鋼の短編

□居場所
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――君たちの居場所は、ここだろう?








"鋼"の銘をもらって2年。

いまだに賢者の石は見つからない。

何も変わらないまま時は過ぎる。

けれど、周りは常に変わっていく。

大佐が准将になったり、ハボック少尉たちの階級が一つ上がったり……


周りはどんどん夢に向かって……目標に近づいていくのに、自分たちは何一つ進めないまま……。


だんだん取り残された感じがしていて、東方司令部に戻るのもためらいが出てきた。

みんな変わっていく中で変わらない自分。

まるで、本来の場所に、異分子が入っていくみたい。


自然と、東方から足が離れた。

鎧姿の弟は、東方司令部に行こうと誘ってくるが、生返事ばかりで向かう気などない。



………そんな時、かかってきた電話。



流石に准将だ。

どこにいてもほんの少し探させるだけで自分たちのいるところを見つけてくる。

逃げも隠れも出来ない。

……疲れてるのかな?

常に監視されてるみたいだと思った。

そんなはずないのに……。




"鋼の、そろそろこちらに帰ってきてはどうかね?"

「んー」

"はぁ……何を気にしてるのか知らないが、君たちの居場所は闇の中じゃないだろう?"

「は?」





"――君たちの居場所は、ここだろう"




大佐……准将の指す、ここ、とは恐らく東方司令部……ではなく、彼らがいる場所のことだろう。

それが分かって、思わず息を呑んだ。

自分たちには……自分には居場所がないと思ってた。

赦されない罪を犯した自分には……

けれど、その罪を知りながら、居場所はここにあると言う准将。

思わず、一筋の涙が出た。

あの日から、一度も流したことのなかった涙が……。





End

(2014年6月21日作成)



 

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