鋼の短編

□七夕
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「……頭でも沸いた?」





少年――エドワードは目の前のおとなの正気を疑った。


だってそうだろ?


なんたって、目の前の大人は大佐という地位を持っていて、不本意ながら世の中の女性がいうかっこいい男……なのだから。







「ひどいね……」


そんなすべてを投げ出せるほどの恋ができるなんて、ほとんどないよ?


「あんたみたいに?」


皮肉交じりに言ってやれば、大人は苦虫をかみつぶしたような顔をした。


「……恋とかよくわかんねーけど、人それぞれだろ?」


そんなに気にすることじゃねぇーと思うけど?


フォローするわけじゃないが、そう言ってやれば今度は柔らかい笑みを浮かべた。





……最近、特にこんな顔を向けてくると思う。

まるで、愛おしいひとを見るみたいな……





「君は恋をするつもりはないのかい?」

「俺はアルと自分のことで手一杯。俺の腕は二本しかねぇーんだ。そんなにたくさん持てねぇーよ」



だから恋なんてしてる暇はねぇーの!!



「そうか……。君たちには七夕は関係なさそうだね」

「そんなことねぇーよ……」



ボソッと呟いた言葉は大人には届かなかったようだ。

それでいい。

じゃあ……と問い詰められても困るだけだ。


言うつもりはなかったのに、ポロッとこぼれ出たのだ。

それだけこの男に気を許してるということだろう。

気を引き締めなければ、無意識に余計なことも言ってしまうかもしれない。





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