遊戯王【銀の月姫】

□第十四話「審判の怪物」
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咲月が最初の試練を突破し、安堵したのも束の間だった。
いきなり床に開いた大穴の底から感じる、得体の知れない異様な気配と、ぎらつく眼光に、大穴を見下ろす〈遊戯〉は目を剥いた。

「こ……これは!!何か巨大なものが地に潜んでいる!」

ズズズと重い音を立てて、その何かが蠢く。
まるで獲物を狙う肉食獣のごとく、自分を虎視眈々と見つめてくる眼光が徐々に大きくなってくるのに気づき、〈遊戯〉はハッとした。

「咲月、此処に居るのはマズい!離れるぞ!!」

「!? マズいってどうし―――」

言うが早いか、〈遊戯〉が驚く咲月の手を掴み、身を翻そうとする。
その直前

ドゴンと床を突き破り、突如現れた鋭い鉤爪を有する巨大な腕二本が、〈遊戯〉の両腕を各々拘束した。

「な!!」

「っ!?」

腕を掴まれた衝撃で、〈遊戯〉は繋いでいた咲月の手を放してしまう。
いきなり腕をふりほどかれた勢いに、咲月は危うく転倒しそうになるのを何とか持ちこたえた。

「咲月!―――!?」

早く離れろ。
そう続く筈だった言葉は、背後から聞こえる轟音によって途絶えた。
床が崩壊していく音に紛れ、背中に感じる明らかに異様な気配。
何事かと振り向いた途端、目の当たりにした光景に〈遊戯〉は息をのんだ。

大きく裂けた口から覗くのは、幾つもの鋭い歯列。
床から突き出した腕の主である化け物……アメミットは、〈遊戯〉と眼が合うなりその巨大な双眸に愉悦を宿した。

「遊戯……逃げることは許されぬ……お前は今から第2の試練に挑まねばならぬのだから……


闇のゲーム―――「死の神経衰弱」に……」

「!!」

(闇のゲーム!!)

何度も主催者になっている〈遊戯〉に、解らない筈がなかった。


闇のゲームの敗者には……


恐るべき罰が待っているという事を。
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