名探偵コナン中編
□心の傷(後日談)
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(後日談)
あれから1か月。
あのアクシデントがあってから、快斗と服部は頻繁に新一の家に訪れていた。
もちろん、隣人の灰原は毎日のように新一を心配して母親のようにご飯は食べたか、昨日は何時に寝たのかと世話を焼いている。
「うっとうしい……」
「まぁ、あんなんでも心配なんでしょ、あなたのことが」
「……前はこんなんじゃなかった」
「そうね……」
本当の性別を知って、これ幸いとそれを口実に行動しているだけでしょうけど
灰原は心の中でそんなことを思いながら、新一のために博士と自分の分と一緒に作った新一の分の夕飯を机に並べていた。
聞いた話、博士はちゃんと新一の性別を知っていたらしい。……ただ、すっかり忘れていたそうだが。
笑い事じゃない話に、灰原は思わず博士の脛を蹴ってしまったらしい。
プルルル―――ッ
「はい。……はい、はい……わかりました」
ピッ――
「また事件の要請?」
「ああ」
「ご飯はどうするの?」
「ん?ああ、食べていく。20分後にしか来れないらしいから」
「そう、ならいいわ」
ちゃんと約束は守ってくれているようね……
事件の要請と言われれば食事を抜いてでも駆けつけてしまう彼……否、彼女。
だからこそ、灰原は目暮警部と高木刑事に、要請をかけたら、必ず迎えは20分以上後にするようにお願い(脅迫ともいう)したのだ。
特に、昼間や夕方は。せめて食事をさせてから向かわせるようにと。
男だと思ってた頃からあれだけ痩せていたのだ。
それが女性の身体だと知った時は本気で焦った。
もちろん、男でも危険なのは危険だが、食事・睡眠をしっかりとらなければ体調を崩す。
女の身体でそれが頻繁にあれば、生理不順や生理痛、また将来、妊娠や出産といったことに大きく影響するのだ。
そんなこと……同じ女性として許せるわけがない。
「気を付けていくのよ?」
「分かってるって。じゃあ、行ってくる」
「ええ、いってらっしゃい」
さて……
「何かあったのかしら?博士」
「新一はもう行ったんじゃな?」
「ええ、どうかしたの?」
「いや……いま優作君からメールがきてのう……」
明日、日本に一度帰ってくるらしいんじゃ……
「……また急ね……いつものことだけど」
「……そうなんじゃが……何やらちょっと怒ってるというか不機嫌な感じでのう……」
こう……文章が荒々しいというか、これが手書きなら走り書きされた感じがビシビシ感じられて……
「何もなきゃいいんじゃが……」
「………」
まさか、彼らの行動がバレたのかしらね……
まぁ、自業自得かしら……
知らなかったとはいえ、女性の身体を覗き見たのだから。
ちょうど明日は日曜日。きっと彼等は新一に会いに東都まで来るに違いない。
「……とりあえず、工藤君が帰ってきたら伝えておきましょうか」
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