鋼の短編
□Love? or Like?
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「好きだ、鋼の」
「うん。俺も好きだぜ、大佐」
この会話を聞くのは何度目だろうか。
東方司令部にある兄弟が来るたびになされる会話。
「そうじゃない、愛してるんだ!」
「あーはいはい。好きだよー」
熱烈な告白をする大佐に、素っ気ない態度のエドワード。
これもまたいつも通り。
机に乗り出すようにして告白する大佐と、本を読みながら相手をするエドワード。
この光景もいつも通り。
そして、今日もまともに取り合ってもらえず、断念。
* *
「ねぇ、兄さん」
「なんだ?」
「一度、本気で大佐の告白聞いてあげれば?」
少し大佐が不憫に思ったアルフォンスは、エドワードに真面目に相手するように言う。
でないと、いつまでも平行線のままだ。
「ちゃんと答えてるじゃねぇーか。好きだって」
「兄さん……。大佐の"好き"は"Love"の好きだよ。兄さんのは"Like"の好きにしか聞こえないよ」
「LoveとLikeねぇ〜」
エドワードはニヤニヤと笑うと、アルフォンスの身体(鎧)をたたいた。
「大佐も俺も、そんな深い"好き"は気にしてねぇーの。それに・・・」
―――すでにちゃんと返事はしてある。
「だから気にすんな」
―――あれはただの言葉遊びだから。
その時の兄さんの幸せそうな顔に、僕は一種の憎しみを覚えた。
あんだけ司令部のみんな(もちろんアルフォンスも)に心配(と書いて"めいわく"と読む)かけておいて・・・
この本人のあっけらかんとした様子。
おもわず……
『惚気るならだれもいないところで、二人っきりでしてくれ!!』
と思っても仕方ないだろう。
「あーあ。僕も彼女がほしいなぁ〜」
アルフォンスのつぶやきは、誰にも届かずに消えた・・・。
End