鋼の短編
□さよならは言わない
2ページ/4ページ
俺には好きな奴がいる。
俺よりもだいぶ年上で、女性には困らない男。
俺はあいつを知っている。
アイツは"俺"を知っている。
でも、"私"を知らない。
アイツは俺に好意を持っている。
それが俺と同じかは分からないけど、でも嫌われてはいないと思う。
……ただ、それは"俺"に対してであって、"私"に対してじゃない。
――だから、好きだけどきらいだ。
気付いてほしいのに……
見つけてほしいのに……
アイツは"私"に見向きもしない。
俺は臆病だから……
進むことも逃げることも出来ない。
結局、自分の想いに蓋をするしかできないのだ。
・