遊戯王【銀の月姫】
□第八話「we trust you」
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翌日。
その日は、いつもとは少し違った事があった。
今朝のショートホームルームの際、出席を取る担任教師が、出席簿の城之内の欄に、ペンを走らせる。
書かれたのは、恐らく×。
「……」
出席の確認が続く中、咲月は城之内の席を見た。
座るべき主が不在の席。
本日、城之内は学校を休んだ。
「これは事件だぜ……城之内が学校休むなんてよ!」
一限目の授業が始まるまでの僅かな時間で、一同は城之内の席を凝視する。
城之内は授業中居眠りをしたり、たまにサボったりこそはするが、実は先週末まで出席は皆勤賞だったのだ。
「アイツ健康だけは赤丸優良児の筈なのに……」
「テストは赤点ばっかだけどね」
どうしたんだと言わんばかりに首を傾げる本田に、杏子は余談を付け足していたが、笑い事ではなかった。
「初めてだよね……城之内君が休むなんて……本田君は知らないの?城之内君の事」
「おう……何の連絡もないしな……」
遊戯の質問に答える本田の顔は渋い。
普通休みなら、保護者から連絡がある筈なのだが、担任教師も本田と同じく何故休みなのかは知らないらしい。
(ついに最初からサボりだしたか。とか言ってたし……)
つまり、城之内が学校を休む理由は不明なのだ。
昨日会った時も、彼が風邪を引いている様子も見受けられなかった。
体調不良ではなく、彼が学校を休むとしたら、本田の言う通り何か事件があったのだろうか。
『学校、楽しいか?』
昨夜、彼に聞かれた質問が脳裏を過ぎる。
あの時の城之内は、やはり様子がおかしかった様な……。
(今日の休みと、何か関係があるのかな……)
考え過ぎだといいと思う反面、何だか嫌な予感がする。
「とにかく、学校終わったら彼奴ん家行ってみようぜ!俺知ってっからよ、彼奴ん家……」
「うん」
「あたしも行くわ!今日バイトないし……」
「私も」
何事もない事を祈る。
だか
不安が心を曇らせていくように
雨雲が空に蔓延り始めていた。