『伸ばされる手』 完結

□3.Confusion
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「イタイ…………な」




痛む心臓なんてないが、ズキズキとココロが痛んだ。

兄はもっと痛くて、苦しい思いをしたに違いない。



兄が恋をした。

前に進んでくれた。


――その結果がコレ。



これじゃあ、立ち止まってくれてた方がマシだった。




























「兄さん……兄さん……兄……さん……」



鎧では泣けない。

それでもアルは泣いていた。

こんなの、ヒドすぎる。

やっぱり神様は意地悪だ。

兄からこれ以上何を奪おうというのだろうか。



「兄さん……」

「あれ?アル?久しぶりだな?大将は?一人か?」

「ハボック少尉……」



煙草をくわえたまま近づいてくる知り合いに、アルは項垂れる。

様子の可笑しいアルに、ハボックは真剣な顔をして声をかけた。



「どうかしたのか?」

「ハボック少尉……」

「大将はいねぇーのか?」

「兄さんは……おいてきました。今日は僕だけです」



刺々しい物言いに、ハボックは眉を寄せる。



「アル?」

「大佐って何様ですか?」

「は?」



アルの言葉が理解できなかったのか、ハボックは首をかしげる。



「大将が来ない理由は……大佐か。ってことは、"アレ"が原因か……」

「…………」



"アレ"を指すのがエドの告白だとすれば、マスタング組全員が知っていて……そして兄を気持ち悪がっているのかもしれない……。

アルは思わず大佐に殺意がわく。

兄を拒絶するだけでなく、笑いものにするなんて……



「大将は元気か?また無茶してキズ作ってんじゃねぇーだろうな?」

「……今の兄は……無理ですよ」



――ムチャしないなんて、今の兄にできるわけがない。




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