『伸ばされる手』 完結

□5.Sweetheart
1ページ/7ページ






姉は昔から男らしかったわけじゃなかった。

まだ女の部分が残ってたのか、服は男らしかったがところどころに見え隠れする表情や言動は女の子らしかった。






うちの父親は子供そっちのけで研究ばかり。

僕は……アルはまだ2歳だったからそんな覚えてないけど、姉は物心ついた時から父の背中しか見てなかったという。

家族を顧みなかった人だから、母を悲しませたからという理由で嫌っているが、それ以上に構ってもらえなかったのが大きいんだと思う。

アルは父親の顔を覚えている。

けど、姉は父親の顔を覚えてないらしい。……というより、ほとんど見たことがないらしい。

それが本当かどうかわかんないけど、覚えてるのは拒絶する背中と錬金術の本。

――そして、邪魔だと怒鳴る声だという。

その所為か、父親の代わりに母親と弟を守ろうと力を求めて男の格好をするようになったらしい。

それが顕著に表れたのが父親が家を出たころから……






























ある日、姉が変わったことに気づいた。

表情が柔らかくなったのだ。

ウィンリィに聞いても誰も理由を知らないという。




アルはこそこそ出ていく姉を見つけると、こっそり後をついていった。

森に入って走り続ける姉に、アルは戸惑いながらもついていく。










「――――――っ!!」










姉の姿見えなくなった瞬間、姉の嬉しそうな声が聞こえた。

声のする方へ走り出せば、昔姉に聞いた森の中の泉に出る道に出た。

秘密だよ?って嬉しそうに笑っていた姉。

アルはそっとその泉付近を見た。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