当世具足。
□ちょっとした企み
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暗い。
どんよりとした、暗さ。
その中にいるのは、彼。俺の唯一の親友と言えるであろう、椿。
椿はいつものように白を主体とした着物をピシッと着ているが、背中は彼らしくもなく丸まっていた。
持ち主の感情を表してしまうこの空間から察するに、何かが、あったのだ。彼に。
「柊、この座は私には相応しくないよ」
椿は視線を下に向けたまま、唐突に告げる。
「なぜだ」
今までうまくやっていただろう。何があった。
椿に近づきたいのに、彼がそれを拒む。
「・・・この力は、何のためにある?私は、何のために在る?・・・私はただ、下を見ていることしかできない・・・」
「・・・それも全て、わかってただろう。わかっていて、ここに来たはずだ」
何を言えば、そんな悲しい顔をさせずに済む?
「・・・柊、私はこの地位を返上するよ。」
脳天が揺さぶられたような、気がした。
「・・・っ今まで、一緒に頑張ってきただろう!?・・また、私を一人にするのか・・・?」
「っすまない・・・。だが、私はこれ以上、手をださずにいられる自信が、ない。」
彼の声が震えている。
いや、声だけじゃない。肩も。
何があった。優しい彼に何があったのだ。
「・・・椿、俺はお前を手放すつもりは、ない。教えてくれ、なにがあった・・・?」
ゆるゆると顔を上げた彼にゆっくり、拒絶されないようにゆっくりと、歩み寄った。
その後のことは、簡単だった。
「俺が・・・お前の悩みを消してやるからな。」
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