世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  守護忍十二士


「ねーねー、遊んでよー」

「なんで俺が…」

「だって忍の人は珍しーのー」

「印とか結ぶんでしょー」



 みーせーてー。と子供達に囲まれてソラが困った様に眉を下げる。
 そんなソラの名を呼んで助け船を出したのは黒凪。
 ソラは慣れない子供達の中から早く抜け出したかったのだろう、小走りで黒凪の元へ駆け寄った。



『…傷は大分良くなったね。確か許可が出れば外に出るんだっけ?』

「あぁ。…実はもう許可は出てるんだ」

『?…ならなんで行かないのさ。』

「一言礼を言っておかねえと罰が当たりそうな気がしたんだよ」



 あはは、罰なんて当たらないって。
 笑って言った黒凪に「うるせえ!」と顔を少し赤くしてソラが言った。
 すると「おーい飯まだか飯ィー」と気だるげに歩いてくる飛段が顔を見せる。
 そんな飛段に立ち上がったソラは彼を見上げて「おい!」と声を掛けた。



「あ?…何だお前、やっと歩ける様になったのか」

「あ、ああ。…飛段、だったよな」

「おー」

「この間は悪かった。…その、暴走しちまって。…あと…、…ありがとな」



 お?…おー。
 適当に返答を返す飛段にソラの額に軽く青筋が浮かぶ。
 しかし飛段はそんなソラに微塵も気付く様子は無く気だるげに台所の方へ歩いて行った。
 折角俺が謝ってやったのに…!と目付きを鋭くさせるソラに「もう1人もあんな調子だろうけど行くの?」と声を掛けた黒凪。
 ばっと振り返ったソラは「当たり前だろ!」と意気込むと「アイツの部屋何処だよ!」とイライラした様子で黒凪に言った。



『え、此処だけど。』

「って隣かよ!」



 2人が立っている場所のすぐ隣にある部屋に向かってそう言うと「煩いぞ」と角都の声がした。
 …今更だけどソラが火の寺を襲った2人の顔を知らなくて良かった。
 角都の声に一旦息を吐いてからソラが襖を開く。
 中で座っている角都は任務の報酬を数えている最中だった。



「よ、よう角都。」

「……」

「この間は悪かったな。あと里を襲おうとした俺を止めてくれて…ってさっきから何してんだよ!」

「金を数えている。今は話しかけるな」



 怒りにぷるぷると震えるソラに気を遣って結界で角都の部屋の襖をぴしゃんと閉める。
 そんな襖を数秒間睨み付けていたソラは「あーあ!」と声を出すと黒凪の隣に無造作に座った。
 ソラにちらりと目を向けた黒凪は徐に彼の頭に片手を乗せる。



『ちゃんとお礼を言えるなんて偉いですね〜』

「てめっ、バカにしてんだろ!」

『馬鹿になんてしてないって。寧ろ褒めてんでしょ。おーよしよし』

「その言い方が馬鹿にしてんだよ!」



 べしっと黒凪の手を振り払いふんっとソラが目を逸らす。
 それを見た黒凪は「もう気は済んだでしょ。早く自分のやりたい事をしに行きな」と空を見上げて言った。
 その言葉に振り返ったソラは黒凪を見ると「まだ気は済んでねえよ」とボソッと言って黒凪に向き直る。



「…お前への礼がまだだ」

『…え、良いよ別に。』

「るせえ!俺が言いたいんだ!」



 ムキになって言ったソラに「…そう、じゃあどうぞ」と黒凪が言った。
 その言い方にまた一瞬青筋が浮かんだが、すぐに引っ込めてソラが黒凪の目を見て口を開く。



「暴れて悪かった。…俺を止めてくれて、ありがとう」

『うん』

「…。あの力を、俺の中から出してくれてありがとな」

『…うん』



 やっと俺は理不尽に嫌われるでもなく、…やっと好きな事をして生きていける。
 ありがとう。そう言って深く頭を下げたソラに黒凪が小さく笑った。
 ソラの側には荷物をまとめた袋が置かれている。…このまま此処を発つつもりなのだろう。



『…よし、これであんたの気は済んだわけだ。』

「んだよ。そんなに俺を追い出したいのかよ。」

『そう言う訳じゃないけどさ。あんまりこんな場所に居ても良い事なんて無いし』



 此処は外の世界にも居場所が無い人間が集まってる場所なんだよ。
 …君みたいにまだ居場所がある人間が居る様な場所じゃない。
 黒凪の言葉にソラが微かに目を見開いた。



『…沢山友達とか仲間とか作っておいで。もし行き場がなくて死にそうになったら1日ぐらいなら面倒見てあげるよ』

「……おう」

『でも此処は君の居場所じゃない。…君の居場所は外の何処かにある』



 もう戻って来るんじゃないよ。戻って来ても良いけどね。
 眉を下げて言った黒凪にソラはしっかりと頷き立ち上がった。
 それじゃあ行って来る、とこの場で言う辺り、玄関まで誰も見送りに来ない事を悟っているのだろう。



『うん、それじゃあね』

「…お前がなんて言おうと、俺はまた此処に帰って来る」

『……えー…』

「えーとか言うんじゃねえ!…じゃあな!また帰って来るからな!」



 あとな!此処は"こんな場所"なんて言われる様な場所じゃねえぞ!
 ソラの言葉にちらりと黒凪が目を向けた。
 此処の奴は俺を救ってくれたし、俺の傷だって癒してくれたんだ。
 此処は良いトコだよ。俺の恩人が沢山住んでる場所だ。
 笑顔で言ったソラに小さく笑って再び目を逸らす。



『早く行きな。』

「分かってる!…じゃあな!」

『何回じゃあなって言うんだよ。』

「るせえ!」



 今度こそドタドタと足音を立ててソラが玄関へ向かった。
 誰もソラを見送る事をしない。…何故なら此処は彼の帰る場所じゃないから。
 …帰りたいと思ってはいけない場所だから。



『(此処は居場所のない人間の最後の砦。)』

「出て行ったみたいだね」

『…もう帰って来るなって言っといた。』

「うん、その方が良いよ」



 此処にまた帰って来いなんて、ある意味酷い言葉だしね。
 笑って言った正守に「そーだねえ」と黒凪が寝転がった。
 …でも帰って来たいんだってさ。続けて言った黒凪に正守が眉を下げる。



「その時は迎えてあげれば良いんじゃない?」

『…そりゃあ出迎えてはあげるけどさあ。』



 出来れば帰ってこないで欲しいよね。
 天井を見上げて言った黒凪に「俺もそう思うよ」と正守が言った。



 居場所。

 ("また会おう"は要らない)
 (願わくば)
 (もう会う事などありませんように)


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