『伸ばされる手』 完結
□10.Blunder
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ロイは目の前の資料に頭を抱えた。
とんだ失態をしたものだ。
先日捕まえた誘拐犯の一部が、サウスシティに逃げ込み、そこで誘拐事件を引き起こしていたのだ。
ロイの前には東部とは別に、西部で誘拐された者の資料が顔つきで並んでいる。
そして最後には半年以上顔も見ていない金髪の少年、鋼の錬金術師の名があった。
「アル、エドについてなかったのか?」
「僕は図書館に行っていて、兄さんは錬金術師がいたという家に行ってたんです。
僕はこんな体だから入れなくて……」
「そのあと、エドは一人で外に出たのか……」
どんなに待っても帰ってこない兄。
アルは嫌な予感がしてすぐに街の人に聞き込みに行った。
けれど、誰一人兄を見た者はいないという。
2時間かけて聞きこめば、公園に入ったという情報だけ手に入れた。
慌てて公園に行ったが、そこに兄の姿はなく、完全に見失ってしまった。
「それからすぐにここに来たんです」
西部では誘拐事件の情報はほとんどないから。
「本当はあなたに助けを求めたくなかった。けど、僕では兄を見つけることはできないんです」
「アル……」
「兄を、返してください」
アルはロイから目を離さなかった。
自分たちの野望を叶えるために他人を傷つけるというのなら、自分は兄のために誰であろうと使う。
たとえ、それが大っ嫌いで許せない人たちであっても。
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