世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  不死の破壊者


「……。黒凪さん、見覚えのない忍2人が貴方達の感動的な話を盗み聞いてますよ」

『うぇ?』

「あー…面倒な事になったな…うん」

「…チッ」



 外に出て天井を見上げた黒凪の目が少し充血している。
 泣いた後の顔にデイダラとサソリは一瞬ギクッとした。
 しかし彼女は2人を認識するとふわりと笑みを浮かべて。



『ああ、別に話を聞かれても大丈夫なんだよあの子達は。』

「「!」」



 そう、あっけらかんと言ったのだ。
 黒凪の言葉を聞いた青年は再びデイダラとサソリを見て、そして黒凪を見る。
 …そうですか。
 戸惑った様にそう言って青年が地面にゆっくりと降りて行った。
 デイダラとサソリも隠れる理由が無くなり地面に降り立つ。



『この2人はデイダラとサソリ。ほら、暁の。』

「…ああ!この方々が…」

『こっちは扇七郎。木ノ葉の扇一族って聞いたらサソリは分かるよね?』



 頷いたサソリと打って変わって分からない様子のデイダラ。
 そんな2人に自己紹介をする様に七郎が笑みを顔に張り付け頭を下げた。



「初めまして。扇一族は木ノ葉では主に里の警護を生業としている一族で、僕はその当主です。」

『七郎君は間一族の人じゃないけど同じぐらい大事な人なの。喧嘩売ったら只じゃ済まない実力者だから仲良くね。』

「えー、なんですかその紹介。僕が凄い実力者みたいじゃないですか」



 あはははは。と笑う七郎は傍から見れば気の良い青年だ。
 しかしその優しい笑顔に途轍もない力を感じ取った2人は黒凪の言葉に素直に頷いた。
 そんな2人に目を向けた七郎は「それにしても珍しいですね」と2人の顔を覗き込む。



「暁の人間を仲間に入れるとは聞いていましたが、自分の秘密を知られても良い程に信用するなんて。」

『…そう?』

「そうですよ。黒凪さん、そんなに警戒心が薄い人でしたっけ?」



 少し棘がある様な気がするのは気の所為だろうか。
 デイダラとサソリがその違和感に少し眉を寄せていると黒凪は特に気にした様子も無く笑顔で言い放った。



『だって仲良くしたいんだもん。…仲良くしたい相手には自分から全部見せてかないと。』

「「…!」」

「…へえ。羨ましいなあ、そんなに思って貰えて。」



 ピキーンと凍った空気を閃が機敏に感じ取り震えあがる。
 しかし能天気なデイダラと人の感情に疎いサソリは完全には感じ取っていないようだった。
 七郎からの露骨なまでの敵意に。



「ああそうだ。黒凪さんこの後用事はありますか?」

『?ううん、別に。』

「じゃあちょっとこっちの屋敷に来てくれません?一族の人間の修行で屋敷が少し壊れてしまって」

『ああ、修復ね。じゃあ今から行くよ』



 では遠慮なく。
 そう言って黒凪を抱えて飛び上がる七郎。
 彼は彼女を抱えた後閃達に「それじゃあ」と笑顔を向けて去って行った。
 その様子を見送ったデイダラとサソリは無言のまま空から視線を前方に戻す。



「…なあ旦那」

「あ?」

「なんかあいつムカつかねーか?」

「…あぁ、同感だな」



 あ、なんとなくでは勘付いてんだな…。
 目付きを悪くして言ったデイダラと無表情ながら不機嫌そうなサソリ。
 そんな彼等を見て閃は乾いた笑みを浮かべた。






























『あらら。すーごい壊れ方。』

「でしょ?」



 見事に砕かれて抜けた扉とバラバラの窓。
 式神と共に修復に取り掛かった黒凪の側で七郎がふと空を見上げた。
 そして風に吹かれて流れる雲を見、徐に黒凪に目を向ける。



「暁、近付いてますよ。」

『あ、ホント?』

「はい。…んー…、…あ、今火の寺です。」

『火の寺…って事はもう火の国の中だね』



 そうなりますねえ。
 緩く言った七郎の声に耳を傾けつつ扉と窓を修復して立ち上がる。
 すると伝書鳩が七郎の側に止まり手紙が彼の手に渡ると飛び去って行った。



「…。あ、火影様に呼ばれた。」

『あれじゃない?暁の動向について。』

「えー…。僕、三代目は結構好きだったんですけど五代目はどうもなあ…」

『一緒に行く?』



 是非。即答してにっこりと笑った七郎に風で持ち上げられ共に火影の執務室に向かった。
 そうして共に執務室に入ると怪訝な綱手の目が黒凪に向く。
 しかし七郎が一歩前に出てにっこりと笑った。
 その顔を見ても尚険しい顔を止めずに指を組む綱手。
 恐らく彼女のあの態度が七郎が苦手だと言う理由なのだろう。



