短編
□痕《グレゴリー・バイオレット》
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《痕》
「あッ…もう…ッ…バイオレット…」
「嫌…ッ…どこにも、行かない、でッ…!!」
…夜が濃くなる。
妖し気に満ちた月は、窓の外から室内を照らしていた。
その部屋で蠢く男女。厭らしい水音はやがて強く激しく、何度目かも分からない絶頂へと導いていく。
「あ、ぁあああぁああッ…!!」
「ッく…ッ…」
バイオレットは腹の上へと欲を吐き出し、涙で濡れた恋人の唇を奪う。
強引に、
貪るように。
「んッ…ンン…ッ…ふ…、ぁ…」
舌で歯茎をなぞってやると、ジェシカはバイオレットにしがみついた。
「ぅ…あッ…」
「んッ…良いんでしょ…ッ…?」
まともに言葉を発せないジェシカを他所に、また律動を始める。
全ての発端はジェシカにあった。