世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  守護忍十二士


『――それじゃあその男も殺しに行こうか』

「!…居場所、分かったのか」

『ちょっと遠いけど追いつけない距離じゃない。…七郎くーん!』



 空に向かって叫んだ黒凪にソラがビクッと肩を跳ねさせる。
 角都と飛段も「七郎?」と顔を見合わせ黒凪と共に空を見上げた。
 すると1つの竜巻が現れ、黒凪の目の前に降りてくる。



「…どーも。相変わらず雑な呼び方ですね。」

『来てくれてありがと。ちょっと距離があるからぱぱっと連れてって欲しいんだけど』

「構いませんよ。運賃払ってくれるなら。」

『払う払う。』

「…嘘ですよ。どっちですか。」



 流れる様にそんな会話を交わし、黒凪が指をさした方向を見てくいと片手を上げる。
 その動作と共に黒凪達が風に包まれて空に浮かび上がり、ぐんっと進んで行く。
 下を見下してフリドを探していた黒凪は見えた人影を結界で囲んだ。
 しかしそれをすぐさまフリドは突破し、黒凪が目を細める。



『…見つけた。』

「それじゃあ降ろしますね」



 七郎と共にフリドの前に降り立ち、フリドが足を止める。
 睨み合った途端に飛び出したのはソラだった。
 短絡的な彼の事だ、先程飛段に笑われた事でも気にして自分が始末をつける気なのだろう。
 フリドと戦うソラを飛段と角都は手を貸すでもなく見ているだけ。
 そんな2人の隣で黒凪はじっとフリドを見ている。



『(…確かあの顔は守護忍十二士の1人だったカズマ…?)』



 成程、少しずつ話が読めて来た。
 守護忍十二士のカズマ、基フリドは元々火の国にクーデターを起こした反逆者。
 その際に同じく守護忍十二士であったアスマに殺されたと思われていた人物だ。



『(って事は火の国への復讐が今回の目的かな…?集めた死体はその時に使う予定で、)』

「(くそ、間一族の人間が3人か…)」

「っらあ!」

「ぐ、(ソラ1人ならどうにかなるが、この場を潜り抜ける事は不可能だな)」



 となれば一か八か。
 目の前で鉤爪を振り上げたソラの攻撃を避け、片手の指先にチャクラを集中させる。
 そうしてその手をソラの腹部に突き刺すと一気にチャクラを流し込んだ。
 目を見開いたソラはその場に膝を着き、腹を抱える様にして蹲る。



『…あ。しまった。』

「ちんたらしやがってよォ!」

「!」

「オイ黒凪!この白髪野郎は俺が殺すぜェ!」



 いや、時間が掛かるから角都に頼むわ。
 そう言った黒凪に「あァ!?」と目を向けた飛段は己の目の前を通り抜けた角都に「オイ!」と声を掛ける。
 しかし何も返さず飛段に目も向けない角都はフリドに向かって拳を振り上げた。
 フリドは武器を構えてその拳を受け止め、勢いのままに地面に叩きつけられる。



「ぐ、…うあ…っ」

『あららら…。見事に九尾の封印を解かれちゃったねえ』

「触るな!…ぐ、」

『…ま、元々その封印は解くつもりでいたし良いか』



 あぁ!?と黒凪の言葉に苦しげに眉を寄せながらソラが聞き返した。
 彼の身体は既に九尾のチャクラに覆われ、瞳も赤く染まりチャクラの尾が1本浮かび上がる。



「あーあ、面倒な事になりましたね。…墨村さん達に伝えて来ましょうか?」

『うん。…あ、そうだ。正守に四師方陣の準備をする様に言っておいて。』

「ししほうじん、ですか」

『気になるなら上から見てな。結構面白い術だからさ。』



 小さく笑って「分かりました」と頷いた七郎が浮かび上がり里へ向かった。
 それを見送りソラに近付いてそのチャクラに触れる。
 瞬く間に焼け爛れた黒凪の手に「触るな!」と今一度叫んで苦しげに眉を寄せた。



「んでだよ…、俺は、こんな力なん、て、」

『傍迷惑な話だよねえ。こんな馬鹿みたいに大きな力、要らないのにねえ』

「っ…?」

『すぐあんたの中から消したげるから。もう少しだけ待ってな』



 そう言って立ち上がった黒凪が振り返るとフリドは既に角都によって心臓を奪われた後だった。
 心臓を奪い取り立ち上がった角都と飛段の目も黒凪に向いた時、角都が黒凪に腕を伸ばし彼女を引っぱる。
 ぐんっと角都に腕を引かれ彼の胸板に額をぶつけると痛みに少し眉を寄せ、ソラに目を向けた。
 どうやらソラが力に耐えかねて暴走し始めたらしく、その巻添えになる寸前だったらしい。



『ありがと角都。助かった』

「フン」

「ぐあぁあああ!!」

「オイオイどうすんだよアレ。何か里の方に向かってねェか?」



 本当だ、とソラに目を向けた黒凪が徐に角都に目を向ける。
 角都もその視線に気付いたのか、黒凪に目を向けた。
 あんたに頼みがあるんだけどさ。そう掛けられた彼女の言葉に角都が眉を寄せる。



