1st
□好き好き大好き。
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俺は、とてもずるい人間なのかもしれない。
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「まったく…どうしてお前はいつもいつも俺にばっかり構うんだ!?」
ちょろちょろとついてくる、金魚のフンに振り返って問い質す。
「俺はもう16だ!アンタと一緒に寝てた頃より大人になった!」
笑いながらも、悲しそうな表情を浮かべるロックオン。
「刹那が成長したのは知ってるさ。」
「なら、なぜいつも俺に構うんだ!?」
怒鳴りながら、胸は期待でいっぱいで。
「ほっとくと危なっかしいのは変わらねーんだもん。お兄ちゃん心配なんだもん。」
「誰がお兄ちゃんだっ!!」
(違う、違うだろ!?)
そうじゃなくて、もっと聞きたい言葉があるんだ。
「危なっかしくたって、アンタに関係ないだろーが!!」
またまた大声で吠えると、ロックオンは「きゅうん」と叱られて鳴く犬のように上目使いで俺を見る。
「だって、俺、みんなにお前のお守り役言い付けられてんだもん。」
(なんで!?そうじゃないだろっ?)
いらいらが最高潮に達した俺は、とんっと床を蹴って無重力の中彼の胸へ飛び込む。
「アンタはっ!命令されたら誰の守りでもするのか!?」
噛み付きそうな勢いで、胸倉を掴んでも。
責めるようになじるように問い詰めても。
ずるいずるい俺の心は、期待で胸が張り裂けそう。
(お願い、お願い。早く、あの言葉を聞かせて。)
耳たぶがじくりと熱を持ち、焼け付くように男の声を呼び始めている。
「おい、ロックオ…」
「好きだからだろ。」
おはよう、と挨拶するのと同じような当たり前の日常のように。
まるでその答えは、世界中の誰もが知っていて当然であるかのように。
平然と彼は、理由を告げる。
「…馬鹿だな、アンタ。」
「そりゃあどーも。」
胸をどん、と突き放し、回れ右をした俺の顔はきっと満足げで。
後ろに居る男は、きっと微笑んでいる。
(好き好き大好き。素直になれない俺に、もっと聞かせて。)
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