世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  NARUTO疾風伝


「待て! 待てってばよ!!」

『わわ、』

「おいおいおい…!」



 全速力で走り去ろうとしていた限。
 その限の背に乗っていた黒凪の腕が掴まれ閃が焦った様に戻って来る。
 離れていく黒凪に手を伸ばした限だったが一歩及ばず彼女はナルトに捕まった。



『…ちょっとナルト…』

「つ、疲れたってば…」

『もー…諦め悪いねぇ。限に追いつくとは思わなかった』

「ちょっとナルト!何やってんの…よ…」



 遅れて現れたサクラが言葉を飲み込んだ。
 その後に現れたカカシもナルトが抱えている黒凪と限達を見ると微かに目を見開く。
 久々に見た第七班に黒凪達は一様に目を細めた。



『久しぶり。2年ぶりぐらい?皆でっかくなったねぇ』

「…対してお前は全然変わってないな、黒凪」

『態と年を取らない様にしてんの。…このサイズが1番動き易いのよね』

「……そろそろ返せ」



 限の言葉にナルトが黒凪を抱え直した。
 …ホント、同じ位だった背丈も随分違ってしまった。
 今では黒凪を抱えるナルトは彼女の兄だと名乗っても疑われない程の成長ぶりである。



「今まで何してたんだってばよ、お前等」

「別に、ふつーだよ。暗部と連携して裏の仕事してる」

「…あの中忍試験からお前達第十一班は完全に姿を消した」

「当たり前だっつの。元々第十一班なんて存在しないんだぜ?」



 そう。だからこそナルトは見かけた黒凪達を追いかけて来たのだろう。
 偶然任務先で出くわしただけの彼等にとっては傍迷惑な話だ。
 ぐでーっとしている黒凪に限の眉間の皺が深くなっていく。



「お前等知ってんのか?…サスケが、」

「知ってるよ。」

「!」

「…全部知ってる。俺等は抜け忍の始末も任されるからな」



 始末。その言葉に反応したのはナルトだけでは無かった。
 そんな第七班を見た閃はため息を吐き肩を竦ませる。



「おいおい…サスケを殺すなとか言うなよ?」

「なっ、殺す気!?」

「俺達の任務にサスケの暗殺も入ってる」

「んだと!?」



 ナルトが限に掴みかかろうとした時、その間を1つの影が走り抜けた。
 いつの間にか腕の中から消えている黒凪に目を見開くナルト。
 それ程の速度を出せる奴と言えば思い当たるのは1人だけ。



【なーにやってんの。任務中だろ?】

「あ゙、テメェ!」

【よォ。九尾の化け狐クン】

「…火黒…」

かーぐーろぉおおお



 微かに聞こえた声に皆一様に顔を上げる。
 火黒は声のした方向に顔を向けると1人「あ。」と呟いた。
 限と閃は目元を覆っている。
 そんな彼等にナルトが顔を顰めた。



「何だってば…」

「…よりにもよってアイツか…」

「ちょっと愉快な奴が来るけど気にすんな…」

【あ、ちなみに愉快な奴"等"だからな】



 ずざざ、と足を止める少年。…そして浮かぶ犬。
 ぜーはーと肩で息をする少年の横で白い犬が眉を顰めた。
 そしてその様子を怪訝な様子で見ていた第七班は犬が話した事とその口調に目をひん剥く事になる。



【ちょっと火黒!アンタ何やってんのさ!】

「…オカマ?」

「か、ぐ……ろぉぉ」

【死にかけてんなァ、良守クン】



 ちょっと良守!しゃんとしな!
 全くアタシの仕事が増えて良い迷惑だよ…!
 アタシって言った?言ったわ…。
 ナルトとサクラが顔を見合わせて言った。



「…てめ、急に走るんじゃねぇよ!!」

【あー?】

「あー?じゃねえ!しかもまた黒凪か!黒凪なんだな!?またかよ!」



 何か無駄に元気な奴が来たってば…。
 そう呟くナルトに呆れた様に「だろ?」と閃が返す。
 そんな2人に目を向けた良守はナルト達を見つけると一旦言葉を切った。



「あー…、…確かナルト…?」

「!俺の事知ってるってば…?」

「まあな。兄貴が覚えろってうるせーから」

【アンタは九尾の化け狐ってんでアタシ等の監視対象なんだよ】



 うちはサスケと同じ班で何しでかすか分かったもんじゃないみたいだしねぇ。
 そう言った斑尾にナルトが少し眉を寄せる。
 その様子を見ていた良守が「で?」とナルト達第七班を見て言った。



「なんで黒凪達とそのナルトが睨み合ってんだよ。」

『顔見知りだから追ってこられただけ。後はサスケを殺すなーって』

「そ、そうよ!サスケ君を暗殺するって…!」

【あー。そうだなァ、確か任務に入ってた】



 出くわせば殺せ、噂を聞いても追いかけて殺せ。
 捕まえろと言われた事はないねェ。
 笑って言った火黒にカカシが眉を寄せて口を開いた。



「サスケは俺達第七班が連れ戻す。…火黒、手を引け」

「カカシ先生…」

【そう言う訳にもなァ】

「なんでだよ。連れ戻すって言ってんだろ?待ってやればいーじゃん」



 あっけらかんと言った良守に「あぁ?」と黒凪達の目が向いた。
 しかし良守の表情からは"本心で言いました"としか読み取れない。



「俺もおかしいと思ってたんだ。…抜け忍っつったってそんなにすぐ殺さなきゃなんねーの?」

【あ、それは俺もだな。別に良くね?抜けても】

「バカかお前等…。里の機密情報が洩れたら駄目だからだろ。しかもそのサスケが大名や他の里の忍を殺してみろ、それこそ里に皺寄せが、」

「連れ戻すんだろ?」



 閃の言葉を無視して問いかけた良守。
 ナルト達は呆気に取られながらも頷いた。
 だったらいーじゃん!と振り返る良守。
 そんな良守の額に閃の爪がザクッと突き刺さった。



