世界を君は救えるか×NARUTO
□世界を君は救えるか
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星隠れの里編
≪――スマルを見つけた。そっちは?≫
「アカホシと戦ってた奴は捕まえたぜ…うん」
≪そう。多分その人が色々知ってると思うから話聞いてて。私達もそっちに向かう≫
「分かった。」
無線を切って徐にデイダラがその場に座り込み両手を上げた。
攻撃する意思はない、そう示すデイダラに女は少し驚いた様に目を見張る。
クナイを降ろした女にデイダラが説明しようと一度口を開きかけるが、上手い言葉が見つからなかったのか何も言わずに隣に目を向けた。
その視線を受けたサソリはため息を吐いて口を開く。
「俺達は木ノ葉の間一族ってモンだ。星隠れにはテメェが盗んだ星を護る任務で来てる…。任務を忠実に熟すってんなら此処でテメェを殺してるところだが…」
「っ…!」
「…生憎うちのリーダーはテメェの言い分も聞いてから判断するつもりらしい…」
低い声で淡々と話すサソリに怪訝な顔のままの女。
気だるげに息を吐いて「スマルってガキは保護した」と伝えれば彼女は完全にと言う訳ではないが警戒を解いた様だった。
正当な理由があるなら話せ…そうでないとテメェの味方はしてやれねぇぞ…。
そんなサソリの言葉に目を伏せ、少しの沈黙の後に女がゆっくりと口を開いた。
それに合わせてデイダラが無線の電源を入れ、黒凪も間接的にその話を聞く。
スマルは上手く力の入らない身体に眉を寄せながら黒凪に目を向けた。
≪まず、私の名はナツヒ。…スマルの母です。≫
『!(成程、だからスマルを…)』
≪私が星を盗んだ理由は星の修行による犠牲者を出さない為≫
私は過去にも星を夫と共に盗んだ事があります。
数年前の星隠れでは現在と同じように星を使っての修行が行われていました。
しかし星による修行は忍の寿命を縮め、身体を蝕み…やがて死亡者や忍として戦えない程に衰弱した者が多発したのです。
私と夫はその犠牲者をこれ以上出さない様にとかつての星影、三代目星影様の目を盗み星を里から持ち出しました。
≪しかしすぐに追い忍部隊に追いつかれ、やがて星影様が私達の前に現れたのです≫
「…っ、俺にも聞かせろ、」
『しっ。聞こえない。』
「っ…」
三代目星影様は、星がなくなれば小国である星隠れはすぐに滅ぼされてしまう事を真摯に私達に話して下さりました。
…そして、星の修行を止めさせる事も約束してくださったのです。
私達はそんな星影様を信じる事にして、星を里に返しました。
≪しかしいつまた修行を始める人間が出るか分からない。だから三代目は私達を里から抜けさせ、里の外から星を見守る事を命じたのです≫
また修行が再開された時に止められる様にと。
…そして案の定数年後の現在、アカホシの手によって再開された修行を目の当たりにして星を奪ったのです。
話を区切ったナツヒに黒凪は「それじゃあ一応確認。その人はスマルを攫ってないのね?」と確認する様にデイダラに問いかける。
デイダラが全く同じ問いをナツヒに向ければ彼女はしっかりと頷いた。
「私が此処に戻ってきた理由はアカホシによって呼び戻された為です。…スマルを人質にされて。」
≪あー…やっぱりねえ。アカホシがスマルを攫わないと星の人間に邪魔される理由が無いし≫
「アカホシは私がスマルの母だと知っていましたから。…だからスマルを…」
そこまで話した所でナツヒが目を見開いて地上に目を向ける。
アカホシとその部下2人が星を封印した場所へ向かっている為だ。
一方のスマルは先程の黒凪の言葉で自分を攫った人物がアカホシである事を知り、驚きのあまりに固まり、徐に口を開く。
「…アカホシ様が、俺を…?」
『みたいだね。』
「……1つ、頼みがある」
『うん?』
俺を里の皆の元へ連れて行ってくれないか。
そう言ったスマルに黒凪の目がちらりと向いた。
皆と共に星を奪った忍の元へ行きたいんだ。
その忍が全てを知っているんだろう?
