遊戯王【銀の月姫】

□第十話「心の部屋での対峙」
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(こ…これは……)

男が今まで見ていた光景は、“一部”でしかなかった。
見渡す限りある階段、通路、そして扉。
際限なく広がる空間は、迷宮と呼ぶに相応しい。

(この少年の部屋は、まさしく……「心」の迷宮だ!!)

「ゲームスタート!!」

〈遊戯〉の「本当の部屋」を見つけだすゲームが幕を開ける。
しかし、目の当たりにした迷宮のあまりの規模に、男は息を止めて硬直したまま。

「さぁどうした。最初の一歩を踏み出さなければ始まらないぜ!ゲームがな……」

「……!」

男は漸く我に返る。
しかし、これほどの数の扉……一体どこから手をつけるべきなのか。
気が遠くなりそうだ。

(だがその中の一つが……「本当の部屋」なのだ!!)

生憎「本当の部屋」を探知する能力は、自分には備わっていない。
手当たり次第に、扉を開けていくしかなさそうだ。

「ますは、この扉を……」

近くにあった扉を、とりあえず開けてみる。
そして中を覗いた瞬間

凄まじい勢いで、男の眼前に巨大な岩石が落下してきた。
咄嗟に男はその場を飛び退き、背中から倒れ込む。

「くっ…!!」

轟音を立てて、岩石が床にぶち当たる。
悪戯……にしては度が過ぎている。

(罠…!!!)

後一歩反応が遅れていたら、どうなっていたか。
血の気が引く思いをしていると、背後からクスクスと笑い声がした。

「どうした…今ので怖じ気づいたか?」

「……!!」

振り返る。
〈遊戯〉が壁にもたれ掛かって、男を横目で見下ろしていた。

「この分だと……「本当の部屋」への道のりは、かなり険しそうだぜ!」

薄ら笑いを浮かべながら言うだけ言うと、〈遊戯〉の身体が不意に透ける。

「頑張れよ……「部屋」で待ってるぜ……」

高みの見物でもするつもりなのか、〈遊戯〉の身体は大気に同化したように消えてなくなる。
現実では不可能な事も、「心の部屋」では通用するらしい。

「……」

立ち上がった男は、再び「本当の部屋」を探して迷宮をさまよう。

(この扉も……この扉も違う……!!「本当の部屋」ではない!一体どの扉が……)

まるで男をあざ笑うかの様に、開けても開けても、外ればかり。
まるで、〈遊戯〉の手の平の上で踊らされている様な気分だ。

(この少年の心は、頑なに他人の進入を阻む……私を惑わす!!!)

外れの扉を開放する度に、諦める事を迫る〈遊戯〉の意志を感じる。

(それでも私は知りたいのだ!「千年パズル」の力の謎を!!)

知りたい謎を解く部屋を前に、諦める事など出来ない。
男は白い衣を翻し、また新たな扉の取っ手に手をかけた。
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