テニプリ 久しぶりに再会した幼馴染がホ○に目覚めてたんだけど【一氏ユウジ】
□第一話「4年振りの再会……そして悲劇」
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四年前。
大阪のとある住宅街
「…………」
一人の眼鏡をかけた少女は、ただ拳を握って俯いていた。
両脇には両親、そして眼前には幼なじみの“アイツ”の両親が立って、今まさに長年住んでいた家を貸し家として引き払おうとしている三沢家に別れの挨拶をしていた。
「元気でな榛名」
「……うん」
アイツの母の言葉に、榛名は頭だけ動かす。
その間見ていたのは、アスファルトだけで風景は覚えていない。
だが顔を上げた所で、アイツの姿は絶対に見えない。
当然だ。だってーーーここに来ていないのだから。
「ユウジはホンマに見送り来ぉへんつもりか?今まで散々榛名に算数教えてもろたてたやろ?」
「ええよおじさん。……別に友達やった訳ちゃうもん」
「榛名!」
心にもない言葉を吐いた榛名を榛名の母が窘めたが、榛名は相変わらず顔を上げようとはしなかった。
ひたすら俯いて、アスファルトを睨むだけ。
「……お前ホンマにユウジに挨拶せんでええんか?何時帰ってこれるか解らへんのに……」
「いい。これが一生の別れやないし。……アホユウジの顔はもう嫌って程見た」
「………後悔しても知らんで」
「そんなんせぇへん。……絶対」
何を言われても、当時の榛名には届かなかった。
頑なに最後まで自分の殻に閉じこもる。
アンナ奴なんか、もう知らん。
時は止まらない。
やがて三沢家は全員車に乗り込み、長年暮らした家と、その隣に住む昔馴染みの一氏家の面子に別れを告げる。
「………」
車のエンジンがかかり、車道を走る車。
後部座席に1人座る榛名は、一瞬だけ背後を振り返る。
遠のいていく一氏家の二階の窓
カーテンが掛かっていないそこは、暗闇のみを映す。
「………」
首を正面に向けて、カバンに付いてるダッフィーのキーホルダーを握りしめる。
円らな瞳の熊。昔もげそうになっていた腕を繕ってくれたのはーーー
「………」
視界が、徐々に滲んでいく。
温かい雫が、頬を伝い落ちた。
そしてその頃
「………」
癖のある緑がかった黒髪を、バンダナで纏めた少年は、窓辺で体育座りをしながら車のエンジン音が遠のいていくのを聞いていた。
腕に埋もれた顔が、微かに上がる。
その視線の先には
綺麗にラッピングされた、“アイツ”に渡し損ねた贈り物が、机上に置いてあった。
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