『里に向かおうとしてるソラをあんたが止めてよ』

「……」

『久々に国ってもんを護ってみる気、無い?』



 小さく笑みを浮かべて言った黒凪に「命令は聞く」と一歩足を踏み出して土遁の印を結んだ。
 そして地面にしゃがみ両手を着くと盛り上がった岩がソラの行く手を阻む。
 しかしお構いなしに破壊して行くソラに次は風遁の印を結んで突風をぶつけた。



「(…くだらん)」



 くだらない事だ。何かを護るなど。
 俺は今、報酬の為に間黒凪の命令に従って里を護っているだけ。
 …里の為や国の為ではない。
 ソラの行く手を阻みながら只々そんな事を考えて、そして思い返す。



「(何故俺はあの頃…馬鹿正直に里の為に忠義を尽くしていたのか)」



 その愚かさに、己が裏切られて初めて気付いたのか。
 …今となっては全く理解出来ない事だ。
 ――いやあ、遅くなって悪いね。
 そんな焦った様子など微塵も無い様な声が響く。
 顔を上げれば上空には結界を足場に立つ正守、守美子、時子、繁守が立っていた。



「ありがとう、僕等が到着するまでよく此処に留めてくれたね」

「貴方の働きには感謝します。後は我々にお任せを。」

「それじゃあ父さん、よろしくね」

「分かっとるわい!」



 全く、墨村だらけで野蛮な…。
 そう言いながら配置に着く時子に「儂等に押されるなよ時子!」と繁守が声を掛ける。
 守美子は正守の肩を軽く叩き「よろしく」と声を掛けた。
 正守もそんな母に「うん、よろしく」と声を掛けると配置につき、構える。
 そうして4方向平等に立った4人が力を互いに繋げて行った。



『よっと』



 ドンッと思い切りソラを結界で弾き飛ばし、正守達が囲む中央に放り込む。
 そうして黒凪も其方に近付くと飛段と角都を結界で少し外側に誘導した。
 途端に黒凪とソラを4人が作り上げた四師方陣の結界が囲む。
 それによって完全に外と隔絶された結界の中は無音になり、外にはソラのチャクラが微塵も漏れる事が無くなった。



「(おお、これは凄い。)」

「あぁ?んだよ、馬鹿でけえ箱が出来やがったなァ」

「…成程な。4人で作る完全な空間支配か…」

「(力のパワーバランスはほぼ完璧…。流石は墨村と雪村のベテラン4人って所か)」



 上空で見ている七郎、側で眺めている飛段と角都。
 各々が見守る中で出来上がった結界の中に居る黒凪はゆっくりとソラに近付き笑顔を見せた。
 ソラの虚ろな目が黒凪に向けられる。



『さあて、場所は整った。存分にやろうか』



 グオォオオ、と九尾の雄叫びが結界の中に響き渡った。
 やがて黒凪に飛び掛かったソラに構え、暴れ回るソラを黒凪が器用に結界で往なしていく。
 時折放たれるチャクラの咆哮を黒凪が結界で受け止め、取りこぼしたものは正守達が抑え込んだ。
 そうこうしていると痺れを切らした様にソラが再び雄叫びを上げ、その身体からチャクラが溢れ出す。



『(よし、出て来た。)…皆さん、2段階目お願いします』



 黒凪の言葉に頷いて正守達が結界を縦に大きく広げていく。
 上空に溢れ出した九尾のチャクラが狐の様な形を取り、蠢いた。
 その姿を「おー…」と見つめる飛段。
 しかし次第に形が保てない様に揺れ動くチャクラに角都が目を細めた。
 そんな2人の側に七郎が降りてくる。



「チャクラって不思議ですよね。宿主の器が小さいと判断して出てみれば、結局形が保てなくて器が必要になる。…でも今更自分の意志では戻れない。」

「あ?…角都、何言ってんだコイツ?」

「…九尾のチャクラが収まるにはあのガキの器は小さすぎる。だから一思いに外に出たが、結局は器がなければその形を保つ事は出来ん」

「…あー…成程なァ…」



 絶対分かってないなぁ、この人…。
 そんな目で七郎が飛段を眺めているとチャクラが完全に姿を消し、倒れかけたソラを黒凪が受け止める。
 ぐったりとしたソラの身体は九尾化の所為で真っ赤になっていた。



「さて、蜈蚣。皆を本家まで連れて行ってくれ。」

「はい」

『う、結構ソラ重たい…』

「そりゃあ身体の小さな貴方じゃ重たいわよ」



 ソラに潰されかけている黒凪に気付いた守美子が手を貸してやり、一緒にムカデに乗り込んだ。
 そうして間一族の本家へ辿り着くとすぐさま菊水や白菊が玄関へ出て来る。
 そんな2人と共に顔を見せたデイダラとサソリはムカデから降りた飛段と角都に目を向けた。



「よう。初めての任務はどうだった、うん」

「あ? まあ楽なモンだったなァ」

「…心臓は集まったのか」

「あぁ。3つ集まった」



 そんな会話をする暁の面々に小さく笑い、黒凪が欠伸を漏らしながら自室に戻って行く。
 それを見た角都と飛段も解散して良いと判断したのか割り当てられた自室へ向かって歩き出した。


 
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