世界を君は救えるか×NARUTO
□世界を君は救えるか
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守護忍十二士編
飛段や黒凪から逸れた角都はため息を吐くと周りを見渡し、己に向けられている殺気に振り返る。
背後に立っていた男に目を向けた角都はすぐさま仕掛けられた攻撃が土遁のものだと気付くと攻撃を回避し目を細めた。
「成程な。」
「っ!?」
ぐんっと一気に距離を詰めた角都にフドウが目を見開き身体を硬化する。
同じく腕を硬化した角都がフドウを殴り飛ばし地面に叩きつけた。
ガンッと響いた音に片眉を上げて角都が飛び退けばゆっくりとフドウが身体を起こし角都を睨む。
「…俺と同じタイプの忍か…」
「……。」
何も言わずに再び距離を詰め何度か攻撃を仕掛けていく。
その攻撃を受けつつフドウが角都に目を向けた。
角都の攻撃は辛うじて防ぐ事は出来ているがその速度との威力から反撃する事が出来ずにいる。
「(コイツ…なんて速度で俺に攻撃を…っ)」
「(多少硬いがどうにもならない訳ではないな)」
地面に倒して一気に拳を叩き込んだ。
パキッと割れた己の胸元にフドウが目を見開き痛みに眉を寄せる。
それに目を細めすぐさま触手をフドウの心臓に伸ばした。
「っ、な、んだこれは…!」
「…終わりだな」
「なん、っ…」
心臓に触手を結び付け自分の胸元の触手と同化させる。
そうして経絡系ごとゆっくりと抜き取っていけばやがてフドウがぐったりと動きを止めた。
ずるりと抜き取った心臓を右胸に納めて立ち上がった角都は黙って周りを見渡す。
そして周りを囲む岩肌の一角で目を止めると徐に土遁の印を結んだ。
「角都ー。…かーくーずー!」
『見事に引き離された…ごめん…』
「あーもうさっきからぐずぐずうるせェ!謝んなって何回言やあ…」
ドンッ!と響いた音に「あ?」と飛段が眉を寄せて振り返る。
続いて何かがゴロゴロと此方に近付いてくるような音が響き始め、ぐったりとしていた黒凪がピクリと顔を上げた。
2人が音の方向を見ていると奥の道から巨大な丸い岩が物凄い勢いで此方に迫ってくる。
はぁ!?と目を見開いた飛段は黒凪を抱えたままで岩から逃げる様に走り出した。
「ざっけんななんで岩が転がってんだ!!」
『どう考えても罠でしょーよ』
「ちょ、どうにかしろ黒凪!」
『…。』
首をひねって振り返り、構えて複数の細い結界で岩を突き刺しバラバラに砕く。
足を止めた飛段は振り返ってバラバラになった岩を見ると息を吐いた。
すると「フエンの罠も大した事ないねえ」と呆れた様な声が洞窟に響き渡る。
「…あら、意外と良い男じゃない?」
「お?」
『貴方中身知ったら幻滅するよ。』
「んだとォ!?」
ムキになって黒凪を振り返った飛段にくすっと笑うとフウカがゆっくりと2人に向かって歩き出した。
別に中身はどうだって良いわよ、顔がイケてたら。
そう言ったフウカに黒凪が微かに目を細める。
途端に一瞬姿が消え、数秒で飛段の側に近付くとペロッと飛段の頬をフウカが舐めた。
『…え、舐めた?』
「舐められたなァ」
『なんであんた平然としてんの…』
「…あら?このチャクラの味…一体何かしら…?」
もしかして血継限界の使い手?
途端に目の色が変わったフウカに黒凪と飛段が同時に眉を寄せる。
すると再び姿が消え次は黒凪の頬を舐めた。
『っ、きも…』
「…チャクラの味がしない…」
「オイコラ黒凪!テメェ俺の服で拭ってんじゃねェ!」
良いわねえ、得体の知れない相手は好きよ。是非私のコレクションになってほしいわ。
フウカの言葉に「コレクション?」とこれまた同時に聞き返す。
その様子を見たフウカは片眉を上げた。
「もしかして兄妹?」
『断じて違う。』
「オイ断じてってなんだよ!そんなに嫌か!?」
『嫌じゃないけど嫌なんだよ。』
それって嫌って事じゃねぇか!
