遊戯王【銀の月姫】
□第一話「月下にての邂逅」
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「………」
うっすらと目を覚ますと、見慣れた自室の天井が見えた。
しかし、その視界は滲んでいる。
……泣いているのか、自分は。
(……何か夢見てた?)
何か見ていた。
だが……どんな夢を見ていたのか、思い出せない。
ただ、酷く悲しくて、やりきれなくて、夢は忘れてしまったのに、見ていた感情だけが残っている、そんな気分だ。
「………」
パジャマの裾で涙を拭うと、上体を起こす。
枕元に置いてある時計を見ると、起床予定時間よりも早く目を覚ましていたようだ。
(……ちょっと早いけど、着替えよう)
もう寝る気分ではない。
思い立つなり、咲月はベッドから降りてクローゼットを開けた。