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□それは自己満足の産物。
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炎のようにアカイのに、なんて優しくて、寂しそうな瞳。
「死んだのか?」
そう問えば、今にも泣き出しそうに揺れるソレが、この青年の危うさを物語っている。
それでも容赦なく、俺は彼を追い詰める。
「だから、死んだんだろう?ニールは。」
煙草を深く深く吸い込んだあと、再び煙りと一緒に言葉を吐いた。
間違いなく彼は亡くなったはず。
だって、今。
目の前にいるこの男が、ニールの気配を纏っているのだから。
「ロックオン…いや、ニール・ディランディは…」
唇が、震えている。
(それを声にする事が、そんなにも恐ろしいのだろうか。)
なんて弱い。
こんなにも弱い想いのくせに、ニールの心を継いでいるなんて。
(俺は、兄さんの「死」なんて恐れてはいない。)
俯き拳を握りしめる彼に近付き、見下ろすように声を落とす。
「お前、一体なにしに来たわけ?」
「俺は…」
「俺はニールじゃない。そんな物欲しげな目で見られちゃ困る。」
「なっ…!」
あからさまにニールを慕い、彼の死を否定したがる彼に苛立ちを感じる。
「刹那…って言ったか?」
出来るだけ低く、冷たい口調で名前を呼ぶ。
きっと、それでもこんな自分に兄の姿を重ねているだろう彼に憐れみさえ抱く。
「俺はニールがお前をどんな風に可愛がってたんだか知らないが、俺はお前に同じように優しくしてやるつもりはない。」
歳の離れた彼を、エイミーのように可愛がっていたのか。
戦場で、対等な人間として接していたのか。
あるいは、特別な感情を抱いていたのか。
(そんな事、俺には関係ないね。)
彼がニールとどんな関係であったかなんて。
ニールの肉体がこの世界から消えてしまったなんて。
そんな些細な事は、「俺達」には関係ない。
アカイ瞳の奥にお前が居る。
入れ物を変えて、俺を迎えにくるなんて。
(ニール。お前、ほんとうに俺を愛してるんだな。)
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