「ギャー!」

「そう言う訳にもいかねーんだよ!」

【皆違って皆良いってコトで良いんじゃないの?】

『あんたも何言ってんのさ…』



 つっても君がお父サマに直談判すればどうにかなるんじゃない?
 そう言った火黒にナルト達の目が黒凪に向いた。
 額を抑えた良守も便乗して「そうだよ!今の俺等を仕切ってるのは時守だし!」と笑顔を見せる。
 ナルト達が一斉に「時守?」と訊き返した。



「黒凪のとーちゃんだよ。時守が言えば大体の任務は変更出来るよな?斑尾。」

【…確かに時守様の発言力は大きいけど…】

『えー…。父様に私がー…?』

【黒凪を使わないとなるとコイツのお兄サンだな】



 あー…、兄貴なぁ…。
 渋る良守にナルト達の視線が移動する。
 するとそんな彼等の真上から気の抜けた様な声が掛かった。



「…何してんの?任務中だろ?」

「あ゙、兄貴」

「…頭領」

「頭領、助けてくださいー…」



 閃の言葉に上空の結界の上に立っていた正守が降りてきた。
 正守はカカシと目を合わせると小さく会釈をして微笑む。
 どうも、と軽く言った正守の服の裾を良守が引いた。



「兄貴、コイツ等うちはサスケ?って奴の暗殺を止めてくれって」

「…うちはサスケの暗殺を?」



 小さく頷いたカカシに困った様に後頭部を掻く正守。
 んー…。と唸る正守にナルトが掴みかかる。
 おっとっと、と少し後ずさった正守に限がナルトの腕を掴んだ。



「…いい加減にしろ、ナルト」

「限…!」

「いいよ、限。…そうだなぁ、つまり暗殺の任務を取り消せって事でしょ?」

「はい」



 カカシが今一度頷くと正守が少し眉を寄せた。
 僕等が暗殺をしたくないと言った所でその命令自体が消える訳じゃないですけど。
 そう言った正守にカカシが難色を示した。



「結局は暗部だとかにその任務は流れていくし…」

「だったらやっぱり時守しかいねーじゃん!」

「時守"様"な。開祖なんだから」



 そんな良守と正守の会話に再びナルト達の目が黒凪に向いた。
 その視線を受けた黒凪は深い深いため息を吐く。



『結局私…?』

「そうなるね。」

『んー…』

「黒凪、頼むってば!俺が出来る事なら何でもする!」



 ガッと肩を掴んで言ったナルトに黒凪の目がチラリと向いた。
 …何でもする?
 聞き返した黒凪に「お、おう」と覚悟を決めた様に頷く。
 微かに黒凪が笑った。



『だったらねぇ』

「!」



 黒凪の指先がナルトの腹部に向かった。
 君の中に居る狐ちゃん、ちょっと連れて来て欲しい。
 …は?とナルト達、特にカカシが怪訝に眉を寄せた。



「…俺の中に居る、」

『九尾。逢いたがってる奴がいてさ』

【…あぁ、姫さんか】

『そうそう。…ね、良い?九尾とは長年の付き合いなんだって。』



 狐仲間だって言ってた。
 そう言った黒凪にナルトが小さく頷いた。
 得体の知れない条件を呑んだナルトに「おいナルト、」とカカシが焦った様に一歩踏み出す。
 それを遮ったのは火黒だった。



【そんな怖い顔すんなよカカシィ】

「…火黒」

【だーいじょうぶだって。ウチの黒凪に任せときなァ】

「……」



 んじゃあ交渉成立。
 黒凪が小さく笑って言うと火黒が一瞬で彼女の背後に移動した。
 正守も小さく微笑んで黒凪の側に立っている。



『じゃあ私から父様に言っておくよ。…サスケの事は安心しな』

「お、おう」

『んじゃあ皆で任務に戻りましょ。正守、』

「ん?」



 後で父様の所に一緒に行こう。実行部隊を仕切ってるアンタも必要だから。
 その言葉に肩を竦めて頷いた正守。
 それじゃあ…
 黒凪の言葉に従う様に火黒が良守を肩に担いだ。



『解散!』

【はいよ。】

「ギャー!」



 良守を物凄い勢いで連れて行く火黒。
 黒凪も限が担いで一瞬で姿を消した。
 閃も限と同じぐらいの速度を出して去って行ったし、正守はいつの間にか姿を消している。



「…やっぱ変な奴等だってば…」

「…でも変わってなかったね。」



 相変わらず黒凪が仕切ってるみたいだし、…後から現れた人間に関しては気配を全く掴めなかった。
 あの中忍試験で現れた彼等と今も全く変わっていない。
 …変わらず得体が知れず、そして自分達など足元にも及ばない。
 そう思わされる人達。




 謎多き一族


 (またうちはサスケを助けるんですか?)
 (あ、七郎君)
 (彼を殺さないでと言うから里抜けの際に殺す事を止めておいたのに。)
 (…珍しく情が移ったみたいでさ。)


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