世界を君は救えるか×NARUTO
□世界を君は救えるか 番外編
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「…間一族には珍しいタイプの新人っすね。道のど真ん中で間一族だって大声で言うなんて…」
「うん、俺も驚いて一瞬返事返すの遅れちゃってさ。黒凪も呆れてたしなんか変わった子だったな…」
「……名前なんでしたっけ」
「…あー…、」
ふふふ、これでカカシ先生ルートとシカマルルートは完璧だわっ!きっと私の只ならない力を察して驚いてたのねぇ!
意気揚々と黒凪の後を付いて回るルリは零れる笑みを抑えようとはしない。
すると暫く進んだ路地の先に1人の男がぴしっと姿勢を正して立っていた。
『…あ、おはようございます紫島さん』
「おはようございます。坊ちゃんがお待ちですので………、…そちらは?」
『うちの新入りです。七郎君に会いたいと聞かないもので』
「そうでしたか…。よろしくお願い致します。」
丁寧に頭を下げてくれた紫島に向かって妙に静かなルリに黒凪が目を向ける。
彼女は先程までのテンションなどとうに忘れた様に静かに「…よろしくお願いしまぁす」と緩く頭を下げた。
その様子を見て「ふーん」と呟いた黒凪は紫島に案内されるがままに屋敷の中に入り、中へ通される。
「坊ちゃんはこのお時間には戻って来る予定だったのですが、野暮用で到着が遅れていらっしゃいます。」
『あ、そうなんですか。それじゃあ二蔵の所に案内してください、彼にも用がありまして。』
「承知しました。」
何なのぉ、七郎君にはまだ会えないのぉ…?
不満が徐々に降り積もりルリの表情が不機嫌なものになっていく。
その様子を無表情で見ていた紫島は二蔵の居る部屋の扉を開き、中に入った2人を見送り扉を閉めた。
車椅子に乗った二蔵が振り返り黒凪を目に移す。
『おはよう二蔵。どうだい身体の調子は。』
「竜姫が此処に住まう様になってからは随分と楽なものだ。儂が手を下さぬともやってくれおる」
『そうかい。良かったね』
「あぁ。……で、その娘は」
二蔵の目がちらりと向く中でもルリは不機嫌そうに足元を眺めているだけ。
そんなルリをじっと見つめる二蔵に「やっぱり可笑しいと思うかい」と黒凪が問い掛けた。
するとその問いに二蔵がゆっくりと頷き"儂等側の者ではない"と表する。
それと同時に扉が開かれた。
「黒凪さん、遅くなってすみません。」
『七郎君。』
「七郎君っ!?」
「うわ、…え、誰ですかこの人…」
ぐるっと身体を回転させて自分を見上げてくるルリに七郎が驚いた様に黒凪に目を向ける。
その様子に肩を竦めた黒凪は「初めましてぇ、」と話し始めたルリの隣を通り七郎の腕を引いて歩き出した。
ちょ、ちょっとぉ!と焦ったように声を掛けてくるルリに「ついておいで」とだけ声を掛けて七郎と並んで歩き出す。
「火の国の北東の端なんですけど、どうもかなりの数の忍が入り込んだみたいで。」
『一気に?』
「一気にですね。里から遠すぎて此処の人間以外はまだ気付いてません。」
『…分かった、片付けとく。』
手が空いてる人は居るんですか?そう微笑んで問いかける七郎に「まあね。」と笑顔で返す黒凪。
そんな2人の後ろを歩きながらルリがどうにか話題に入れないだろうかと試行錯誤する。
しかし扇一族と間一族の間柄をまだ理解できていない彼女に話題に入り込む事は出来ず「じゃあ送ります。」といつの間にか庭に出ている始末。
「あの、えっと…」
「………え、あ、ルリでぇす!」
「じゃあルリさん。君は戦える人?」
「はぁい!すっごぉく強いんですよぉ!?」
笑顔で手を上げて言ったルリに「それは良かった」と七郎が微笑み黒凪を抱きかかえた。
じゃあ自分で着地出来ますよね。行きますよ。
そう言ってルリを風で持ち上げ黒凪は七郎に抱きかかえられたまま。
なんであの女は持ち上げるのよぉ!と眉を寄せたルリは耐え切れず口を開いた。
「あのぉ、どうして黒凪さんを抱えてるんですかぁ?」
「あぁ、この人運動神経がすこぶる悪くて。心配だからいつも抱きかかえてるんです。」
「(はぁっ!?運動神経が悪いぃ!?)…そ、そうなんだぁ〜…」
そんな会話をしながら一瞬で屋敷に辿り着き、黒凪が徐に屋敷に入っていく。
恐らくこの後の任務の編成を考えているのだろうと理解している七郎は黒凪の背中をちらりと見てから去って行った。
もうっ、なんなのよぉ、七郎君にはあんまり話しかけられないし黒凪は勝手に中に入っていくしぃ!
