遊戯王【銀の月姫】

□第五話「宴と花火」
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昼休み明けの5限目。
ロングホームルームとなったこの時間、黒板の前に立った杏子はクラスメート全員に宣言した。

「それでは、文化祭の出し物について決めたいと思います!」

そう、ロングホームルームにて話し合う議題。
それは、来る文化祭で1年B組は何をやろうかというものだ。

「何かいい案のある人は手あげて!」

「はーい」

「はーい」

文化祭実行委員の杏子に促されて、クラスメートの中からチラホラと挙手があがる。
どうやら中々乗り気なメンバーが多いらしい。

(いよいよ一週間後に高校に入って初めての文化祭だ!何かワクワクするな…)

どんな物になるのか遊戯が想像を膨らませていると、周りから「お化け屋敷」や「焼きそば」など案が上がる。
だが、どれも他のクラスに先を越されてしまっているとの事だ。
これでは仮に同じ出し物をしても、客の取り合いになるのは目に見えている。

「皆俺の意見を聞けー!!」

何やら行き詰りそうな空気を壊さんとばかりに、城之内が立ち上がった。

「文化祭といや、一大エンターテイメントな訳だぜ!!やるからにはほかのクラスの客を奪い取るくらいの根性みせなきゃ駄目だぜ!!」

声高らかに雄たけびを上げる城之内。

(そこまで言うなら、城之内君には何か面白い提案があるのかな)

咲月がそう期待した傍で、城之内は自信満々に言い放った。

「って訳で、これはもう「お色気」で勝負に出るっきゃねー!名付けて「リアル女子高生キャバクラ!!」女子は全員あらゆる客の好みに応えるコスチュームを――」

「引込め城之内!」

「死ねー!!」

言い終わる前に、女子からの大ブーイングが城之内を襲う。
城之内には申し訳ないが、そればかりは咲月も反対だった。自分がそんな格好しても誰も喜ばないだろうし、そもそもしたくない。
言うまでも無く男しか得しない城之内の案は却下された。

他には学生プロレス、たこ焼き、花咲君という眼鏡の男子生徒が提案した「お笑い漫画道場」などがあったが、どれも先を越されているやら、マイナー過ぎるやらで、中々決定しない。
咲月も考えたが、思いつくのは殆どもう出ている且つ却下されている。

(どうしよう……)

悶々と考える咲月。
案の定、杏子に意見を求められて答えた提案は、ありきたりな「喫茶店」。
無論先客がいた為却下だ。

「遊戯……何かない?」

「え、う、うーんそうだな……」

今度は遊戯に意見を求める杏子。
遊戯は口調こそ悩んでいたが、その顔は何か言いたそうにウズウズしていた。
これはひょっとしたら

(武藤君何か良いアイディアあるのかな)

ゲームマニアな彼の事だ。
何か面白い出し物を閃くかもしれない。
期待する咲月とクラス一同の視線を浴びて、遊戯は微かに目を輝かせた。

「やっぱゲームかな「カーニバルゲーム」。ほら、遊園地とかにある奴」

「!」

カーニバルゲーム……アミューズメントパークとかにもある射的や輪投げ、バスケットゲームなどの小さなゲームの事だった筈。
成る程、それなら文化祭としてはマイナーかもしれないが、お客さんに楽しんで貰える且つ先客はいないかもしれない。

「いいよ」

「うん」

「いいよな、ゲーム」

「うん、楽しそうだし!」

遊戯の意見に賛成する声が、彼方此方から沸いてくる。
それは、クラス中に瞬く間に広がっていった。

「おーし、カーニバルゲームだぜ!」

「いいかも!」

「決定!」

遊戯の意見に、多くの者が心を掴まれた結果、クラスは一丸となってカーニバルゲームを推薦する。
杏子はチョークを手に取った。

「それなら他のクラスもやってないしね。それじゃ、カーニバルゲームに決定しまーす!」

黒板に白い文字が描かれる。
1年B組の出し物は、遊戯提案の「カーニバルゲーム」に決定した。
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