鋼の短編

□好き
1ページ/1ページ




好きとはどこからくるんだろう



友情の好き

家族愛の好き

動物愛の好き



……愛情の好き



アルを好きなのは家族愛の好き。

ウィンリィを好きなのは友情の好き。

デンやハヤテ号が好きなのは動物愛の好き。



……俺がロイに感じてるのは友情でも家族愛でもない。

きっと、最後の愛情の好きだろう。








なんで好きになったのか、自分でも理解できない。

意地悪だし、偉そうだし、からかってくるし、禁句は言ってくるし。

それだけじゃない。

脱走犯だし、雨の日は無能だし、来るもの拒まず去る者追わずだし。


いいとこなんて、錬金術が使えて、俺と対話できるぐらいだ。

………あとは人体錬金の資料や本を用意してくれることや上から守ってくれてるとことか?





そんなんでも、ロイが好きだ。

ちょっと驚いたのは事実だ。

俺にも、異性を好きになる気持ちが残っていたことに。

あの日、俺の"それ"に関する気持ちや機能はすべてなくなったと思ってたのに。





「姉さん」

「アル、兄さんの間違いだ」





忘れそうになったころにするアルとの会話。

自分の性を思い出させるように呼んでくるそれ。

アルにどれだけそう呼ばれようと、ああ、そうだった……ってな感じしか思わないのに、どうして……




「鋼の」




そう呼ばれるだけで自分の性を思い出すのだろう。

いらないいらないいらないいらないいらないいらないいらない……


どんなに言い聞かせてもロイにそう呼ばれるだけで思い出してしまう。


それが嫌で逃げてるのにアイツは俺を呼びつける。

報告書を手渡ししろと言ってくる。


……どんな拷問だよ、おい。


俺はまだその気持ちを……あいつが好きだという想いを受け入れるわけにはいかない。

今更知らないふりはできないから。



いつか、忘れられたら……と思う。

それか、すべて取り戻して、潔くフラれるか、気持ち悪いと一蹴されるか。



あとはこの気持ちが育たないようにするだけだ。

だからロイ?

俺にそんな目を向けないでくれ。





END



(2014年8月14日作成)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