世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  風影奪還


『鋼夜、そのまま追跡お願いね。』

「確か第三班が木ノ葉から直接、そして第七班が砂の負傷した忍の治療をした後に暁のアジトに向かう手筈だったよね?」



 うん、と頷いた黒凪が火黒の背に乗ったまま地図を広げた。
 アジトの場所は川の国だって聞いてる。
 普通ならトラップがあると思うけど、まあ確実に作動するものは前に居るガイ班が突破してくれてるかな。



『トラップに引っかからない為に後を追ってるわけだし。』

【おかげで此処まで楽なモンだなァ】

「…とりあえず戦闘不能にして本家まで持って帰るんだよね?」

『うん。今のところの目撃情報は1人だけど、暁はツーマンセルで動くっていう話だしもう一人いるのが妥当だろうね。』

「じゃあ私たちも手分けして…」

『そうだね。今回は火黒と時音ちゃん、私と鋼夜で分かれて戦おうか。』



 能力の関係で時音ちゃんは爆遁使いの方。
 私と鋼夜はもう1人の方を倒す。
 彼女の言葉に4人が小さく頷いた。
 途端に鋼夜と火黒の耳に微かな破壊音が聞こえ、同時に足を止める。



【岩が砕ける音がしたなァ、今。】

【…。あの九尾の小僧の臭いがするな。】

『じゃあその音の近くに居るのはカカシ班かな。ナルトがいるんだもんね』

【あぁ。】



 んー…。と眉を寄せた黒凪が徐に呪符を2枚放り投げる。
 ボンッと鳥の形になった式神がそれぞれカカシ班とガイ班の元へ飛んで行った。
 とりあえず状況を確認してから動こうと言う黒凪の判断に従って鋼夜と火黒は式神の帰りを待つ様にその場に留まる。
 暫くして戻ってきた式神に状況を確認した黒凪はチラリと左側を見た。



『…成程ね。ガイ班はアジトを開く為のトラップに引っかかって戦闘中。標的はアジトの中。対峙してるのはカカシ班。』

【アジトはどっちだ?】

【…こっちだ】



 鋼夜が走り出し火黒もその後をついて行く。
 目的地が明確になった為に今までの速度とは比にならない程の速さで其方に向かった。
 アジトと思しき場所に着いた時、中からナルトの大声が聞こえてくる。
 顔を見合わせた鋼夜と火黒はその入り口の側に着地した。



「我愛羅!……立てよ…!!」

「しつこいな…。コイツはもう死んでる、うん。」

「…くそ…っ」



 チラリと顔を覗かせる。
 倒れた我愛羅の上に金髪の青年が座り、その隣に年を取った風貌の男が立っていた。
 確か我愛羅と戦った男は金髪だった筈。
 黒凪と目を合わせた時音が小さく頷き鋼夜から降りた。
 火黒から降りた黒凪が指示を出そうと口を開いた時「くそ!」とナルトの声が響きばっと目を向ける。



「我愛羅を返せ!!」

『おっとっと、』



 ナルトの前に結界を作り彼を強制的にストップさせた。
 ふう、と息を吐いた黒凪は「中に入ろうか」と率先してアジトに足を踏み入れる。
 目を細めた鋼夜は黒凪の影に入り込んだ。
 暁の2人は現れた3人に目を向ける。



『私達が向かったのに人柱力を奪われたとなれば大目玉を食らうからね。』

「っ、黒凪!?」

『明らかに我愛羅は死んでる。君まで死んだら本末転倒。』



 暁に目を向けたままナルト達の側まで歩いて来た黒凪達。
 サソリはじっとその様子を見ていると徐に舌を打った。
 その様子にデイダラがチラリと目を向ける。



「…木ノ葉の間一族か…」

「あ?なんだそれ。聞いた事ねーぞ、うん」

「俺もよくは知らねえ…ただ厄介だとは聞いている…」



 ゆっくりと火黒の手から刀が伸びる。
 チラリと黒凪が彼に目を向けた瞬間、火黒が姿を消した。
 そして一瞬でサソリの真後ろに移動してニヤリと笑う。
 しかし一瞬で彼の服の下から蠍の様な尾が伸び火黒の刀を受け止めた。



