人生の難易度スイッチ

□第一話
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人間生まれる前にゲームみたいに難易度設定させられるんだと思う。

多分、簡単と普通と難しいの三択。

それを選んだあと人はランダムで生まれる所と見た目を決められて人生ゲームスタート。


アンタは何を選んだと思う?
因みに俺は普通を選んだんだと思う。
高校生になるまで普通の事を普通にこなしてきた。

他の難易度をちょっと想像しながら、ちょっと憧れながら止まるわけでもなく走るわけでもなくここまで成長した。

そして、普通の高校に入った俺は夏休み前の普通の一日を過ごしてた。


友達に誘われてその日の放課後、駅の近くのゲーセンに行った帰りだった。

友達がスマホをいじりながら俺に話しかけてきた。


「おい、この街に国際指名手配犯がきてるかもって!」

「国際・・・なんだって?」

「国際指名手配犯、その名もルパン三世!狙った獲物は必ず盗む大泥棒!かっこいいな!
変装も自在だってよ、そこらへんにいるかもな!」



興奮気味の友人は早口になりながらそう言った。多分彼も難易度普通を選んだ俺と同じ憧れを持つ人間なんだろう。
友人は身長も高いし声も大きい。かなり目立つのにこうなるとさらに目立つ。

日常とはかけ離れた存在が身近にいることで本来の危機感を忘れている。


「そんな危険な奴がいるなら早く帰らないとな。」

「何言ってんだよ!探そうぜ?すっげぇチャンスだって今!」

「何のチャンスなんだよ。国際指名なんちゃらが俺たちに捕まえられたら警察も苦労しないし
そのニュースにもなってないだろ。」


「彼の言うとおりだ。早く家に帰りなさい。」


後ろから声をかけられ驚き、慌てて振り返る。
そこにはトレンチコートと同じ色の帽子をかぶった男がいた。


「警察の人・・・?」

「私はICPOの銭形だ。今この町は危険な男が潜んでいる。早いうちに帰りなさい。」


ICPOってインターポール?
ってことは本当にいるのか、この街に。

刑事ドラマからそのまま出てきたような男はきっとさっきの会話が耳に入ったのだろう、少し厳しい口調で注意した。


「やっぱりこの街にいるんだ、ワクワクしてきた!」

「お前はずっとワクワクしてるだろ?早く帰ろうぜ。警察のいう事は聞いとくもんだ。」

「・・・へーい。」


あからさまに肩を落とす友人に呆れながらも適当な慰め言葉を考える。
銭形と言った男に会釈をして立ち去ると駅へと向かった。

西日がまぶしい駅の裏でやっと調子を取り戻した友人はトイレに行ってくるから待っててくれと言い残し人気のない駅のトイレに消えた。

日陰で適当に待ってると、友人が俺を呼んでいるのが聞こえた。
かなりの大声でだ。


何事かと声に方向に走ると、ケロッとした顔の友人がただ立っていた。

「なに大声出してんだよ驚いただろ。」

「ごめんごめん、ちっと見て貰いたいもんがあってよ。」

「なんだよ、またあのなんちゃら三世か?諦めてなかったのかよ。」

「いやいやぁ、そっくりな人が今車に乗ってたの窓からみちゃってさ!もう行っちゃったけど。」

「人のいない所で良かったな、全く。」

ほらもう帰ろうぜ、とそう言いかけた時友人の異変に気付いた。
ほんの少しだけ友人からタバコの臭いがしたのだ。
もちろん友人はそういう非行と呼ばれるものはしない奴だ。むしろとても嫌っている。


「どったの?」

「お前、タバコ変えた?それ結構臭うぞ。」

不審に思った俺はかまをかけてみた。
違うならそれでいいが、ルパンに関して友人の言っていた"変装も自在"ってのが気になっていた。

「あ、わかった?知り合いに勧められて、今のお気に入りっていうの?」

言葉を失った。
友人の顔で言われると対応に困ってしまう。
だが、この男が友人ではないことは確かだ。


「・・・いつタバコなんて始めたんだ?お前そういうの嫌いだったろ。」


友人の顔したそいつは驚いた様に目を見開くと急に笑い出した。


「ンフフフ・・・、まさかこの俺がこんなガキに一杯食わされるとはねぇ。」

「お前、誰だ?」

「俺様はルパン三世。この街にあるお宝を・・・」

「あいつをどこにやった!?」

正体を知るといてもたってもいられず、言葉を遮る様にいった。
蒸し暑いトイレなはずだが相手は汗ひとつなく俺を見つめている。

「まだ人が喋ってんでしょうが。
・・・まぁ、そうカッカせずに、おじさんに協力してくんない?」

「まず友人の場所を教えろよ。」

「一点張りか・・・。」

う〜ん、と悩むと奴は溜息を吐いて言った。

「ここじゃなんだから、いったん出ようぜ。」







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