去って行った七郎を名残惜しそうに眺めてから見失って堪るものかと黒凪の後をついて行く。
そして彼女が開いた部屋の中を見ると大きく目を見開いた。
『デイダラ、急な任務なんだけど出られる?』
「ん?別に構わねーけど…」
「わぁあ、此処がデイダラさんのお部屋なんですかぁ〜?」
「あ、起爆粘土あるから無暗に入るなよ。うん。」
部屋に足を踏み入れる寸前で先に言われてしまいすごすごとルリが部屋から離れる。
じゃあ準備して玄関ね、と声を掛けて黒凪が襖を閉じて隣の部屋に移動した。
ルリはデイダラの部屋を名残惜しそうに見てからそんな黒凪に目を向ける。
『サソリ、任務入ったんだけど出られる?』
「…殺しか?」
『うん。すぐに動かせる傀儡ある?』
「問題無い。…玄関で良いんだろ。」
うん、よろしくね。と流れる様に会話をしてすぐさま閉ざされる襖。
ルリがそろっと襖に手を伸ばすと中から「オイ」と声が掛けられた。
勝手に開けるなよ。そう念を押す様に掛けられた声に「う、うん〜…ごめんねぇ〜」と返して黒凪の後に続いて小走りでルリが去っていく。
その気配を確認したサソリは小さくため息を吐いた。
「あのぉ、次は誰の所に行くんですかぁ?」
『人数が多いらしいから飛段と角都とイタチの所。どうせ皆暇してるだろうし』
「じゃあイタチさんはぁ、ルリが呼んできまぁす!」
『え、ちょっと…』
イタチさぁ〜ん、と言いながら走って行ったルリに呆れた様に息を吐いて黒凪が飛段と角都の元へ歩いて行く。
そうして玄関に集まるとイタチだけが現れない。彼1人を待っているとイタチが少し焦った様に姿を見せた。
「すみません、準備に手間取りました。」
『準備? あんたいつも準備なんてすぐに…』
「イタチさんはぁ、私を待っててくれたのぉ」
『……あれ? 君も行くの?』
当たり前じゃないですかぁ、と笑ったルリに黒凪がイタチを見上げる。
イタチは「黒凪さんが許したんじゃないんですか?」と言いたげな顔をしていた。
すると「なんだァ?随分居るじゃねェの」と言った声が頭上から降り黒凪が顔を上げた。
『…火黒?』
【任務なんだろォ?俺そこの女に呼ばれたんだけどさぁ】
『…え、ちょっとルリちゃん…』
「だってぇ、人は多い方が良いと思うしぃ…」
そう言ったルリの言葉と同時に「黒凪」とまた声が掛けられ振り返った。
そこには人数の多さに戸惑っている様子の限。
…限まで呼んだの?とルリに目を向けた黒凪は「そぉなんですぅ」と悪気のない様子にため息を吐く。
「あと鋼夜も連れて行きたかったんですけどぉ、見つからなくってぇ〜」
『鋼夜なら私の影の中だけど…、ってそんな事よりこんなに人集めたら』
「影の中ってどういう事ですかぁ!?」
話を聞かず詰め寄って来たルリにげんなりとして黒凪が己の影に目を向ける。
すると影から鋭い鋼夜の尾が伸びてルリの首元に添えられた。
話を聞け…。そんな鋼夜の声にルリが笑顔を見せ「ホントに居たぁ♪」と上機嫌になる。
それを見て息を吐いた鋼夜の尾が一気に引っ込んで行き「何だあの女は…」と黒凪にだけ聞こえる様に鋼夜が言った。
『さあ、分かんない…』
「任務は危険だしぃ、皆で行こうよぉ!皆で行った方が楽しいしぃ!」
『…。まあいいや、折角皆準備したんだしこれで行こっか…』
「マジかよ」
飛段が驚いた様に言う中で1人「やったー!」と飛び跳ねるルリ。
その様子を見て皆一様にげんなりとした。
しかしリーダーである黒凪が言ったのだ、すぐに切り替えるとルリと黒凪以外の全員が向き合う。
「良いか?イカサマなしの一発勝負だ。うん。」
「恨みっこナシだぜェ!」
そう言ってから始まったじゃんけんにルリは「なになにっ?楽しそう〜」と近付いて行く。
しかし彼女が混ざる前に以外にも敗者はすんなりと決まった。
…俺か。と呟いたイタチに「え、なんですかぁ〜?」とすぐさまルリが方向を変える。
しかしイタチはそんなルリを素通りすると黒凪の前でしゃがみ背中を向けた。
『ごめんねえ、毎回毎回』
「いえ、気にしないでください。」
