鋼の短編
□A treasure is full.
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たからものが増えた。
一つだけだとずっと思ってたのに……
気付けばたくさんたからものがあった。
「鋼の」
「俺の腕は二本しかない。最後は一人しか選べないんだ」
タカラモノがいくら増えても、きっと最後は一つしか選べない。
俺の腕は二本だ。
俺の腕は弟の―――アルのためにある。
「鋼の……っ」
「ごめんな?…………俺は少尉たちみたいに、あんたを選べないんだ」
どんなに大切に思っていても、少尉たちが俺たち兄弟を選べないように、俺も大佐を選ぶことはできない。
目的を遂げるまでは、アルが一番だ。
―――目的を遂げた後は分からないけど……
「それでもいいさ。私も君だけを選べないだろうしね」
―――お互い様だ。
「だから、離れる必要はないし、好意を拒む必要もない」
―――わかるかね?
相変わらずうんくさい笑みを浮かべる大佐に、俺は―――エドワードは悲しそうな………だけど、意志の強い瞳を向けた。
たからものはいっぱいになった。
けれど、すべてを選ぶことはできない。
―――なら、その時まで、自分のすべてでたからものを守ろう。
そんなときが来ないように、手を伸ばそう。
「諦めるにはまだ早いんだからな!!」
End