『伸ばされる手』 完結
□4.Expression
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「泣きたきゃ、泣けよ。ここには俺とお前しかいねぇーんだから」
気付けばエドの小柄な身体を抱きしめてそんなことを口走っていた。
「少尉?何を……」
抱きしめられてエドは身体を強張らせながら問いかけた。
「偽んのもしんどいだろ?せめて俺の前だけでも戻れよ」
「……え?」
――"女の子"なんだから自分を否定すんな。
ハボックの言葉をうまく理解できず、エドは数秒固まった。
――この人はなんと言った?"女"の子?誰が?
違う、そんなはずない。
そんな思いがエドの身体を縛る。
バレるわけにはいかなかった。
自ら偽ったわけでも、男だと名乗ったわけでもなかったけど……
それでもバレるのはリスクが大きすぎるのだ。
「は……離して!ヤダ……少尉!!」
「落ち着け!大丈夫だ。知ってるのは……気づいたのは俺だけだ」
「ヤダっ!ダメ!!ごめんなさ……っ」
混乱してるのか、ヤダヤダと繰り返すエドに、ハボックは一層強く抱きしめた。
子供をあやすようにトントンと優しく背中をたたいてやる。
「エド、お前は一人じゃねぇーんだ。泣いてもいいんだよ。
思いつめててもアルを心配させるだけだぜ?」
常に兄であろうとするエド。
自分よりも弟を第一に考えて、自分が傷つくことに無頓着で……
色々な言葉を並べて少しでもこの傷ついた子供に届くようにと話しかける。
そして耐えられなかったのか、ハボックが知る限り国家錬金術師になって初めて、
そしてエドが覚えてる限りあの日以来初めて、エドワードは声を上げてハボックの胸で泣いた。
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