雑記帳
□不眠症
1ページ/1ページ
寒さで目が覚めた。
カーテンがふわりと浮いている所を見ると、どうやら窓を閉め忘れたらしい。
寝る前に確認したような気もするが、ポルターガイストとか何かでなければ閉め忘れたと考えるのが妥当だろう。
「いや、待てよ」
そうだ、今日はあいつが居るんだった。
静かに歩み寄る。
ビンゴ。
彼女はベランダの柵に寄りかかって外を眺めていた。
人の家で何やってんだか。
「何やってんの」
この問いに彼女がゆっくりと振り返りながら微笑んだ。
「夜明けを―、待ってるのさ」
妙に冗談めかした言い方。
「何だソレ、眠れないのか」
「‥まあ、そうとも言うかな。だからさ、こうやって眠らない人達を見てるの」
そう言うとまた柵に寄りかかり目を伏せる。
その口元には自嘲気味の笑みが浮かんでいた。
「何がしたいんだよ」
「だからぁ、私は正常なんだなぁーって思えるでしょ?」
ね?と同意を求める彼女はとても無邪気で。
私は曖昧な返事を返して空を見上げた。
「月が、綺麗だよ」
「ふふ、そうだね」
彼女は笑ってそう答えると、私と同じように空を見上げた。