遊戯王【銀の月姫】

□第九話「砂漠の地よりの来訪者」
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ある日の昼休み。
教室で何時もの顔ぶれが雑談していた時だった。

「あ、そうだ。ねぇ皆、エジプトの発掘展の事知ってる?」

「エジプト発掘展?」

唐突に訊ねられた問いに、城之内が初耳の四人を代表として訊ねる。

「何だよそれ」

「えっとね、明後日から童実野町の美術館で展示会が開催されるんだ。皆興味あるかなって思って、聞いてみたんだけど……」

「面白そうじゃん。行きたいな私」

「俺も興味無くはねぇかな」

遊戯の話を一通り聞いた全員が、関心を示す。
その様子に、遊戯は顔を綻ばせた。

「よかった!実は今回、エジプトの王様のお墓を発見した大学教授が、僕の爺ちゃんの友達でさ。その吉森さんって人が、僕らを招待してくれたんだ!」

「!」

そんな一大大発見の当事者と友達とは

「遊戯君のお爺ちゃん、凄い人と友達なんだね」

「うん!」

咲月の言葉に、遊戯は嬉しそうに頷く。
それにしても、吉森か。
何か聞いた事があるような。

「……吉森さん……あ、そっか。ニュースに出てたっけ」

「そうそう新聞にも出てた人ね」

「確かミイラとかも見つかったんだよな」

「げっ…ミイラ〜!?おい、何か呪われそうじゃねーか」

怯える城之内の顔は青ざめている。
以前の咲月は、どちらかと言うと幽霊や宇宙人などの非科学的なモノは信じてなかったのだが、〈遊戯〉と出会って以降、気が変わった。

「超能力があるんだから……呪いもあるかもね。本当に呪われたらどうしよう」

「おいぃ!!お前マジで変な事言うの止めろ!!」

「エジプトって、何か神秘的な感じがするよね」

サラリと吐かれた咲月の台詞に城之内が喚く傍らで、杏子は遊戯の千年パズルを見おろした。

「遊戯のそのパズルも、エジプトで見つかったんだよね」

「うん」

遊戯は千年パズルを両手で掬う。
友達が欲しい。
そんな願いを籠めて作り上げてから、もう大分時間が経ったか。

「で、遊戯のお爺さん言ってたよね……そのパズル見つけた発掘隊の人達、みんな謎の死を遂げたってさ」

「!」

杏子が若干顔を引きつらせる。
その表情がワザとらしい事に遊戯は気付いたが、それに気付かない城之内は

「ゲ〜ッ本当かよ!遊戯!お前大丈夫か…呪われてんじゃねーのか!」

完全にビビっている。
遊戯はとりあえず城之内を落ち着かせる為に、呪われてない旨を伝え、隣で笑ってる杏子を注意したが、静まりかけた火に油を注ぐのが、約一名。

「……やっぱりあるのかな。呪い」

さっきから呪いの有無を疑う咲月。
彼女は別に、城之内を怖がらせようという意図は無かったのだが、結果的にはこうなった。

「お前……さっきから何なんだよ!そんなにオカルト好きだったのか!?俺がマジで呪われたらどうすんだ!!」

再びヒートアップしてしまった之内が咲月に詰め寄る。
彼女は、彼を見上げて哀れみの目で呟いた。

「……短い付き合いだったね」

「え……何それ。見捨てるって事か……?」

そんな目で見んな。
呆然となった城之内を、遊戯達は笑っていたが、遊戯は頭に引っかかる事を思い出す。

(でも……このパズルを完成させてから、偶に記憶が無くなっちゃう時はあるんだよな……でも皆には内緒にしとこ…不気味がられちゃうもの…)

「それじゃ明後日の日曜日、一時に美術館に集合で良い?」

「!」

杏子の声で、我に返る。
皆が口々に了承していく中、遊戯も問題は無かったので賛成した。
結果、満場一致で明後日の日曜日、一時に美術館に集合だ。

(エジプト発掘展か…楽しみだな)

ワクワクしてくる。
心の片隅にくすぶる不安が、楽しみに埋もれていく気がした。
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