『(七郎君に多少なりとも靡かない女の人って少ないからなぁ…)』

「カカシの調査で暁のツーマンセルが火の国の側まで来ている情報は入っている。…率直に聞く。暁は既に火の国に侵入しているか?」

「ええ。先程は火の寺に居ましたが…、……。ああ、火の寺の地陸さん殺されましたね。」



 多分ですけど。と言った七郎に綱手が椅子から立ち上がる。
 どういう事だ!?そう凄い剣幕で問い掛けた彼女に「まあ落ち着いて」と笑って口を開いた。



「火の寺がボロボロになってます。暁との戦いで壊れたんだと思いますが、暁の2人がすぐそこの換金所の方向に動き始めたので多分賞金が欲しいんじゃないかな」

「…っ、地陸は闇の相場で三千万両の賞金首だからな…。」

「何なんですかね奴等。人柱力が目的なら真っ直ぐ来ればいいのに。」

「………。」



 そしてこの七郎の言葉を考え込む事によって無視するスタイル。
 見事に彼の苦手な女性を演じている。
 肩を竦めた七郎の目が黒凪に向いた。
 成程、確かに苦手な人間と2人きりと言うのは辛いだろう。



「…今すぐ暁の捕獲及び抹殺に新兵制した20小隊を向かわせる。火の国内で大規模な戦いが行われる事になるだろう」

「分かりました。心しておきます。」

『…。(不死身が相手なら私とあの人かなぁ…。ちょっと探すの面倒だけど)』

「間。」



 あ、はい。と顔を上げる。
 綱手の鋭い眼光が黒凪を捉えた。
 最近お前達の不自然な動きについて報告が入っている。
 そう言った彼女に黒凪は少しも表情を変えない。



「カカシが向かっていた暁の動向調査でも何度か間一族の者を見たと報告が上がっている。…暁に関わってどうするつもりだ」

『あぁ、それは近付いてきている暁がイタチかどうかの確認です。我々の任務に彼の暗殺も入ってるので。』

「(あ、上手い事誤魔化した。)」

「…。そうか。」



 とりあえずは納得した様子の綱手に笑顔を向ける。
 …ま、今回は"偶然"暁との戦闘に参加する事になるかもしれませんけど。
 内心でそう言って七郎と共に執務室を後にする。
 そうして間一族の屋敷まで黒凪を送り届けた七郎は彼女ににっこりと笑顔を向けた。



「ありがとうございました。…相変わらず素晴らしいまでの誤魔化し具合でしたね。」

『あはは。嘘付くのが得意な所は父様に似たのかもね。』

「…で、どうするんです?今日中には20小隊が派遣されますよ。」

『そうねえ…、ちょっと探しに行かなきゃならない人が居るから暁が簡単に殺されない事を祈るかな。』



 鋼夜。と影に向かって声を掛けた黒凪の側に影からずるりと鋼夜が姿を現す。
 そんな鋼夜の姿に七郎が小さく微笑んだ。
 鋼夜の上に跨った黒凪が「じゃあね」と一言声を掛けて七郎に手を振る。



【…目的地は】

『目的地って言うか、探して欲しい人が居て…。』



 ほい、と差し出されたマフラーに目を向け立ち止まって臭いを嗅ぐ鋼夜。
 そして臭いを探す様に顔を上げる。



『まあ放浪してる人だから火の国にはいないと思うんだけ、ど!?』



 突然走り出した鋼夜に掴まり「え、居た?」と問えば「あぁ」とぶっきらぼうに返答が返った。
 火の国に居るとは言ってもかなり端の方らしく、つい最近に火の国に入ったのが分かる。
 つまりこのタイミングで火の国に戻って来たと言う事だ。



『…。暁を追って来たのかねえ』

【…そもそも屋敷から出て行った理由は何だ】

『あれ、あんた知らないんだっけ?夜行でまだ見つかってない人達探しに行ってんのよ。巻緒さんとか大とか…』



 あ、見つかったから戻って来たのかな。
 さあな。そう言って走り続ける鋼夜の上で周りを見渡す。
 そろそろ20小隊も暁を探索し始めた頃だろう。
 このまま火の国の端まで向かっていれば暁を見つけ出した小隊が戦闘をしている最中に参加と言う形になるかもしれない。


 
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