそれ以外の設定は全て作者の勝手な妄想となっていますので予めご了承下さいませ。

以上を了承して頂けた方は次のページへと御進み下さい。
次のページからは、中編となります。
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