☆魔界王子☆BL小説

□嫉妬心〜ダンタリオン〜
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最近ウイリアムが俺を避ける…。
何故だ…?
原因を考えてみたものの全く思いつかない。

「少しベタベタし過ぎたか…?」

ダンタリオンは、記憶を遡り1週間前の事を思い出していた…

―1週間前

「ウイリアム…!!」

ダンタリオンはウイリアムを見つけると今にも飛びつきそうな速さで走って行った。

「…ダンタリオン…!!」

ウイリアムをあからさまに嫌な顔をしてみせたがダンタリオンはそんなのお構いなしにウイリアムに近寄る。

「ウイリアム!!何処に行くんだ?俺も同行するぞ!!」

ダンタリオンは、ウイリアムを見つける度にこうして何かと付いて来ようとするのだった。

ウイリアムもこれが1ヶ月も続き限界が来たのか怒りを露にする。

「トイレだ…。お前はついて来なくていい。」

ウイリアムは、ダンタリオンの方を少しも見ないで答えるとそそくさと歩いた。

だが、ダンタリオンは負けじとウイリアムの背を追いまたもや詰め寄る。

「俺も一緒に行く」

「いい。お前は来るな」

ウイリアムが即答するとダンタリオンは顔をムッとさせる。

「お前はトイレにも行かせてくれんのか」

「…じゃあ俺は向こうのトイレに行く。お前はあっちに行け」

ウイリアムが引き返そうとすると、ダンタリオンの手がそれを阻止する。

「何故別々なんだ?」

ウイリアムは掴まれた腕を見ようとせず、深い溜息を吐くと手を振り払った。

「一緒にいたくないからに決まってるだろう」

ウイリアムはそう言い放つと、ダンタリオンの方を振り返ろうともせず歩き出してしまった。

「ウイリアム…。」

ダンタリオンは、去って行くウイリアムの後姿を見ているだけしか出来なかった。

それから、1週間…。
遂には口すら聞いてくれなくなったのだった。

「…これが原因か…」

ダンタリオンは、溜息を吐き顔を歪ませた。

「ウイリアム…お前は俺と一緒にいたくないのか…」

ダンタリオンは、ウイリアムに言われた言葉を思い出すとまたもや顔を歪めた。
【一緒にいたくない】
その言葉を思い出すたびに、胸を針で刺されるような痛みがダンタリオンを襲う。
その痛みの理由に気付いているからこそダンタリオンは余計に辛いのだ。
ウイリアムの事が好きで、好きで、大好きで。
いつでも一緒にいたくて…。
会うと嬉しくなってついつい近寄ってしまう。
それがいけなかったのだろうか。
ウイリアムにはダンタリオンの気持ちが伝わっていないのだろうか。
どんなに言葉で「好き」「愛してる」と言っても伝わらないのだろうか。
ダンタリオンは頭の中でそんな事を考えながら唇を噛み締めた。
強く噛み過ぎて契れた唇から滴り落ちていく血はまるでダンタリオンの涙のようだった。