ギャーギャー騒ぐ飛段に「ねーえ?」とフウカが猫撫で声で声を掛ける。
振り返った飛段のすぐ顔の前でフウカがにっこりと笑った。
「フレンチとソフトどっちが好み?特別に貴方に合わせてあげる。」
「あ?…何の話だ?」
「あら、顔はイケてるのに頭が弱い人?接吻の事よ、接吻。」
「……。せっぷんってなんだ?」
真顔で問い返した飛段に黒凪とフウカが同時にずっこける。
もう、と眉を寄せたフウカは「コレの事よ。」と顔を飛段に近付けていった。
それを見た黒凪はすぐさまフウカの顎の下から結界を伸ばして殴り、左手で飛段の口を覆う。
「んぐっ!?」
『接吻ってのはキスの事よ。…え、キスも知らない?ちゅーするって事なんだけど』
「んー。んんんんん。」
あー、成程な。…恐らくそのような事を言っているのだろう。
もごもごと話す飛段に呆れた目を向けて此方を睨むフウカを見る。
フウカは黒凪を睨み付けると顔を上げて「フエン!」と叫ぶ様に言った。
そしてフウカは印を結ぶと風遁を使い黒凪と飛段を引き離す。
『っ!』
「あ。」
黒凪が壁に吸い込まれる様にして姿を消し、1人になった飛段が後頭部を掻いてフウカに目を向ける。
フウカはそんな飛段を見ると妖艶に微笑みぱちっと片目を閉じた。
そんなフウカを真顔でじっと見ていた飛段は徐に背中の鎌を持ち上げ腰を下ろしてニヤリと笑う。
「しゃーねえ、さっさとやるか」
「あら、やる気になってくれた?」
鎌を振り上げて走り出す。
ニヤリと笑ったフウカは姿を消しブンッと振り下された鎌を避けた。
消えたフウカに微かに目を見開いた飛段は地面に突き刺さった鎌を引き抜くと肩に担いで周りを見渡す。
ふっと現れたフウカが飛段の肩を叩いた。
「野蛮ねえ…。でもワイルドな男は好きよ?」
「ん、そっちか」
「っ!」
突然現れたフウカに驚く事を全くせずすぐさま鎌が彼女に向かって振り下される。
その事に目を見開いたフウカは微かに切られた髪と手首を見ると大きく目を見開いた。
飛段は鎌に付着した血を見てニヤリと笑うと血を舐めとり徐に胸元から槍を取り出す。
「っしゃあ!さっさとテメェも…」
「よくも…よくも私の髪をぉおお!!」
「お?」
突然激昂したフウカに槍を片手に思わず固まった飛段。
ぐるんっと向けられた彼女の顔は茶色く変色し干乾びた様な容姿になっていた。
その姿に「ははっ、なんだそりゃ。気持ち悪ィなァ」と呑気に笑う飛段にフウカが物凄い勢いで印を結んだ。
「土遁・泥胞子…!」
「おー。お前土遁も使えんのか」
「ムカツクねあんた…その呑気な面、崩してやる!!」
泥水が飛段に押し寄せ、それを避けた飛段は己の腹を槍で突き刺した。
その行動にフウカが怪訝に眉を寄せ、ぼとぼとと落ちた飛段の血液に目を向ける。
そうこうしているとフドウを倒した角都が岩肌を抜けて現れ、徐にフウカを殴り飛ばした。
角都の一撃で頭から血を流して倒れるフウカに「あ゙ー!」と飛段が目をひん剥く。
「テメェ角都!折角今から俺がジャシン様に捧げようとしてた生贄をォ!」
「…間黒凪が居ないな。さっさと合流するぞ」
「それは分かってっけどよ……お?」
「…よくも私の顔を…」
ゆらりと立ち上がったフウカの顔は茶色く変色し干乾びている上に角都の一撃で酷くへこんでいた。
その顔を2人に向けた途端にフウカの身体が髪を残して砂の様に崩れ、やがてすぐに傷一つないフウカの身体が現れる。
それを見た飛段は嬉しそうに笑うと先程流した自分の血液でせっせと図面を完成させていった。
「あんたが居るって事はフドウはやられたみたいね…」
「…フン。さっさとやれよ、飛段」
「言われなくともやってやらァ!」
ドスッと身体に突き刺された槍にフウカが目を見開き腹部を抑える。
あ゙ー…キモチイイ…。そう呟いて槍を抜いて心臓に向けた。
これ以上やったらずっとやっちまいそうだからな…今日は急ぎだし仕方ねェ…!