そう言ってイタチが背中に乗った黒凪を持ち上げると「え…?」とルリが固まった。
そしてすぐに笑顔に切り替えると「あれれ〜?どうして黒凪さんをおんぶしてるんですかぁ?」とイタチに駆け寄る。
イタチはちらりとルリを見ると「運動神経が悪いそうでな。走ると疲れるらしい。」と手短に且つ丁寧に答えて玄関の扉を開いて出て行った。
そうして全員が外に出ると黒凪が地図を開き「あっち。」と東の方角を指差す。
すぐさまその指示に従って全員が走り始めた。
「えっ!? ちょ、ちょっとぉ!」
そんな声を最後に一気に走り出した全員はちらりと背後に目を向ける。
先程までウザったらしくうろついていたルリとか言う女は付いてこれなかった様だ。
姿も声も見えなくなり皆そう考えて納得したのだろう、やがてどうでも良い事の様に正面に目を向ける。
「…あの女は良いのか」
『うん。付いてこれないなら連れて行く意味ないし…』
【お前が言えるタマかよ。鈍足の癖しやがって。】
『頑張れば走れますぅー』
ちらちらと背後を見る限と笑いながら隣に並ぶ火黒。
彼等を見て「まあ久々だしこれも楽しいか」と思い直して黒凪が小さく笑みを浮かべる。
あの子も中々良い仕事するじゃない、なんて考えているとばさばさと羽音が聞こえてきた。
そして頭上に指した影に皆が顔を上げると純白の翼を広げてルリが降りてくる。
「もぉ、皆放って行くなんて酷いよぉ!」
『わあ凄いね。羽出るんだ…』
「うふふ、これは天使の翼って言ってねぇ、皆を護ったりぃ、傷を癒したり出来るんだよぉ。」
『そうなんだ…。機会があればよろしくね。』
そうは言ったものの、普段から木ノ葉の忍達の様に医療技術のある者をチームに入れたりすることは間一族では滅多にない。
それは滅多に傷を作って来ない事と自己責任だと言う考え方が強い為。
だから実際黒凪達もデイダラ達も皆微妙な顔をした。
「黒凪さーん」
『あれ? 七郎君!』
「ええっ七郎くぅん!?」
「木ノ葉の方からも小隊が配属されたみたいです。皆さん笠持ってないですよね?」
一様に頷いたデイダラ達に「あはは、すみません。僕がまだ木ノ葉の人達は気付いてないなんて言ったから…」なんて笑いながら七郎が笠を手渡していく。
受け取るごとにすぐさま笠をかぶるデイダラ達に不思議な顔をしているが、ルリも此方に手渡してくれるだろうと七郎を見上げてわくわくと待ち望む。
しかし笠は渡される事無く「それじゃあ。」と整った顔で爽やかに笑って七郎が離れて行った。
「(なんで私には笠をくれないのよぉ!)」
「チッ、ヒルコ持ってくりゃよかった…」
『あーもう、また私達以外が来るとなるとそんな事言いだすんだから。』
「飛段。用心の為に鎌を巻物に入れておけ」
あぁ!?じゃあ俺は何の武器で戦うっつんだよ!
角都の言葉にそう返した飛段はぽいと放り投げられたクナイを受け取り「んだこれはァ!」と更に怒りを爆発させた。
しかしそんな飛段などお構いなしにサソリが空いている巻物を取り出し問答無用で飛段の鎌を封じる。
あ゙ー!!と響き渡った飛段の声に「うるさい。」と黒凪が草履を投げた。
顔面に草履を直撃させられた飛段は反射的に掴み取ると黒凪に目を向ける。
「テメェ黒凪!草履の鼻緒千切んぞあぁっ!?」
『えーやめてよ縁起悪い。』
「よっしゃ千切ってやらァ!」
『あ゙、ホントに千切った!』
おい飛段、静かにしろ…。とイタチが呆れた様に声をかけるも、飛段が意に返すはずもなく。
むしろ「へっへーん」と笑った飛段が草履を放り投げる始末。
それを見た限は「ったく…」と呟くと足を止めて草履が地面に落ちる前に掴み取った。
そして黒凪の元に戻ると彼女の手元に草履を持っていく。
『ありがと限。やっぱりあんたが一番気が効くわ。』
【黒凪大好きちゃんだもんなァ、志々尾クンはさ。】
鼻緒の部分を修復術で瞬く間に元に戻してイタチの背中の上で器用に掃いた。
そんな黒凪に微笑む限をルリは上空で見ているしかない。
彼女は慣れない翼を扱いあまり話している余裕が無いのだ。