「ウイリアム…。」

伝わらない思いにダンタリオンは傷つく事しか出来なかった。


―その頃のストラドフォード校

「ウイリアムも食うか?」

シトリーがクッキーを差し出すとウイリアムは「いい」と短く答える。

「甘いものは嫌いか?」

シトリーはこんなに美味しいのにとクッキーを咥えながら言った。

「別に嫌いじゃない。ただ今は腹が減ってないだけだ」

紅茶を飲みながらそう答えると、シトリーは不思議そうな顔をした。

「甘いものは別腹だと言うだろう?」

クッキーを次から次へと頬張りモグモグと口を動かしながら言うシトリーを見て、ウイリアムは溜息を吐き呆れた顔をするのだった。

「まあいい…。勝手に食ってろ。」

ウイリアムはそれだけ言うと本を読み始めた。

「そんなもの読んで面白いのか?」

シトリーは、山積みに置かれている本を指差すと、一番上の本を取りパラパラとめくった。

「おい!!菓子を食った手で触るな!!」

シトリーの手から本を取り上げると、山積みにしていた本を持ち上げる。

「何かあったのか?今日はいつも以上に機嫌が悪いようだが」

シトリーがそう言うとウイリアムは持ち上げていた本を落としてしまった。

「図星か」

ウイリアムは慌てて本を拾うと急いで本棚へと仕舞う。

「で…。一体何があったんだ?」

シトリーの問いかけにウイリアムは肩をビクッと震わせる。

「…別になんでもない。」

「そうなのか?」

動揺しきっているウイリアムとは逆に冷静な口調でシトリーがもう一度聞き帰すとウイリアムは「なんでもない!」と言い部屋を出て行った。

「ふっ…。どうせダンタリオンのこと
だろう…」

シトリーはそう呟くと菓子を手一杯に持ち部屋を出たのだった。

「なんなんだシトリーの奴…!見透かしたみたいな態度しやがって…!!」

ウイリアムは、怒りのせいか早歩きになっていた。

「別に…俺は…」

「あっ…危ないっ!!」

「うおっ!!」

下をずっと向いていたウイリアムは何かにぶつかった衝撃に驚いて上を見上げた。
目を見開くとそこには俺の体を抱きしめるスワローの姿があった。

「す…スワロー???」

あまりの驚きにウイリアムは「?」を浮かべる。

「何やってるんだこの先は行き止まりだろ?」

スワローにそう言われ前を見るとそこは壁だった。
そう、後もう少しで壁にあたる所だったのだ。

「あ…ありがとう…スワロー…それとすまない…」

ウイリアムは、抱きしめられる腕の強さに驚きながら言った。

「あっ…ごめん…っ…」

スワローは抱きしめている事にようやく気づいたのか急いで腕を離した。

「なんでお前が謝るんだ?助けてくれたんだろう?」

頬を赤くするスワローを不思議に思いながらウイリアムがそう言うと、「そうだな」とスワローは微笑んだ。

「でも、どうしたんだそんなに急いでウイリアムらしくないじゃないか」

「ああ…いや…ちょっと考え事をしててな…」

ウイリアムは、徐に目を逸らすとスワローは不思議そうな顔をした。

「考え事って?」

「いやっ!!なんでもないんだ!!…それよりスワローはなんでここにいるんだ?」

ウイリアムは、話題を変えさせようとした。

「ああ…ちょっとほっつき歩いてただけだよ。この学校広いだろう?ちょっと探検してみたくなってさ」

「そ、そうか…」

会話が途切れ沈黙になる。
ウイリアムが何か話題を探そうと考え込んでいると…

「……スワローか…」

「は?」

突然喋り出したのに驚くとスワローは「いや違うんだ」と微笑んだ。

「名前」

スワローが「名前」と言うとウイリアムは意味が分からなかったのか首を傾げる。

「だから、俺の事名前で呼べよ」

スワローがそう言うとようやく気付いたのかウイリアムは表情を明るくさせる。

「同じ監督生だし…それに友達だろう?そろそろ苗字で呼ぶのもなんかなって思ってさ」

スワローは自分で言って照れたのか頬を赤くし、頭を掻いた。

「そうだな…。分かった。マイクロフト」

ウイリアムが初めて名を呼ぶと嬉しかったのかスワローは満面の笑みで答えた。

「ああ…!ウイリアム!」

お互い名で呼び合い絆が深まったのを実感すると2人は自然と笑い合っていた。

「今度、一緒に勉強でもしないか?」

スワローの誘いにウイリアムは正直驚いたが嫌ではなかった。

「ああ!」

2人は良き友人であり良きライバルでもある。
それを弁えた上でこうして付き合えている。
きっと、絆が強いに違いない。
そうウイリアムは実感させられた。
友人と呼べる人が少ないウイリアムにとってスワローの存在は大きいものであった。
アイザックとスワロー。
この2人は、自分とは全く違う性格だが、何故か気が合うのだ。
ウイリアムは運命など信じないがこればっかりはそう思えてしまったのだった。

どれくらい話し込んでいただろうか、辺りはもう真っ暗だった。

「すまないな。こんなに長くなって」

スワローが謝るとウイリアムは首を振って答えた。

「いやお前だけのせいじゃない。俺もついつい長話をしてしまったからな」

2人で寮まで戻ると、部屋の前で別れた。

「じゃあ、また明日な!」

「ああ!」

そうして、ウイリアムは部屋に入り電気をつけた。
だが、そこには予想もしなかった者がいたのだった…
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