興奮した様に言って飛段が心臓に槍を一思いに突き刺す。
「っ…」
「…あ゙ー…やっぱ堪んねえぜこの痛みはよォ…」
「さっさと行くぞ飛段。時間が惜しい」
「っせェ!もうちょっと余韻に浸らせろよ!」
よくも私の身体を…一度ならず、二度までも。
微かな声に2人が振り返る。
ゆっくりと立ち上がったフウカが先程同様に身体を砂の様に崩し一瞬で回復した。
その様子に角都が目を細め、徐にフウカに向かって歩いて行く。
「…貴様のその髪…」
「っ、火遁・鳳仙花の術!」
「!」
放たれた火に飛び退き、懲りずに槍を己に向ける飛段に「待て飛段」と指示を飛ばす。
あ?と止まった飛段に目を向けた角都はその背中に背負われている鎌を掴むとフウカに投げ飛ばした。
そして一瞬で土遁の印を結ぶと術でフウカの足を固定し、フウカは向かってくる鎌に顔を背ける。
しかし動いた拍子に揺れた髪が少量程鎌によって斬られ、フウカが大きく目を見開いた。
「キャアアア!」
「うお、…あいつ、心臓刺されても叫びもしなかったくせに何叫んでやがんだ?」
「簡単な事だ。あの女の本体が…」
一気に足を踏み込んでフウカの目の前に行き、彼女の髪を掴んで力任せに千切る。
また響いたフウカの叫び声にクナイでまた髪を切り裂いた。
すると片手に掴んでいたフウカの髪が独りでに動いて角都の手に絡みつき、眉を寄せて角都が髪を放り投げる。
それを見たフウカの身体がまた茶色く変色した。
「この野郎…!!」
「本体がこの髪なら、心臓には期待しない方が良さそうだな」
フウカの身体が徐々に砂の様に崩れてその場には髪だけが浮かび上がる。
髪の中には2つの目の様なものがあり角都を睨み付けていた。
その姿を見て鼻で笑った角都が徐に走り出し、硬化した片手を振り上げる。
させるかァァア!と角都に向かって行く髪を見た飛段が徐に地面に突き刺さっている己の鎌を掴んだ。
「角都、退けェ!」
飛段の声に瞬時に反応してしゃがみ込んだ角都。
その上を横一文字に鎌が通り、フウカの正体である髪の毛の化け物を真っ二つに切り裂いた。
途端に劈く様な悲鳴が響き渡り、その場に髪が力尽きた様に落下する。
ピクリとも動かなくなった髪を2人で見下し、徐に周りを見渡した。
「さーて、黒凪の野郎を探さねえとなァ」
「間黒凪はどの方向に行った」
「あー…。……あっち?」
「…本当だろうな」
多分あっちだったって、間違いねえ!
あっけらかんと信憑性に掛ける様な情報を提供した飛段をちらりと見て其方に向けて印を結ぶ。
手がかりが飛段の証言しかない今、少しでも効率を上げようと角都は素直に示された方向に手を伸ばした。
一方の黒凪は岩肌しか見えない周囲を見渡し、探査用の結界を大きく広げた。
数秒程目を閉じていた黒凪は「あぁ、成程ね」と目を開き小さく笑う。
恐らくこの場所は空間忍術の一種によって作られたもの…。
黒凪の位置から遠く離れた場所で地図の様な巻物を開いているフエンが立ち往生をしている様子の黒凪に笑みを浮かべた。
「(此処は私が設計して作った空間を他の空間から呼び寄せたもの…)」
『(空間忍術なら手っ取り早い)』
「(貴方はもう逃げられないわ)」
『…さーて、どっちが上手かな。』
人差し指と中指を立て、ぐっと力を籠める。
途端にフエンの持っていた巻物が青く錆びた様に変色し、パキッと乾燥してヒビが入った。
その様子に目を見開いたフエンはどんどん崩れていく周囲の地形に目を見張る。
「(まさか、私の空間を逆に支配して…!?)」
『なんだ、随分と脆かったね。』
「っ!」
背後に一瞬で現れた黒凪に目を見開き飛び退いだ。
しかしまた一瞬で背後に現れた黒凪に尻餅を着き、フエンが眉を寄せる。
悪いけど、この空間は完全に乗っ取らせて貰ったから。
そう言った黒凪が目を細めると逸れていた角都、飛段、ソラが黒凪の背後に現れた。
「なっ…」
『私は結界師って言うんだけどね、空間を支配する術者なんだよ。』
「っ、」
『相手が悪かったね』
フエンの両手両足を結界で固定し角都に目を向ける。
黒凪の目を見た角都は徐にフエンに近付くとその心臓に触手を伸ばした。
それを見たソラは「ゔ、」と顔色を悪くして何をしているんだと角都を見る。
ゆっくりと引き出される心臓にフエンがびくっと痙攣した。
「っ…!」
『気持ち悪いなら目を逸らしてな。』
「な、にやってんだよ…!」
『…まあ、色々?』
言葉を濁した黒凪に怪訝な目を向けてそのまま角都から目を逸らす。
そんなソラを見た黒凪は「君は私達と別れた後に誰かに会った?」と問い掛けた。
再び黒凪に目を向けたソラは角都を見ない様にしながら口を開く。
「白髪の…顔に傷がある男に会った」
『倒せた?』
「……いや」
「なっさけねェなァオイ!」
ゲハハハハ、と笑った飛段に「うるせえ!」とソラが噛みついた。
しかし飛段越しに見えた角都の様子に顔色を悪くしてすぐさま顔を逸らす。
心臓を完全に取り込んだ角都はゆっくりと立ち上がり黒凪の元へ戻ってきた。
黒凪は周りを見渡し、一気に探査用の結界を広げる。