Schwarzschild

□出会い
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《随分優しい顔をするんだね。
僕たちの完璧な包囲を破り、窮鼠の群れに等しかった三国数万の軍勢に見事退路を開かせた伊達の軍師…竜の右目の、それが素顔というわけかい?》

《竹中半兵衛…!》

茶色の男は紫の男をかなり警戒しているようだ。

(竹中半兵衛?聞いたことある名前だ…)

今までは自分がムウマージの姿になっていたこともあって、ここはポケモンの世界だと思い込んでいたが…もしかしたらまた違う世界なのかもしれない。

その間にも二人の会話は進む。

《国元に居るときの君は夜、床に就く前に必ずここへくる…
そうだろう?政宗君と君の日課は、一通り彼から聞いているんだよ。》

竹中半兵衛が示した先にはいつの間に姿を現したのか、刀を持った男と人質となっているのだろう初老の男性と、若い女の人がいた。

《おめぇ!》

茶色の男がそちらに向かって刀を向ければ、竹中半兵衛の手下と思われる複数の男たちが茶色の男を囲むように姿を現す。

どうみても、茶色の男の方が劣勢。

《竹中!てめぇ!》

《取引しよう片倉くん。
君に豊臣の一員になってもらいたい》

《何ぃ…?》

あの茶色の人、本当にヤクザみたいで怖いけど…悪い人じゃあない。

かもしれない。

それだったのならば、紫側の方が悪役だろう。

《君の才は、秀吉のもとで働いてこそ、真に活かされるだろう。そして…》

《そろそろやめときな…!男の世辞はみっともねえ。いくら並べられても寝返りゃしねえぜ!》

《これは正当な評価だよ。堕ちゆく伊達家と共に潰してしまうには、君はあまりにも…》

《この片倉小十郎!今生政宗様以外にお仕えするつもりはねぇッ!!》

《僕は殺しあう為にきたんじゃない。けど、君の返答次第では…》

意味ありげに竹中半兵衛の言葉が切れた途端、男が刀を人質の首元に突きつける。

《きゃあ!》

《か、片倉様…!》

人質が!

《名もなき領民の命と主君たる政宗くんへの忠義…君は愚直に両方守ろうとする。
すなわち、この場の君に勝ち目はないということになる》



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