『伸ばされる手』 完結

□10.Blunder
1ページ/2ページ






ロイは目の前の資料に頭を抱えた。

とんだ失態をしたものだ。




先日捕まえた誘拐犯の一部が、サウスシティに逃げ込み、そこで誘拐事件を引き起こしていたのだ。

ロイの前には東部とは別に、西部で誘拐された者の資料が顔つきで並んでいる。

そして最後には半年以上顔も見ていない金髪の少年、鋼の錬金術師の名があった。



「アル、エドについてなかったのか?」

「僕は図書館に行っていて、兄さんは錬金術師がいたという家に行ってたんです。
 僕はこんな体だから入れなくて……」

「そのあと、エドは一人で外に出たのか……」



どんなに待っても帰ってこない兄。

アルは嫌な予感がしてすぐに街の人に聞き込みに行った。

けれど、誰一人兄を見た者はいないという。



2時間かけて聞きこめば、公園に入ったという情報だけ手に入れた。

慌てて公園に行ったが、そこに兄の姿はなく、完全に見失ってしまった。



「それからすぐにここに来たんです」



西部では誘拐事件の情報はほとんどないから。



「本当はあなたに助けを求めたくなかった。けど、僕では兄を見つけることはできないんです」

「アル……」

「兄を、返してください」



アルはロイから目を離さなかった。

自分たちの野望を叶えるために他人を傷つけるというのなら、自分は兄のために誰であろうと使う。


たとえ、それが大っ嫌いで許せない人たちであっても。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