Scrap
□あたたかな侵入者。
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ベッドの中、寝返りを打つため手をのばすと、指先にふわりと暖かいものにあたった。
きっと兎やリスかなにかだろう。
戸締りもそこそこの孤島暮らしのこの部屋に、小さな侵入者なんてざらだ。一昨日の朝だって、室内に響く小鳥のさえずりで目覚めたのだから。
無用心だとティエリアあたりにののしられそうだが、正直なところ俺はわざと戸締りをしていないのかもしれない。
戦場へ赴く自分は、特別戻りたい場所を持たないようにしている。
愛した相手に寂しい想いをさせるのは自分もつらいのだ。
だから、物言わぬ来客を消極的に招き入れているのだろう。
それにしても、寝たふりを決め込んでおかなければこの客人は逃げ出すか噛み付くかの二つに一つ。
とは言え、冷えたベッドの中で指先に触れる温度は非常に俺を誘惑する。
(このまま、がばっと抱き込めば…)
湯たんぽがわりに大の大人が可愛い小動物を抱きしめるのも、人目につかぬ自室なら許されるだろうと、俺は意を決して行動を起こした。
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