*

□2
1ページ/1ページ

涙を流していた。
その美しい人は涙を流していたのだ。

陶磁器のような白い肌を雫が幾度も伝う。
それは、まるで作り物の様に美しく。
見てはいけない。そう自分の中の誰かが言った。
しかし私は目を離すことが出来なかった。
彼女があまりにも儚くて。眼を放した隙にそっと消えてしまいそうだったから。

私は眼を離せない。

透明な雫が瞳からこぼれ、高い鼻筋を伝い―――――
綺麗に弧を描く唇へと伝った。


―――彼女は笑っていたのだ。目元が三日月形に歪む。

嗚呼、なんて。
なんて悲しげに笑う人なのだろう。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