Scrap
□未定
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眠れない。
眠れない。
まぶたを閉じても耳を塞いでも。
どんなに願っても夜は来ない。
ぶちん、とコンセントをひっこ抜くように。
意識を強制終了させる方法があればいいのに。
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「セツナ。」
呼ぶ男は、あの彼ではない。
寂れたアパートのドアは軋み、男が近付くたびベッドが揺れる。
「セツナ、眠れてないんじゃないか?」
優しく響く声が、ほんの少し似ていたから。
「今日は、一緒に眠ろうか。」
帰る場所を失い、新しい世界を見てまわる中、一度足りともコードネームも本名も名乗る事はなかったのに。
ほんの、ほんの少しだけ、彼の声に似ていたから。
あの声に、呼ばれたくて。
『新入り、名前は?』
『…刹、那。』
『セツナ、か。よろしくな。』
胸に広がる喜びと後悔。
(俺は、なんて馬鹿なんだ。)
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