鋼の短編

□涙
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「鋼の……君はまた無茶をしたそうだな」



久しぶり(3か月ぶり)に東方司令部に行ったエドワードは、執務室に入った瞬間にそう声をかけられた。

なんてことはない。

つい最近、ハイジャック犯を一人で捕まえたことを言っているのだろう。



「相変わらず情報早いな。ちなみに説教は聞きあきた」



ハイジャック犯を捕まえたとき、たまたま列車に乗っていた看護婦が同じような説教を聞かせてくれたのだ。

無事だったからいいもの……とか、軍属だろうと、子供に変わりはないのだから……とか。

半分以上聞き流してはいたが、無茶をしたつもりはないのだが、無茶するなと怒られた。



「その人の言う通りだな。確かに君は軍属で、軍の一員だ。だが、子供なのは変わりない。それは変えられない事実だ。
 せめて、乗客の避難を優先させ、ハイジャック犯はその場にいる軍人に任せるぐらいはしなさい」

「そんな悠長なことしてたら、けが人出るぜ」

「出ないように守ればいい」

「なら捕まえるのも一緒じゃん」

「自ら危険に飛び込むなと言っているのだよ」

「別に……危険じゃねぇーし」


てか、あんなのを危険って言ってたら、俺たちの毎日はどうなるわけ?

危険がいっぱいどころか、いつ死んでもおかしくないときもあるのに。

……もっとも、そんなことを言えば確実に旅をさせてもらえなくなるのは分かっているから言わないけど。



「あのね……心配するこっちの身にもなってみなさい。もし君に何かあったらどうする。それにアルフォンス君も心配するぞ」

「あー、大丈夫だって。そう簡単にはやられないから」

「鋼の!」

「じゃ、報告書読んだら呼んでよ。資料室にいるから」

「待ちなさい!鋼の!!……ったく」


これ以上聞きたくない!とばかりに手を上げてとっとと出ていったエドワードに、ロイは深いため息をついた。

彼に説教しても無駄だと分かっているが、せずにはいられない。

どうも、彼は死に急いでる感じがするのだ。

気の所為であってほしいが……。



――コンコン



「大佐?アルから連絡っスよ」

「アルフォンス君から?めずらしいな……私だ。どうかしたのかね?鋼のなら資料室にいるが……」

"あっ、大佐ですか?すみません、突然"

「いや、構わないよ」

"あの……兄さん、元気そうでした?"

「元気そうも何も……ハイジャック犯を一人で捕まえてくれるほど元気だよ」

"そうですか……あの……大佐にこんなこと頼むのは変だと分かってるんですけど……"

「どうかしたのかね?」


言いづらそうに電話の向こうで唸ってるアルフォンスに、ロイは首をかしげる。

元々アルフォンスからのお願い自体が珍しい。

何かあったのだろうか。


"兄さんを……泣かせてやってくれませんか?"

「え?」

"実は……"


アルフォンスはそういってゆっくりと話し出した。



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