Schwarzschild

□出会い
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「マァージ!(とれろ!この!)」

今日のご飯を確保するため、木に生っている実を両手で掴んで勢い良く引っ張るが、中々枝から実を切り離すことが出来ない。

「マァジ…!(こうなったら…!)」

一度実から手を離して少し距離をとる。

「マァージー!(十万ボルト!)」

実のなっている枝部分を焼き切って、漸く手に入れた実を手頃な枝に腰を落ち着けてから食べ始める。

今日は少しここから離れてみようかなぁ…。

実はここへ来てから、小屋から少し離れたことはあっても戻れなくなる前に引き返してしまって十分に散策できていないのだ。

よし、出かけよう。

そうと決めたら早速用意せねば、とここで生活していた間に見つけた荒縄や布を小屋の中から引っ張り出す。

途中の木に縛っておけば、迷っても帰ってこれる、と心の中で自分に言い聞かせる。




「マァ(はふぅ)」

小屋から離れてどのくらい経っただろうか。既に日は暮れていて辺りは暗くなっているのにも関わらず、森は終わりを見せない。

手に持っていた布や縄はもう底をつきそうだ。

「マァージ(戻ったほうがいいかな)」

もう一度ため息をついて踵を返そうとした時、微かに人間の声が聞こえてきた。

「マ!(人だ!)」

スピードを早めて声の聞こえた方へ進んだ。

「……に…じて……る者はなし、か」

高めに浮遊して声の主がいるであろう場所を覗き込むと、木々が途切れ、開けた場所に出た。

眼下には畑が広がっていて、そこに茶色の羽織を着た男が立っている。

男がくるりと踵を返せば顔が見えた。

こっわ!顔怖い!

そこにいた男は、現代で言うところのヤクザ。

現代では普通の女子高生だった私には、ヤクザと触れ合うことなどあるわけがない。

つまり、めちゃくちゃ怖い。

無意識に体が後退したとき、ふと、何かの気配を感じた。

キョロキョロと辺りを伺えば、木の合間から数人の男達が見えた。

「マァ…?(え、何…?)」

よく見ると男達は甲冑のようなものを着込んでいる。

物々しい雰囲気にそのまま様子を伺っていると、紫の仮面をつけた男が男に近づいていく。



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