遊戯王【銀の月姫】

□第六話「白い決闘」前編
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翌日の放課後。

「あれ?」

咲月は城之内の足元の異変に気付いた。

「城之内君、スニーカー変えた?」

「! おお、ずっと前から欲しかったの、昨日やっとゲット出来たんだ!カッケーだろ!」

ニンマリと自慢げに笑う城之内だが、杏子の顔は渋い。

「カッケーって……何か穴あいてない?それ」

「いいんだよ。遊戯が頑張って取り返してくれた証拠だぜ!」

「……取り返してくれたって、どういう事?」

咲月が訊ねると、遊戯は難しそうな顔をした。

「えっと……ちょっとトラブルがあったっていうか……城之内君のスニーカーが、悪徳商売に利用されてたっていうか……」

「俺の履いてるスニーカー、売ったオーナーがチンピラ雇って買った奴から強奪してたんだよ。で、返ってきたレアスニーカーで、また荒稼ぎしてたって訳だ」

「!!」

「じゃ、今朝言ってた傷作った原因のトラブルって、そのチンピラに襲われた事だったの?」

平然と語る城之内の言葉に、杏子と咲月は顔を見合わせた。
昨日は杏子も咲月もバイトだった為居合わせなかったが、酷い目に遭っていたではないか。

「ま、そういう事。けど、この通り掠り傷だし、どうって事ねぇよ。まさか、遊戯が1人で取り返してくれるとは思ってなかったけどな」

「うん……何とかなってよかったよ。でも取り返さなきゃって必死で、取り返しに行った時の事は、よく覚えていないんだよね……」

いつの間に、スニーカーに穴あいちゃったんだろ。そういう遊戯の口調は、実に怪訝そうだ。

(覚えてないって事は……取り返したのは遊戯君じゃなくて、あの人かもしれないな……)

今回も、オーナーとやらが遊戯の心の領域を侵し(怒りに触れ)、“彼”を目覚めさせたのだろう。

(やっぱり、あの人が出てる間の事は、知らないんだ)

咲月は眉を寄せる。
何度も会っているから思うが、“彼”は、遊戯の味方だと思う。
だが、遊戯は“彼”の存在を知らない。
“彼“が出ている間に発生する、記憶の空白。
いくら“彼”が危険な存在でなくても、それが、そう何度も現れたら、遊戯は不安がったりしないだろうか。

「…… 咲月ちゃん?」

「!!」

1人歩きしていた思考が、遊戯の声によって現実に連れ戻される。
我に帰った咲月の顔を見る遊戯の顔は、何だか心配そうだ。

「どうかした?」

「……ううん。大した事じゃないよ。そのオーナー、酷いって思ってただけ」

「……」

“彼”の事を知らない遊戯に、今考えていた事を話したら、混乱させてしまうに違いない。
故に誤魔化したのだが、遊戯は少々顔を曇らせた。

「……そっか」

「うん」

彼はそれ以上聞いてこなかったが、微笑むその顔は、どこか寂しそうだった。

「そういや遊戯、最近面白いカードゲーム入ったとか言ってなかったか?」

「!!」

城之内の声で、遊戯はハッとした。

「あ、うん。最近売り出したんだ。見に来る?」
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