鋼の短編

□悲願
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俺たちの……俺の悲願はアルを元の姿に戻すこと。

そのためなら、俺がどうなろうと構わなかった。

たとえ、命を落とすことになろうとも。






「兄さん!どうしてっ!!」

「アル……良かった……元に戻れたんだな」

「僕のことより、兄さんが……っ」




ああ……せっかく戻れたのに、早速泣かせてしまった……




「俺のことはいいんだよ……覚悟してたから……」




もしもの場合は……って、ちゃんと大佐たちにも伝えてあるから。


あーあ……ちゃんと自分の足で戻って来いって言われたのに……守れそうにないや……



「兄さん!!」

「アル……?ちゃんとそこにいるか……?」

「にい……さん?」

「ごめんな……お前の姿がもう見えないや……」



霞みがかったように目の前が真っ白だ。

アルの姿が見えない。

できるならもう少し見たかったのに……



賢者の石は完ぺきだった。

でも、対価としては足りなかった。

人の命を使わない。そう決めた時からなんとなく分かっていたことだ。

決してアルには知られないようにしてきた。

バレたら、絶対に止められることは分かってたから……。

実際、大佐にも止められたしね。無理やり押し切ったけど。





「後のことは大佐にお願いしてるから……何かあったら大佐を頼ったらいいから」

「兄さんっ」



さっきから兄さんしか言ってないよ……アル

仕方ない……かな?

できるならもうちょっと他の言葉も聞きたいけど(笑)

ああ……腕が重くて上げられない……

アルに触れたいんだけどな……



「アル……アル……」



あれ……?自分の声が遠くで聞こえる……

ああ、もうだめ……かな




「鋼……エドワード!アルフォンス!!」




幻聴まで聞こえてきた。なんで大佐の声がするんだろう……



「大佐!兄さんがっ」



もしかして幻聴じゃない……?

ならちょうど良かった……

あんたにも最後に伝えたい言葉があったんだ



「エドワード……」



初めてかもしれない。二人きり以外で名前を呼ばれたのは。

約束……守れなくてごめんな?

大丈夫だよ。大佐……ロイならもっと素敵な人が現れるって!

ほら、……ホークアイ中尉もいるでしょ?

一人じゃないよ。だから……大丈夫



「大丈夫なものか!私がほしいのは君だけだ!」



嘘でも嬉しい。けど、やっぱりごめん……





「アル……ウィンリィに……よろしく……な?幸せになれ……よ」





「ロイ……ロイ……」





ああ……なんて言ったらいいのだろう。

言いたいことがありすぎて困った。

けど、そんなに多くも語れないから……

せめてこれだけは……




「大好き……だよ……いままで……ありがとう。……約束……守れなくてごめんな?……できるなら……ロイの……恋人……になりたかった……」































―――ありがとう……






























End


すみません。結局死ネタでした……。



 

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