遊戯王【銀の月姫】

□第三話「秘密のバイトと凶悪犯」
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ある日の昼休み中。

「ねぇ、真崎さん……」

「何?」

共にお手洗いに行った際、洗面台の前で手を洗いながら、咲月は隣で髪を解かしている杏子に訊ねた。

「さっき……授業中に、求人誌読んでた?」

「!? 見たの!?」

「!!」

何気なく聞いたつもりだったが、予想を遙かに越えて驚く杏子の反応に、咲月も驚いた。

「ごめん……さっきの授業中当てられて、しまってる所たまたま見ちゃって……」

若干焦って言い訳すると、杏子はフゥと息を吐いた。

「……今から話す事、誰にも言わない?」

こんな確認をしてくると言う事は、他言されたくないのだろう。
咲月はコクリと頷く。
それを見届けると、杏子は口を開いた。

「実はね……」






それから数日後の放課後。

「あー、終わった終わった」

授業終了を告げるチャイムが鳴るなり、城之内は欠伸をしながら腕を伸ばす。

「おい遊戯、本田、帰りどっか寄ってかね?」

「ん?いいぜ」

「それならさ、ドミノ町に新しくオープンした『バーガーワールド』に行こうよ!そこのハンバーガーが美味しいって評判なんだって!」

ハンバーガーが大好きな遊戯は目を輝かせて提案していたが、その会話が聞こえていた女子二名はピクリと肩を震わせた。

「あ…あのさ遊戯……バーガーワールドって店なんだけど」

「杏子も行く?咲月ちゃんも」

いつの間にか、遊戯は咲月を“ちゃん”付けで呼び捨てるようになっていた……のは置いといて、杏子は遊戯にズイと距離を詰めると笑い飛ばした。

「冗談!あの店ってさ、滅茶苦茶マズいって評判よホント!開店して間もないのに、お腹壊す人続出!絶対行かない方が良いって!ね、咲月ちゃん!」

「うん、止めといた方が良い。……彼処店員の態度も悪いらしいし。本当にえっと……くそマズいみたいだから」

「え……本当?じゃあ止めた……」

「そうよ!あの店だけは行っちゃダメ!」

咲月もコクコクとしきりに頷く。

(おかしいな、美味しいって聞いてたのに……)

首を傾げながらも、遊戯は別の提案をする。

「ならさ、駅前の『カロリーバーガー』にするから、一緒に行かない?」

「ダーメ、私達今日用事があるの。それに、先生も言ってたでしょ。

“この町に凶悪犯が彷徨いてるから、真っ直ぐ帰れ”って!」

杏子の言葉に、遊戯はハッとした。

「そうだった!凶悪犯が脱獄したとかで、町中大騒ぎなんだよ!」

「何だよ、そんなにビビってんのか?根性ねぇぜ!」

「でもさ、拳銃持ってんだよ拳銃!」

遊戯が大騒ぎしている間に、杏子と咲月は踵を返す。

「そういう訳だから、バイバイ!」

「じゃ……また明日」

遊戯達に挨拶すると、二人は教室を出て行く。
そして戸を閉めるなり

「危なかった……」

「ホントね……」

戸に背を預け、2人して安堵の息を吐いた。
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