鋼の短編

□痛み
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「鋼の?香水でもつけてるのか?」

「なんで?」


ひと段落ついたのだろう。

ロイの声にエドワードは返事を返した。


「いや……珍しく君から香水の匂いがしたからね」

「ああ、香水っていうか、アロマ?なんかここに来る前に寄ったところで焚いてたみたい」


それが移ったんじゃね?


何でもないように答えるエドワード。

しかし、一瞬の変化をロイは逃がさなかった。


「鋼の、服をあげてみなさい」

「は?……ヘンタイ?」


ロイはエドワードが女だと知ってる少ない人物の一人だ。

たまたま着替えをしていたら、間違って入ってきてバレた。


「もちろん、脱ぐ必要はない。ただ、腹を見せてみなさいと言っているだけだ」

「なんで」

「……何もないなら見せられるだろう?」


自信満々にそういわれ、エドワードは黙り込んだ。

別に女だとか男だとか気にしてないエドワードはたとえロイの前であろうと、服を脱ぐことに抵抗は感じない。

ただ、今回は別だ。

服なんて脱いだら……


「上司命令だ。服をあげなさい」

「っ、卑怯者」


エドワードはロイをにらむと、渋々服をあげた。

白い肌に真っ赤な傷痕。

しかもまだ真新しい。


「どういうことかね?」

「別に……どってことねぇーよ」


真っ赤な傷だけじゃない。

あちこちにはかすり傷がたくさんあった。

それだけ旅が過酷であるのだと分かる。




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