1st
□right
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「……なぁ。」
「なんだ?」
「そっちじゃなくてさ、こっち側歩いてくれよ。」
「………。」
「その……右側に居られると、視界に入らないんだよ。」
「顔、首から向ければ見えるだろうが。」
「そりゃぁそうだけどさ…」
だって意識しなきゃ刹那の姿が見えないのやなんだもん、とか。
大袈裟に顔向けたら、無防備な横顔を盗み見してるのばれちゃうだろ、とか。
まったく、ごちゃごちゃもごもごとうるさい男だな。
「これで、妥協しろ。」
「っ!!!!…りょ、了解……」
俺が掴んだのは、奴の視界に入っていない、右手の指先だけ。
(守りたいんだ。世界の死角から。)
(なんのハンデも、お前にはない。)
だって、俺が右側にいるから。
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