『……』
「どうせお前等の事だ、既にその忍の居場所は分かってるんだろ。」
『…分かった、良いよ。あんたの言う通りにしてあげる』
スマルにそう言って再び無線に意識を移してスマルの要求で里の忍達の元へ向かう事を報告する。
するとデイダラの方でも動きがあったらしく、アカホシ達がナツヒが封印した星の元へ向かっている事を報告された。
止めるか?と指示を仰がれた黒凪は悩む様に空を見上げる。
「…どうした?」
『アカホシ達が星の場所へ向かってる。…あまり私達の立場からすると手は出したくない所だけど…』
「頼む、アカホシ様達を止めてくれ」
続けて掛けられた要求に黒凪が再びスマルを見下した。
俺達がアカホシ様の所へ行くまでで良い。
それまでで良いから。
必死に言うスマルに黒凪が呆れた様に息を吐く。
「アカホシ様が俺を攫った理由や、俺達に何を隠しているのか…何も分からない…」
でも俺達はその理由を知るべきだと思う。
皆を連れて、星を奪った忍の所へ行って。
アカホシ様の所へ行って。…全ての真実を知りたい。
スマルをじっと見つめた黒凪が徐に口を開いた。
『アカホシを止めてて。スマルと他の子達を連れて追いつくから。』
「!」
黒凪の言葉にスマルが安堵した様に眉を下げた。
そして続けざまに呟かれた「ありがとう」の言葉に黒凪が笑顔を見せる。
デイダラは黒凪の指示を聞くと一気に起爆粘土で作られた鳥を操作して速度を上げ、アカホシの前に降り立った。
率先して地面に着地しナツヒがアカホシに向かって行く。
「アカホシ!」
「!」
行く手を阻まれたアカホシ達が足を止め、印を結んだナツヒに眉を寄せた。
すぐさまアカホシも印を結んで孔雀妙法を発動させ、2人のチャクラがぶつかり合う。
実力的にはやはりナツヒの方が一枚上手の様で、アカホシが徐々に後退して行きやがて吹き飛ばされた。
尻餅をついたアカホシはナツヒの隣に降り立ったデイダラとサソリに目を見張り口を開く。
「っ、貴様等は我等の要請で来たのだろう!何故其方についている!?」
「うちのリーダーの考えだ…俺は知らねえ」
「オイラも黒凪に従ってるだけだ。うん」
あの小娘か…!とアカホシが眉を寄せて部下達に目を向ける。
部下2人はその目を見て頷くとチャクラをアカホシに分け与え始めた。
途端に3人分のチャクラを纏うアカホシにナツヒが眉を寄せ再びチャクラを使って攻撃を仕掛ける。
3人掛かりでやっと両者が同格となったかに思われたが、ナツヒが星の修行の影響で衰退し始め次は彼女が押され始めた。
そんなナツヒににやりと笑ったアカホシは好機とばかりに意気揚々と口を開く。
「どうしたナツヒ…先程までの勢いがないぞ…!」
「……。」
「ククク…お前にも星の修行の副作用が出ているらしいな…」
ぐっと眉を寄せ、ナツヒが力を籠める。
すると一旦は後手に回っていた彼女のチャクラがアカホシのチャクラを上回り彼女が優位に立った。
「何、」
「この命尽きようとも…お前だけは…!」
「――アカホシ様!」
響いた声にアカホシとナツヒが思わず動きを止める。
振り返った先には星隠れの若い忍達とスマルと黒凪が立っていた。
ナツヒはスマルを見ると大きく目を見開き、思わず顔を歪める。
その隙を見たアカホシがスマルにチャクラを伸ばし、そのチャクラを見た黒凪が庇う様に咄嗟に一歩前に出た。
伸ばされたチャクラは黒凪に巻き付き、ぐんっと黒凪が引っ張られる。
『っ、と』
「今…スマルを狙ったよな…?」
「…まさか本当なのですか!?本当に皆を倒してスマルを攫ったのはアカホシ様なのですか…!?」
「全ては星を奪い返す為だ!皆武器を取れ!この女は里を陥れようとする重罪人だぞ!!」
怪訝な顔をしつつも現在の星影はアカホシ。忍達が従う様に徐に武器を取った。
ナツヒは迷いながらも武器を持つスマルに目を向け、眉を寄せる。
それを見た黒凪は絶界でアカホシのチャクラを消滅させると徐にアカホシに近付いて行った。
『アカホシ様。我々の任務は星を護る事、奪われた星を奪い返す事。…ですね』
「!…あ、あぁ…」
『なら封印を解いて私が星を奪い返しましょう』
「!」
右手を側の岩に触れ、ぐっと力を籠める。
まずは閉じられた空間の術を読み、同調して…。
開く。黒凪が目を細めたと同時に破られた封印にナツヒが目を見開いた。
そして星を念糸で掴み取りアカホシに投げ渡す。
『それが星ですよね?』
「…あぁ、確かに…」
『ならそれを持って里へお帰り下さい。』
この人には手を出さずにね。
ナツヒの前に立って言った黒凪にアカホシが微かに眉を寄せ、舌を打った。
…戻るぞ。背を向けて言ったアカホシの言葉に頷いた忍達が姿を消していく。
しかしスマルとホクトだけは去ろうとせずこの場に留まった。
「っ、何故アカホシに星を返したのです!」
『うわ、』
黒凪に掴み掛ったナツヒは止めに掛かったスマルを見ると動きを止めた。
スマルはじっとナツヒを見つめ、なんと声を掛けて良いか分からないと言った風な顔をしていた。
『…スマル、この人はあんたのお母さんだよ』
「っ!」
「……スマル…」
スマルの瞳に涙が浮かんで零れていった。
そうして抱き合うとスマルが「どうして死んだ事に、」と呟く様に問い、スマルにナツヒが少しずつ経緯を説明して行く。
それを横目に黒凪、デイダラ、サソリが顔を見合わせた。
「これからどうするつもりだ?うん」
『これで終わり…でも良いんだけどね、』
抱き合う2人を見て眉を下げた黒凪は小さく笑って2人に目を向ける。
このまま放って行っても後味悪いし、どうせなら忍達の前で修行の恐ろしさを知ってもらおう。
そんであの星を破壊する。
黒凪の言葉にナツヒが顔を上げた。
『あんな代物、壊した方が良いでしょ?』
「…貴方、最初からそのつもりで…?」
そんな風にしていかないと過ちは何度も繰り返されるからね。
ホクトが此処に残った様に、里の人達だって理解してくれる筈。
貴方がどうしてそこまでして星を奪おうとしたのか。
ナツヒが目に涙を浮かべて頭を下げた。
「ありがとうございます…!」
『頭を上げて下さいよ。…私はただ、』
身の丈に合わない力を持った人間が嫌いなだけなんです。
眉を下げて言った黒凪にデイダラとサソリの目が向いた。
――大きすぎる力は負担になるだけ。
「でも、貴方達は里の任務で此処に来たのでは…?」
『大丈夫。もみ消せるだけの力はあるので。』
「(フン。S級犯罪者を里に黙って匿うだけはあるからな…)」
じゃあ行きましょうかね。アカホシなら奪い返しに来る事ぐらいは承知の上でしょうし。
緩く言った黒凪にナツヒがしっかりと頷き、スマルも涙目のままで頷いた。