☆魔界王子☆BL小説
□嫉妬心〜ダンタリオン〜
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黒い髪、赤い瞳、大きな体…。
「ダンタリオン…?!」
ソファに座っている人物も見て思わず声が出てしまった。
「遅かったな…」
ダンタリオンは、冷たい瞳でウイリアムを見た。
「なんでお前がここにいるんだ?!ここは俺の部屋だろう!」
ウイリアムはダンタリオンを指差すと睨みつける。
「…スワローと何してたんだ…」
「?!」
ウイリアムは、ダンタリオンが見ていた事に驚き目を見開いた。
「お前には関係ない。」
ウイリアムはダンタリオンの目から逸らすと背を向いた。
「ウイリアム!!」
ダンタリオンは、ウイリアムの腕を強引に取ると自分の方へと引き寄せる。
「うおっ?!」
あまりの力の強さに後ろを向いていたウイリアムは前を向かされダンタリオンと至近距離になる。
「俺を見ろ。ウイリアム」
ウイリアムは、ダンタリオンの目を見ると、すぐに逸らしてしまった。
「逸らすな!!」
ダンタリオンは強引にウイリアムの顎を掴み自分の顔に近づける。
「や、止めろ!」
ウイリアムは、あまりの力の強さに痛みを感じつつ自分の力じゃ振り払うことも出来ない現実に体を強張らせた。
「もう一度聞く。スワローと何をしていた」
ダンタリオンは真剣な目でウイリアムの目を見る。
ウイリアムは唾を飲み込むと口を開け、
「マイクロフトは何も関係ない」
ダンタリオンは、その言葉を聞くとピクと体を震わせ顔を歪めた。
「ダンタリオン…?」
ウイリアムは、ダンタリオンの様子がおかしいのに気がつくと様子を伺うように瞳を覗き込んだ。
「…な…っ」
ダンタリオンは、言葉にならないのか小声で何かを訴えようとした。
「え?」
ウイリアムが聞き返した瞬間ダンタリオンは目をカッと開き、
「あいつの名を呼ぶなっ!!!」
ウイリアムは、声を張り上げるダンタリオンを見て目を見開いた。
「なっ…!!」
「あんな奴のことを名前で呼んだりするな!」
ウイリアムはこの言葉にカッとし、ダンタリオンの目を睨みつける。
「そんなこと俺の勝手だろう!!」
ダンタリオンは、ウイリアムの顎を強く掴む。
「いっ…!」
ウイリアムは痛みに顔を歪めた。
ダンタリオンはウイリアムの瞳から涙が滲むのを見るとハッと我に返り手を放す。
「うっ…!!」
ウイリアムは掴まれていた顎を押さえ痛みを堪える。
「…っ…すまない…」
ダンタリオンは今にも泣き出しそうな顔をするとウイリアムに謝った。
ウイリアムは、恐怖に思う反面、いつもと違うダンタリオンの事が気になった。
「どうしたんだ…?」
ウイリアムは、目に涙を溜めながらダンタリオンに聞くと、ダンタリオンは苦しそうな顔をし口を開いた。
「1週間前から…お前は俺を避けていたな…」
ダンタリオンの言葉にウイリアムは目を逸らした。
「…原因はなんとなく分かっていた。…でも俺はお前がいないと生きていけない。」
ウイリアムは、ダンタリオンの言葉に驚くと逸らした目を再びダンタリオンに向ける。
「生きていけないって…!…そんなの…」
「嘘でも、冗談でもない!!…俺はお前の物だ」
ウイリアムは初めて言われた【俺はお前の物だ】という言葉に目を見張った。
いつも、いつも、ダンタリオンは【お前は俺の物だ】と言ってばかりだった。
聞き間違えかとも思ったが、ダンタリオンの目を見てそれは無いと感じさせられた。
いつもと違う。
何もかもが。
ウイリアムは、頭の中が混乱してしまい黙り込んでしまった。
すると、ダンタリオンは黙り込むウイリアムのかわりに話し出した。
「さっき…偶然スワローとお前が話している所を見たんだ…」
ダンタリオンはそのまま続け、
「お前とスワローが抱き合っているところも見た…。名前で呼び合っているところも…。」
ウイリアムは、何も言わずダンタリオンの瞳を見つめた。
「割り込んでお前を連れ去ろうとも思った…でもっ!…出来なかった…」
ウイリアムはダンタリオンの目を逸らさず見つめ口を開けた。
「何故だ…」
ダンタリオンは少しの間を空け答えた。
「……怖かったんだ…」
ウイリアムは予想もしなかった言葉に驚いた。
「怖い…?」
ダンタリオンはウイリアムの問いを聞くと顔を歪め苦しそうにした。
「ダンタリオン…?」
ダンタリオンは、掌をウイリアムの頬に当てる。
「俺は…お前に突き放されるのが怖い…」
