世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  星隠れの里


「黒凪、シカマルが来てる」

『…あ、アスマさんのお見舞いね。』

「中に入れるか?」

『大丈夫。丁度今日アスマさんの退院の日だから。』



 アスマさんを入り口に連れて行くから限はシカマルの相手してて。
 そう言って奥に向かった黒凪を見送り、限は再び入り口に向かった。
 "間"と書かれた札がぶら下がった扉の横で待っていたシカマルは再び開かれた扉に振り返る。



「丁度今日に退院らしい。黒凪が連れて来る」

「あ?…あぁ…」

「……」



 それきり黙った限がシカマルの隣に移動して彼と同様に壁に凭れ掛かる。
 そんな限をチラリと見てシカマルも空を見上げた。
 シカマル自身もあまり話すのが好きな方ではないし、アカデミーでも比較的静かな限とは付き合いやすかった。
 それに黒凪が側に居ればサスケ程近寄りがたい事も無かった。



「…なぁ」

「?」

「お前と黒凪、最近一緒に居る所見ねえけど喧嘩でもしたか?」

「…俺と黒凪は喧嘩しない」



 そ、そうか。
 そう返してからまた沈黙が降り立った。
 空をゆっくりと雲が動いて行く。
 …喧嘩しないって言い切れるもんか…。
 そう思いながら空を見上げていると再び扉が開かれた。



『あ、居た居た。』

「…よう。よく今日が退院だって分かったな。」

「いや、偶然見舞いに来たら退院だって聞いてこっちが驚いたんすよ。」

「ははは、そうか。」



 んじゃあアスマさんは紅さんの元に帰ってあげてくださいねー。
 そう言って扉を閉めて限と共に中に入ろうとした黒凪に「あ、おい」とアスマの声が掛けられる。
 閉まる寸前で扉が止まり、黒凪が顔を覗かせた。



「助けてくれてありがとな。」

『いーえ。間一族も捨てたもんじゃないって思いました?』

「元々俺は邪見に思ってたわけじゃないがな。でも見直した部分はある。」

『私達もそこまで非道じゃないんですよ。…それじゃ、お元気で。』



 おいおい、もう会えなくなるみたいな言い方すんなよ。
 眉を下げて言ったアスマを見上げ、黒凪も眉を下げた。
 会えませんよ、当分は。きっと。
 彼女の言葉にシカマルは「確かにな、」と思わず納得してしまう。
 ここ数日連続で顔を合わせる事自体珍しい事なのだ。
 ましてや間一族の領地に近付く事すらも里の人間としては珍しい。



「…行くか。」



 歩き出したアスマについて行き、完全に閉じられた門を振り返る。
 アカデミーの頃は毎日顔を合わせて、めんどくせー授業を受けて、演習を受けて。
 大人になってもずっとあの3人とは一緒に任務を行っていくのだろうと思っていた。
 …でも今となっては全く違う居場所に居て。



「(任務がかぶって珍しい事もあるかと思えば、暁並に意味の分からねー能力を持ってて。)」



 本当、いつからこんなに差が付いたんだか。
 どんなに考えてもそれは解りそうにない――。






























「――あ、黒凪。」

『ん?』

「1つ任務頼んでも良い?サソリとデイダラも連れて3人で。」



 手渡された資料を見て黒凪が露骨に眉を寄せる。
 また面倒なのを渡されたね。
 不機嫌に言った黒凪に正守も満更でもない様子で苦笑いを返した。



『星隠れの護衛任務か…。って間一族にやらせろって態々書いてあるし』

「プライドの高い里だしね。しかも例の"あれ"もあるし。」

『んー…』



 眉を寄せて唸っている黒凪を偶然通りかかったデイダラが見つけ、彼は不思議気に片眉を上げた。
 そんなデイダラを見つけた正守は「やあ」と笑顔で片手をあげ、黒凪が振り返る。
 そして此方を見ているデイダラをじっと見ると「仕方ないか…」と呟いてぐるっと身体を向けた。



『今から任務に行くよ。サソリも連れて行くから声掛けて。』

「今からか?うん」

『今から。…プライド高いからさっさと行かないと怒るし』

「?お、おう」



 黒凪に背を向けて自室に戻っていくデイダラを見送り、深いため息を吐いた。
 星隠れの里はとても小さな忍び里で、その規模と共に忍の数もかなり少ない。
 そんな小さな里が狙われる理由は今から400年前に里に落ちたと言われている神秘の力を蓄えた星の存在があるからだ。



「――神秘の力ぁ?」

『なんでもチャクラに影響を与えるとかなんとか。…私には関係ないけど。』

「フン。くだらねぇ…」



 起爆粘土で作られた鳥に乗っているデイダラ、黒凪、サソリで任務内容の資料を覗き込んだ。
 サソリの身体は例に倣って既に傀儡のものに戻っている。
 そしてそんなサソリはこれまた例に倣ってヒルコの中に隠れていた。



『…ヒルコって足遅いよね』

「うるせぇ。デイダラの鳥に乗ってりゃ変わらねぇよ」

『まあ私も足遅いから良いんだけどさ。』

「うわー…オイラ以外のろまだな、うん…」



 随分と空を進み、やがて星隠れのある熊の国の国境を通過して行く。
 下を覗き込めば国境にある谷に黄色い毒ガスが目に見える程に充満していた。
 黒凪と共に下を覗き込んだサソリは鼻で笑って口を開く。



