鋼の短編

□涙
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「にしても、泣かすって、どうするんスか?」

「適当だ」

「適当って……」

「そもそも、お前は鋼のの涙を見たことがあるか?」

「……ないっすね」

「鋼のは無意識のうちに、俺を律している」

「泣かないようにっスか?」

「どちらかというと、弱音を吐くことに、だな」




そうこう言ってるうちに資料室についた。



――ガチャ



「……やっぱり集中力は寝不足でも健在……か」



本の虫になっているエドワードに、ロイはため息をついた。

確かに、よく見れば隈がすごい。

以前といっても3か月前だが、その時はここまでひどくはなかったはず。



「ハボック、少しの間外に出てろ」

「あー、了解っス。何かあったら呼んでください」



素直に出ていったハボックを見送って、ロイはエドワードに近づいた。

とりあえずはエドワードの意識を自分に向けなければいけない。



「すこし休憩をしてはどうかね?」



無理やり本を取り上げると、キョトンとした顔で見上げてくるエドワード。

その無防備さに、思わずため息をつきたくなる。

アルフォンスは大変だっただろう。



「アルフォンス君から聞いた。寝ていないのだろう?」

「別に、大丈夫だって」

「そうは見えないがね。集中力も落ちているようだし?」



本を取り上げてみて分かったことだが、あれだけ集中していたにも関わらず、本はほとんど進んでいなかった。



「少し寝てはどうかね?ここの本は逃げないだろう?」

「俺たちには時間がねぇーの。てか、寝てるから大丈夫だって」

「1時間で起きているのを寝てるとは言わないよ」

「……アルから聞いたのかよ」

「さっき電話で教えてくれたよ」

「……余計なことを」

「余計ではないだろう?それで倒れてたら元も子もないだろうに」

「倒れないから大丈夫だ」

「大丈夫には見えないが?」

「大丈夫なんだよ!!」



エドワードはキッとロイを睨んだ。

本はロイが持ってるから、取り返さないと読めない。

他の本を読んでも、ロイがいる限り、読ませてもらえないだろう。



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