黒執事

□夢みたいな
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「訳分かんねー」
開口一番、そう呟いたのは他でもないジェシカだった。
書類をデスクに放り投げる様にして置く。
パサリと音がした。
「例の白い男ですか?」
隣で紅茶を注ぐロスターは、ジェシカを見るなり苦笑する。
ジェシカは肯定の意を表すように、ドカッと椅子に腰掛けた。その様子はあまりにも険悪で、一瞬にして不機嫌だと分かる。
書類に目を通しながら、ロスターの淹れたアッサムティーをがぶ飲みする。
「お行儀が悪いですよ、お嬢様」
クスリと笑ってミートパイを差し出すロスターは、昨夜の男のようで苛々した。
「苛々すんだけど」
「すいませーん」
「出てけ」
「アハハ」
減らず口を軽く交わしながらも主人の気分を察してくれるロスターは、結構いい奴だと思う。


「はぁ…」
ミートパイをフォークでつつく。
サクサクした表面の生地は、それだけで脆く崩れた。
「…考えても埒が明かねえな」
口を渋らせてフォークを置き、苛々する指を抑える。

「そうそう、考えるだけ無駄だよ」

首に硬く冷たい感触。頬に掛かる白髪には見覚えがあった。
「…誰だ」
「アッハ、聞くまでも無いんじゃない?」
挑発的な笑い声は怒りを募らせていく。
「覚えてるよね?…ジェシカ・ジュリエッタ」
「!!」
直ぐ様飛び退き、先程まで自分に剣を当てがっていた人物を見据える。
「やっぱり昨日の…」

白髪の男は、昨夜と変わらぬ不敵な笑みでこう告げる。

「チャールズ・グレイ。アンタの許嫁」
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