【さっさと殺ろうぜェ?寂しいじゃねえかよ、話してばっかだとさァ】

「…チッ」

「それじゃあ旦那、九尾はオイラが貰うぜ。うん」

「あぁ?」



 火黒から目をデイダラに向けた瞬間、デイダラが粘土を練り巨大な鳥を作り出した。
 その鳥が倒れている我愛羅を口に銜えデイダラを乗せて上空に飛び立つ。
 サソリは小さく舌を打つと火黒を尾で払い退けた。



「デイダラ…テメェ…」

「じゃあな旦那。後で落ち合おうぜ」

「チッ…」

「待てこの野郎!」



 アジトを抜けて進み始めたデイダラにナルトが付いて行く。
 それを見たカカシは振り返りサクラとチヨバアを見ると「アイツは頼みます」と一声かけてすぐさま後を追って行った。
 火黒もサソリから離れると時音を抱えてアジトを出て行く。
 それを見送った黒凪は残ったサクラとチヨバアの隣に立った。



『ねえサクラ。そのお婆さんは?』

「…チヨバア様よ。アイツ…サソリはチヨバア様の孫。」

『孫?…へえ、あいつのお婆さんなんだ。』



 それじゃあまた挨拶しとかないとねえ。
 ボソッと言った黒凪にサクラが微かに眉を寄せた時「とっくに引退したって聞いたがな…」とげんなりした様な声が響いた。
 サソリに目を向ければその目がカッと見開かれ、そのすさまじい殺気が黒凪たちを包む。
 その殺気にサクラは思わず硬直するが、すぐさまその背中を黒凪が叩いた。



『深呼吸。…大丈夫だよ、サクラは絶対死なせない』

「っ、…うん、ありがと」

「恐れるな、サクラ。…わしはあやつをよーく知っておる」



 静かに前に出たチヨバアが懐に手を差し込み一気に引き抜いた。
 チヨバアの前にクナイがチャクラ糸に操られて浮かぶ。
 徐に手を動かすとクナイが独りでにサソリに向かって行った。
 サソリは尾を動かしそのクナイを弾く。
 弾かれたクナイが彼の暁のコートを引き裂いた。



「…俺に楯突こうってんなら仕方ねェ…」

「っ…」

『……』

「3人まとめて…俺のコレクションになるか…?」



 コートの下の左腕には武器、背中には鬼の様な巨大な甲羅。
 その異様な姿に黒凪が影に目を向ける。
 影の中ですんと息を吸った鋼夜がぼそりと言った。



【あれは本体じゃないな…傀儡の臭いだ…】

「?…今の声、」

『あ、気にしないで。私の声。』

「(え、黒凪の声だった…?)」



 あれはヒルコ。
 チヨバアの声に其方に目を向ける。
 傀儡師の接近戦に対する弱点を克服したサソリの十八番じゃ。
 あの傀儡は操っている人間の武器にも、鎧にもなる。
 カタ、と首を傾げてヒルコの中でサソリが口を開いた。



「…俺のコレクションの作り方を知ってるか…?」

「!」

「まずは臓物を全て抜き取り…次に血を抜いて…」



 最後にその死体に武器を仕込む…。
 カタ、とまた傀儡独特の音がした。
 あぁそう言やあ…お前等3人で俺のコレクションが300を超える…。
 低くしわがれた声が洞窟に響いている。
 間一族がコレクションに加われば…そりゃあ良い作品が出来るな…。
 サソリの目が黒凪に向いた。



『…君に私が殺せたらの話だね、それ。』



 サソリから殺気が発せられる。
 まずはサソリをあのヒルコから引き摺り出す。そう言ったチヨバアに目を向けた。
 その為にはまず、あの背中の甲羅を叩き割る必要がある。
 サクラもチヨバアに目を向けた。