ウイリアムはダンタリオンの目を見て心を痛めた。
あまりにも、辛そうで…。
初めて見る余裕のないダンタリオンの姿にウイリアムは知らぬ間に抵抗する気もなくなっていた。
「1週間前のこと…気にしてたのか…?」
ウイリアムはダンタリオンに問いかける。
すると、ダンタリオンは小さく頷いた。
「俺はお前の事が好きだ。好きで好きで好きでどうしようもないくらい…。お前を見ると近寄りたくなる、傍にいると触れたくなる…。でも…お前は俺が嫌いだろう…。」
ウイリアムは、ダンタリオンの言葉に「ん?」と顔を歪めた。
「おい。いつ誰がお前の事を嫌いだと言った。」
ウイリアムは、ダンタリオンの頭を拳で叩くとダンタリオンの赤い瞳がウイリアムの緑色の瞳と重なる。
「だって…一緒にいたくないと…」
ダンタリオンはまたもや目を逸らすと辛そうな顔をした。
「目を逸らすなと言ったのはお前だろう!!」
ウイリアムは、ダンタリオンの顔を両手で掴み自分の顔に向ける。
「ウイリアム…!」
ウイリアムとダンタリオンは互いの目を見詰め合う。
「いいか。一度しか言わないからよく聞け。
俺は確かに1週間前からお前を避けていた。でも、それは嫌いになったからとかじゃない。そして、お前が気にしている【一緒にいたくない】というのも…あの時お前を放すために言った嘘だ…。だから別に本当に一緒にいたくないという訳じゃない。」
ダンタリオンの目から少しも逸らさずウイリアムは言葉を続ける。
「それと…。避けた理由だが…。」
ウイリアムはここまで言うとその先の言葉を躊躇う。
「どうしたウイリアム?」
ダンタリオンは目をキョロキョロさせ黙り込むウイリアムに問いかけた。
「いや…だから…その…」
ウイリアムは意を決したのか、ダンタリオンの目を睨みつける。
「…お前が何処構わず俺について来ようとするから…!!」
ダンタリオンは「?」の顔をしてみせた。
「だから!!お前といると気が休まらないんだよ!!…その…ドキドキして…」
ダンタリオンは聞き間違いじゃないかと目を見張る。
だが、ウイリアムの顔は見たことがないくらい赤く染まっていた。
ダンタリオンの目を睨む目も力がなく、酷く誘うものだった。
ダンタリオンは、顔を隠すウイリアムの腕を取り、自分へと引き寄せ強く抱きしめた。
「ダンタっ…!!」
ウイリアムは、ダンタリオンの体に強くぶつかり痛みに顔を歪めたが、振り解く気にはならなかった。
「ウイリアム好きだ」
ウイリアムは、顔を真っ赤にさせダンタリオンの目を見る。
「知っている…!」
何故だろう。
凄く恥ずかしくて目を逸らしたいのに逸らせないなんて。
2人は溶けきった目に酔いどちらが先に目を閉じたのか、流れのままにキスをした。
「んっ…」
ウイリアムは自分の唇に当たる違和感に気がつくと目を開け唇を放す。
「どうした?」
ダンタリオンが不思議そうな顔をするとウイリアムはダンタリオンの顔を凝視した。
「なんだ?」
ダンタリオンはあまりの視線に顔を赤くする。
「あっ…!やっぱり…」
ダンタリオンが「?」の顔をするとウイリアムの指がダンタリオンの唇に触れた。
「…っ…」
すると、唇にピリっとした痛みが走った。
「傷が出来てる…!!」
ウイリアムは、ダンタリオンの唇の小さな傷に触れたままそう言った。
「ああ…これか…」
その傷は、自ら噛んで出来た傷跡だった。
「血が固まってるし…。痛いだろう?」
ウイリアムは傷を見ながらダンタリオンに問いかける。
「いや…大丈夫だ…」
ダンタリオンは痛みよりもウイリアムに触れられている事の方が気になって仕方なかった。
ウイリアムに触れられる傷跡が痛みとはまた違うジリジリとした感覚がダンタリオンに降り掛かる。
「ウイリアム…本当にもう大丈夫だ…」
ダンタリオンがそう言うとウイリアムはようやく自分がしていた行為に気がついたのか顔を真っ赤にさせて手を放す。
「あ、悪い…!」
ウイリアムは、急激に体温が上がり汗ばんだ。
ダンタリオンの唇は、未だに触れられた部分がジリジリと疼き、もっともっとと欲を出す。
「ウイリアム…やっぱりまだ痛い…」
ダンタリオンがそう言うとウイリアムは目を見開く。
「そ、そうか…!じゃあ、手当てでもするか!あ…でも唇じゃ絆創膏も貼れないしな…」
ウイリアムが真剣に悩んでいるとダンタリオンはウイリアムの腕を取り自分の唇に当てる。
「なっ!?」
ウイリアムは顔を真っ赤にさせた。
「舐めてくれ…」