短編

□一筋の光
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私は。私の今は。

煙い。臭い。痛い。辛い。嘔吐。涙。

血の味。霞む視界。動かない身体。

ああ、もどかしい。

こんな状態で意識がまだあるのに怒りさえ感じる。

苛立ちで身体に少しの力を入れれば、お腹からドプリと気持ち悪い液体が流れた感覚がした。

やられたんだ、私。

爆発に巻き込まれたんだ、私。

なんて無様なんだ、私。

いつも皆の足を引っ張っている私は、とうとう人生の終わりに近付いたみたい。

ひんやりとしたコンクリートの地面が生命を吸い取ってるみたいだ。

私は笑う。

それは、自嘲?優越?達成?後悔?

きっと全部だ。全部。ぜんぶゼーンブ。

全部ってなんだろうね。全てかな。
でも、全ても何なんだろうね。

分かんないや、私、馬鹿だから。

アハハ、と笑おうとして。身体が動かない事に、幸せと不幸を同時に感じる。

涙が出た。

私、死ぬのかな。

今さら死への恐怖。

でも直ぐに消えた。

きっと爆発に巻き込まれた時見たいに一瞬だ。

一瞬。

一瞬て何秒?

どうでもいいことに頭が回る。

それは冷静だからか、はたまた狂った頭の現実逃避?

私は笑う。

ルパンたち、無事に逃げれたかな。

私はただの囮。

ルパンたちが無事逃げれるように。

けど足手まといの私は呆気なく殺られて。

次元は、アイツは大丈夫だ。

私の愛した男は実にクールだ。

冷たい方でもかっこいい方でも。

仕事と割り切って私を置いていくだろ。

五エ門は、旅に出そうだ。悔いながら。

不二子は、泣くだろうなぁ。

弱虫巨乳だもの。でもそれが可愛い。

ルパンは・・・悲しむだろうなあ。

諦めが悪いもの。私は直ぐに諦める。

私は笑う。

私は仲間のために死ねるんだ。

いいんだ。これで。

目を閉じる。

深い闇に包まれる。

全ての感覚が無になりつつある。

死に近づく。

なぜ彼らの仲間になったか忘れた。

なぜ次元を男として愛したか忘れた。

なぜ私はここにいるのかを忘れた。

私は私の役目を忘れた。

けれど、これだけは忘れなかった。



私はルパンたちが大好きだ。

みんなみんな大好きだ。

好きで好きで仕方がないんだ。バカヤロー。

死にたくない。

死にたくない。

死にたくない。

私は笑う。

顔をクシャクシャにして。涙を溢して。

皆の傍にいたい。と、願う。

身体は動かない。

痛みも、もう感じない。

死が怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

心がもがく。

まだ、ここに留まりたいと。

けれど身体が死んでいく。

心と身が離れそうだ。

苦しいよ。どうしようも出来ない。

こんな、暗いところで、私は、一人、

独り、ひとり、ヒトリ。



ドガンとドアを蹴破る音が聞こえた。

幻聴?都合のいい音だ。

私の破れた鼓膜が敏感に反応する。


「星海!!!!」


一筋の、光。希望。望み。願望。

未来。



何で戻って来たんだ。

阿呆次元。




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