「綱手姫直伝の怪力…使ってくれるな、サクラ」

「…はい。」

「決して奴の仕込みには当たるな。…少しでも攻撃を受ければ致命傷の毒が体内に入り込む」



 全てを完璧に避けるのじゃ。
 サクラの頬を汗が伝った。
 それじゃあ私はそのサクラのサポートといきましょうかね。
 緩く笑って言った黒凪に鋼夜が舌を打つ。



【(自分でやりゃあ早いものを…)】

「安心せい。わしはあやつの癖を知っておる。…それに戦闘経験もあやつの比では無い…」

「!」

「迂闊に手を出してこない所がその証拠じゃ。…間一族の者とわしが居て、お主に攻撃が及ぶ筈がない。」



 サクラ、耳を貸せ。…そこのお主もな。
 チヨバアに呼ばれて側に寄る。
 彼女の作戦を聞きながらサソリを警戒してはいるが、チヨバアの言う通り迂闊に手は出してこなかった。
 作戦を聞き終わり頷いた頃「もう良いだろう…」とサソリの低い声が響く。



「俺は待つのも待たされるのも嫌いだ…」

「知っておる。…すぐに終わらせるつもりじゃ」

「フン…ぬかせ…」



 サクラとチヨバアが一斉に走り出す。
 黒凪は一歩背後に動き構えた。
 サソリがヒルコの口布を剥ぎカカカ、とヒルコの口が大きく開く。
 その口から無数の毒針が吐き出された。



『…あれは結界術じゃ捌き切れない。鋼夜』

【チッ】



 黒凪が鋼夜に力を与え彼の尾がサクラの前に伸びる。
 鋼夜がサポートし易い様にと薄く絶界を纏ってサソリに近付いた。
 妖力が高まった鋼夜の尾は鋼の様に固くサソリの毒を体内に通さない。
 目にも止まらぬ速さで針を弾く鋼夜の尾に隠れつつサクラが徐々に近付いて行った。



『……。』



 ヒルコの左腕が動く。
 その腕を結界で囲み一気に押し潰した。
 それにサソリが目を見開いた瞬間に針も数が底を付きサクラが拳を固める。
 チッと舌を打ってヒルコの尾がサクラに向かうがその尾が不自然にピタリと止まった。
 尾にはチャクラ糸が絡まっている。先程のチヨバアの攻撃で尾に仕込んでおいたのだろう。



「今じゃ!サクラ!」

「(チヨバアのチャクラ糸か…!)」



 一気に距離を詰めたサクラがヒルコの背中の甲羅を叩き割る。
 すると粉々に砕けた甲羅の中から布をかぶった人間が1人その場から離脱した。
 それを目で追ったサクラの身体に鋼夜の尾が巻き付き彼女を出てきたサソリ本体から遠ざける。
 サクラは己を移動させた尾をチラリと見てサソリを睨んだ。



「…あれが、本体」

『……。』

「20年ぶりかのう、サソリ。…その顔を拝むのは…」



 ゆっくりと本体が立ち上がる。
 布の下に隠れたままサソリが右手を微かに動かした。
 バラバラになったヒルコの頭が宙に浮かび、外れた首の部分から無数の針が飛び出す。
 チヨバアが指先を細かく動かしつつ両手を手前に引く仕草をした。
 するとその動きと共にサクラが飛び上がり針を回避する。



「…やっぱりな。俺の動きを見切れるババアがその小娘をチャクラ糸で操っていたか…」

「(ばれた…!)」

「しかもご丁寧にヒルコの尾にまで…。その上間一族のガキが加われば攻撃が1つも当たらないのも合点が行く」



 ヒルコの尾にチャクラ糸を付けたのは最初の攻撃だろう…?
 ボソッと言ったサソリにチヨバアが笑みを見せる。
 よく分かったのう、と軽い調子で言ったチヨバアの言葉を聞きつつサソリの手が布に伸びていった。



「俺に傀儡遊びを仕組んだのはテメェだろババア…俺ならそれぐらいは気付く」

「ふん。…じゃがもう遊びは終わりじゃ、サソリ」

「俺とて遊びのつもりでババアと戦おうってんじゃねぇ。…すぐに終わらせてやる」



 体がサクラ達に向き直りその手が布を掴んだ。
 する、と降ろされた布。
 その下に見えた顔にチヨバアが目を大きく見張った。



 
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