「自然が作り出した毒物なんざ生温い…俺が作ったガスなら近付いただけで殺せる…」

『その程度の毒ガスだったから谷の向こう側に里が作れたんだろうね。…ん?』

「…迎えじゃねぇか?うん」



 丁度熊の国に入った途端に見えた小さな人影にデイダラと黒凪で目を凝らす。
 するとその人影が此方に向かってボウガンの様なもので縄の付いた矢を放ち、それをデイダラが掴み取った。
 その縄に足を掛けて人影が昇ってくる。
 うお、と重みに目を見開いたデイダラはどうにか持ち堪え、鳥に飛び乗った少年に目を向けた。



「間一族の者達だな。」

『ええ。君は星隠れから来た迎えの人?』

「ああ。スマルと言う者だ」



 よろしく頼む。そう言って律儀に頭を下げたスマルは黒凪を見て微かに目を見開いた。
 自分と同じぐらいの少女が乗っている事に驚いたのだろう、固まっているスマルに黒凪がにっこりと笑う。
 気の強そうなスマルを見たサソリは対照的に不機嫌に舌を打った。



『木ノ葉から来た間黒凪です。こっちのおじさんはサソリ、この子はデイダラ。』

「…よろしく頼む」

「……」

「……」

『あはは、よろしく。』



 返事を返さないデイダラとサソリに代わって黒凪が再び返答を返した。
 そんな彼等にスマルは微妙な顔を黒凪に向けつつ3人を里の中心部分へ案内して行く。
 今から案内するのはアカホシと言う男の居る場所だとスマルが言った。
 丁度里の中心にある建物の中に招き入れ、座っているアカホシの正面に3人を座らせてスマルは脇に寄った。



「よく来てくれた。三代目星影は1年前に急死し、今は私が代理を務めている。アカホシだ。」

「…影を名乗れるのは五大国だけじゃなかったか?うん」

「そんなの関係ない!今は小さくとも、いずれ五大国と並ぶ程の大きな里になる!」

「(チッ、プライドの高い小国が…)」



 そして俺は本当の星影になるんだ!
 スマルの言葉に「あー、はいはい。」とデイダラがげんなりした様子で言った。
 するとアカホシが「黙れスマル。お前は修行場へ戻れ」と厳しく声を掛け、スマルは黙って出て行ってしまう。
 それを見送り黒凪が再びアカホシに目を向けた。



『失礼しました。貴方方が影を名乗ろうが我々には関係の無い事でしたね』

「いや、此方こそ。…確かにこの里はまだまだ小さい…。だが此処には五大国も羨む星がある」

「御託は良い…。要はその星を護れば良いんだろうが…」

『こら。口が悪い。』



 肘で軽くつついて黙らせアカホシに「続けて下さい」と声を掛ける。
 小さく頷いたアカホシは「星が狙われていると言う情報を星隠れの探索隊が手に入れたのだ」と話を再開した。
 敵の目星は付いていない。今は若い忍達が星の側で修行を続けているが、いつ敵が奪いに来るか…。



『…今星の周りには若い忍だけなんですか?』

「あぁ」

「馬鹿か。大事なモンは実力の高い忍が護るのが鉄則だろうが…」

『だから口が悪いって…』



 アカホシ様!
 バンッと扉が勢いよく開かれ全員が振り返る。
 数十分前に出て行ったスマルが血相を変えて戻ってきたのだ。
 どうした、とアカホシが問い掛けると「星が、盗まれました」…と。
 その報告を聞いたサソリは「だから言ったんだ」と眉を寄せる。



「敵は何処に向かった!」

「分かりません…、孔雀妙法を使って空を飛び、かなり遠くまで逃げて行きました」

「!…孔雀妙法を…!?」



 孔雀妙法とは星隠れが護る星を使った修行を極めなければ出来ない術の事。
 つまり孔雀妙法を扱える忍は星隠れの忍と言う事になり、今回星を盗んだ忍も星隠れの忍と言う事になる。
 スマルがアカホシに向かって頭を下げた。



「俺に命令を!星を盗まれたのは俺の失態です…俺が取り戻します!」

『いえ、我々が。護衛を任されているのにみすみす奪われたのは結果的に我々の責任となりますから』

「…うむ。星の捜索は間一族の者に任せる。スマル、お前は倒れた仲間達を診ていろ」

「しかし里の事は里の忍が…!」



 スマル。アカホシの咎める様な声が響きスマルが押し黙る。
 そうして話は終わり、スマルを含めた4人で外に出た。
 ムスッとした顔で歩いて行ったスマルを見送り、3人で顔を見合わせる。



「あのアカホシって野郎…何か知ってやがるな…」

「あぁ。くじゃくなんとかって術の話になった途端に顔色を変えてやがったしな、うん」

『この里の忍しか使えない術を使ってたらしいし、十中八九この里の忍が関わってるだろうね。』



 とりあえずサソリはアカホシの監視、デイダラは里を見回って情報収集。
 私はこの若さを使ってスマルの方から探るわ。
 薄く笑って言った黒凪を呆れた様に見て「好きにしろ」と返して2人が姿を消す。
 その背中を見送った黒凪は「何よ反応悪いな…」とスマルの元へ向かった。



 
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